障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

2007年度事業計画

はじめに


 2007年度の障害分野をどう展望するかであるが、政治や経済動向の不透明さもあって、容易には読みづらいものがある。最大の関心事である社会保障政策については、残念ながら引き続き後退基調の可能性が大きい。そんな中にあって、私たちJDが取り組まなければならない課題は、はっきりとしている。主なものとして、次の三点があげられる。

 その第一は、障害のある人びとの課題をもっと「社会化」していくことである。社会全体として、障害のある人びとのことを考え、改革のための行動に共に参加してほしいということである。後述する障害者権利条約の批准(国会承認)にしても、障害者自立支援法(以下、自立支援法)の根本的な転換にしても、その成就には社会の強力な支持と支援がなければ果たせるものではない。この点で不可欠の条件になるのが、障害団体の中央や地方でのまとまりである。まとまりがないところに、社会の理解など得られようはずがない。JD加盟団体の結束を強めていくことはもとより、わけても問われるのがJDFの連携をバージョンアップしていくことである。
 運動の方法や形態についても工夫が求められる。身近なところでは、JD本体ならびに加盟団体の広報活動(機関紙・誌、ホームページなど)について、内容や発行部数などの面でもう一段の改良が必要となろう。JDFに移された「イエローリボンバッジ」(権利条約の批准促進のシンボルマーク)の普及運動も、「社会化」のための有効なツールの一つとなろう。

 第二は、障害者権利条約をめぐる動きを主体的に切り開いていくことである。国連総会で採択が成った権利条約であるが、わが国の目下の課題は、条約の水準に沿って障害関連の国内法制を拡充していくことであり、合わせて「障害者差別禁止法」や自治体での「差別禁止条例」の制定に展望を開いていくことである。大切なのは、批准を目的化することなく、あくまでも前述した課題を実質化させていくための「テコ」にしていかなければならないということである。JDとしては、まずは権利条約の内容を正確に押さえることであり、加盟団体のそれぞれが個々の立場や専門的な視点から条約(条文)に丁寧な検証を加えることである。

 第三は、自立支援法の出直し的な見直しを探求していくことである。とはいえ既に施行に移されている自立支援法であり、緊急の修復策を求めながら、他方で「三年後見直し規定」(自立支援法附則第3条)への備えを怠らないことである。緊急の修復策に関わっては、昨年末に取りまとめられた「特別対策」の恒久継続を求めながら、応益負担制度の撤廃と報酬単価の引き上げ(当面は、施行前の水準にまで)をめざしていきたい。加えて、「障害程度区分」についても抜本的な見直し提言を行なっていきたい。

 また、「三年後見直し規定」に関わっては、


  1. 所得保障(無年金障害者の全面解消と、障害の重い人たちの地域での自立生活を可能とさせる最低限度の所得保障の確立)
  2. 障害範囲(障害の谷間を生み出すことのない、あらゆる障害をサービスの対象とする「障害の範囲」の確立)
  3. 介護保険制度との統合問題(社会参加をはじめ「障害」固有のサービスを尊重し、発展させるという視点に立った介護保険制度との統合問題への考え方)

 

 など、年度内に具体的な見解表明が求められる。

 さらには、障害者基本法の定時改正や「障害者総合福祉法」の制定、扶養義務制度の見直し(「精神保健福祉法」の保護者規定を含む)などについても、改正に向けての研究や対案作りが必要である。

 最後に、JDの組織課題について触れておきたい。とくに、財政基盤ならびに事務局体制の強化については、積年の課題とされながら展望が出せないままでいる。これらについて、本年度は新たな端緒を開いていかなければならない。

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