11年6月29日更新
今年の1月というのは、わが国の障害分野にとって歴史的な節目となりました。それは2点の大きな出来事で
あり、まさに忘れることのできない「2010年1月」となった
のではないでしょうか。
1点目は、障害者自立支援法訴訟に関連して訴訟団と国との間で基本合意文書が調印されたことです(1月7日、
基本合意文書ならびにこれの付属文書である要望書につい
ては本議案書の巻末に全文掲載)。2点目は、基本合意
文書の調印に踵を接ずるように
して「障がい者制度改革推進会議」(以下、推進会議)がスタートを切ったことです
(1月12日)。
その意味についてですが、1点目については障害者自立支援法(以下、自立支援法)の廃止を確実にしたものであり、
2点目は、ポスト自立支援法の対応を含めて障害関連政策の総合的で抜本的な改革についての行政意思を示した
ものでず。いずれも新たな政権の方針に基づくいわば公式な動きであり、同時に未来に向かって大きな可能
性を
秘めているという点においても注目すべきです。
日本障害者協議会(以下、JD)は、これら2つの動きに強い関心を持ってきました。
まず自立支援法についてですが、これについては成立以前から問題点を指摘し、施行された後も一貫して廃止を訴え続けてきました。廃止運動のシン
ボル的な存在となった自立支援法訴訟については、決して忽然と起こったものではありません。全日本ろうあ連盟や
DPI日本会議との連携で企画を重ねてきた「10・31フォーラム」などの幅広い運動を背景としたもので、あくまでも廃止
運動のひとつに位置づけられるものです。
JDは、とくに①原告の多くはJDの正会員関係者、②運動資金の確保(JDとして2,300
万円余を確保)、③組織的な
支援体制(障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会の事務局担当、地方のめざす会への支援)などの面で積極的な
役割を果たしてきました。また推進会議についても、JDのこれまでの活動と合せ見る視点を持つことが肝要です。障害分野に関する基幹的な政策課題の早期の解消を訴えてきたJDの提言や活動と符合するもので、わけても当面の中心課題となっている「総合福祉部会=障害者総合福祉法づくり」はJDの主張そのもので、わが意を得たりの感を覚えるものです。
政策提言と行動を活動の主体としてきたJDであり、今後ともこの立場から前掲してきた2つの大きな動きには可能な限り関与していくことが求められます。「勝利的和解」という節目を越えた訴訟運動は、運動の力点が基本合意の履行検証に移されていくことになります。JDは、「障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会」(新・めざす会)の一員として、資金作りを含めて検証作業を全面的に支援していきます。推進会議ならびに部会(現状では総合福祉部会が始動)については、①障害者権利条約(以下、権利条約)、②訴訟で交わされた基本合意(基本合意文書ならびに要望書)をベースに、JDとしての今年度の重点課題のひとつに位置づけていきます。加えて、正会員や正会員の地方組織とも関係情報の共有に注意を払い、知恵と力を結集できるような取り組み体制を追求していきます。
他方、ここにきて看過できない動きが急浮上しています。そのひとつは、「地域主権戦略会議」とここを発信源とする関連法案(関連3法案)の動きです。一口で言うとさまざまな法制についてその権限と財政を地方行政に委ねようというもので、障害分野にあっても地域格差が増大することは火を見るより明らかでず。それだけではなく、本格的に始動しようとしている推進会議や総合福祉部会の論議の幅を狭めるものとなりかねません。問題点を明確にした上で、毅然とした対処が求められます。今ひとつは、白自立支援法の改正法案の国会上程の動きです(2010年4月27日に衆議院に提出)。旧与党による議員立法という形での法案提出ですが、総合福祉部会との関係と合わせてこの時期の提出の背景をどう見るか、関係団体とも連携しながら慎重な対処が求められます。
着実に存在感を高め、また実質的に機能しつつある目本障害フォーラム(以下、JDF)について、JDはその一員として引き続き能動的な立場をとっていきまず。権利条約の批准条件づくりや条約の地方への普及・学習などの面で、また時々の政策課題での一致した行動など、できる限り共同行動の範囲を増やすようにしていきます。た、全日本ろうあ
連盟やDPIとの連携で継続してきた「10・31フォーラム実行委員会」については、新たな状況下で発展的な役割を指向していきます。
最後に、JDは本年4月19目をもって結成30周年となりました。また明年は国際障
害者年(1981年)が設定されてから同じく30周年を迎えます。これらを関連づけなが
ら、今年度から来年度にかけて、各種の記念事業を企画します。一般的なふり返りや懐
古というのではなく、歴史的な転換期にある今を十分に意識しながら、しっかりとした
「未来への回想」を行う必要があります。組織や財政を強化していくことと合せて、JD
の結成ならびに国際障害者年の30周年記念事業を成功させていきたいと思います。
以下、2009年度の事業報告・決算報告、2010年度の事業計画・予算書等を掲げまず。
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