障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

23年2月22日更新

2023年「すべての人の社会」2月号

2023年「すべての人の社会」2月号

VOL.42-11 通巻NO.512

巻頭言 恋愛ドラマ「silent」と優生保護法の思わぬリンクで考えさせられたこと

JD理事 藤木 和子

 昨年2022年10月~12月に「silent」(サイレント)という恋愛ドラマが大ヒットしました(フジテレビ系木曜22時)。高校生の時から徐々に聴力が落ちて中途失聴した主人公には姉妹がおり、私も耳の聞こえない弟がいることから番組制作の取材に協力しました。障害を扱った作品が一般向けのエンタメ(娯楽)になると言われても、ならないと言われても複雑な思いがありますが、テレビドラマは影響力が大きいので理解や関心のきっかけになればと応援していました。(インターネット上のアーカイブの累計再生回数4600万回はテレビ番組歴代最高)

 20代のやさしく素朴な恋愛、友情、家族の物語ですが、耳が聞こえない役が4名と多く(聴者の役者2名、ろう者の役者2名)、生まれつき/中途、手話をする/しない、声を出す/出さない等の違いによる聞こえない人同士の葛藤と分かち合い、その家族や友人の悩みやぶつかり合いにもリアルに踏み込んだ内容でした。(なお、聴者の役者がろう者を演じることの諸課題もあります)

 創作に口を出したくはないのですが、私が引っかかり、ツイッターでも炎上したのは、主人公の姉が出産にあたり、自分の子の耳が聞こえるかどうか心配したものの新生児検査で耳が聞こえてよかった…という赤ちゃんの名前が「優生(ゆうき)」だったことです。正直、ショックと驚きでした。家族としても、優生保護法弁護団の一人としてもです。障害がある人に子どもを産まれなくする手術や中絶を行なった「優生保護法」は、報道の方々が大変応援してくださっており、ドラマ制作の方々にも知っていただきたいと思います。

 ドラマのことは引き続き応援していきたいと思いますが、テレビ局には作品や関係者を守るためにその内容にふさわしい誠実な対応、経緯の説明、再放送やDVD化の際のフォロー、再発防止策等をしてほしいと願います。今回の件がきっかけで優生保護法を知ったという方もいます。今後に向けて何が最善か、自分には何ができるのかを改めて考えさせられています。

 テレビ局に提出した意見書についてはNPO法人インフォメーションギャップバスターのHPを参照ください。なお、現実に「優しく生きる」の意味で「優生」等の名前の方を否定する意図がないことは、どうかご理解をお願いします。

 優生保護法裁判は判決ラッシュです。1月23日に熊本地裁で3例目の勝訴判決(地裁初)、3月23日大阪高裁、3月16日札幌高裁、6月1日仙台高裁判決の予定です。

 

視点 山が動きはじめた。
-投票バリアフリーを求めるとりくみから-

JD副代表 薗部 英夫

 2022年も押し迫った12月17日(土)の朝6時30分。NHKテレビから「障害者の投票環境 初の大規模調査開始」のニュースが流れました。

 報道は、「障害者団体などでつくるNPO(日本障害者協議会)が、5月に投票環境の改善を求める要請書を総務大臣あてに提出。移動の支援、投票所のバリアフリー化の徹底を求めています。こうした動きを受けて総務省は、来年春の統一地方選挙に向け、全国の選挙管理委員会に、投票しやすい環境をどう整えているかなど初の大規模調査を開始しました」として、「調査では、投票所に派遣する職員の研修、マニュアルの作成、投票所での具体的な工夫などについて質問しています」と続きました。

 これは、投票所で受けられる支援は、同じ自治体でさえも投票所の責任者によってバラバラで、あいまいな運用が戦後70年以上続いていたことに、国(総務省)が大規模な実態調査(都道府県選管対象)に乗り出したという画期的な出来事です。


 背景には、JDがとりくむ投票バリアフリー化を求める要請行動とそれに共感したマスコミ報道・世論があります。とりわけNHKの「みんなの選挙」キャンペーンは、様々な場面での取材をもとに、わかりやすい放送・動画や具体的に役立つWEB(「みんなの選挙」で検索を)など貴重なとりくみも生まれました。

 また、昨年夏の国連・障害者権利委員会による「総括所見」も大きく影響しています。第29条「政治的及び公的活動への参加」では、次のことが勧告されました。「公職選挙法を改正し、選挙放送やキャンペーンなどの選挙関連情報の配慮とともに、投票手続き、施設、資料が、すべての障害者にとって適切でアクセスしやすく、理解しやすく使いやすいものにすること」。


 思えばJDとしてのとりくみは、期日前投票でのサポート体験からでした。地域では有名人の障害のあるご夫妻ですら、独特の威圧的な雰囲気のある投票所では、ささやかな改善を求める声が出せない。ならばと、インターネットで問題事例や改善要望を呼びかけ、①投票所の壁、②情報のバリアフリー、③投票方法、④移動の4つの視点から整理して、参議院選挙を前に、「投票における合理的配慮を欠く問題事例の改善を求める201の事例・要望集」をまとめました。それをもとに、国(総務省)に要請し、国会内で記者会見するなど「900万人をこえる障害者や投票に困難をかかえる人たち1500万人の実態調査を!」「参政権や障害理解など研修はされているか?」「各選管でできることは直ちに実施」「郵便投票の制限(障害種別や等級の差別)なくして欲しい」などをアピールしたのです。

 事務局としてのJDのプロジェクトメンバーは、視覚障害のある当事者、参政権保障に長年とりくむ法学者、40年にわたって障害者運動にとりくむ支援活動家など個性的な面々でした。そして、この問題での関心の高いジャーナリストのみなさんとも懇談を重ね、情報と人と人とがつながりました。

 NHK「みんなの選挙」チームは、おなじみの福祉班だけでなく、政治部やネットワーク情報部など多様な部局のメンバー40人ほどでとりくまれています。「すべての人に投票の壁を無くそう」「投票に行こう」。参議院選挙の開票速報番組のなかでも、「みんなの選挙」が紹介されていました。春には、1718の市町村選挙管理委員会への大規模な実態調査も計画されているそうです。


 大きく動きはじめた投票のバリアフリー化。それぞれが暮らす自治体の選挙管理委員会や議会等で率直な懇談・意見交換にとりくみませんか。当事者の声を聞くことが、すべてのはじまりなのですから。

NHK「みんなの選挙」の取り組みは本誌4―5頁に掲載しています。(編集部)  

2023年1月の活動記録

投票バリアフリー 「みんなの選挙」プロジェクト

~その1票が投じられるように~ 廣岡 千宇(NHKネットワーク報道部 記者)




JD特別セミナー 国連・障害者権利委員会の総括所見(勧告)を学び、知り尽くそう!

What's New

声明 子どもを産み育てる権利をすべての人びとに(JD)
優生保護法訴訟熊本地裁判決に対する声明 (弁護団)



参議院厚生労働委員会 参考人意見陳述(要旨)

藤井 克徳(日本障害者協議会代表)



重度訪問介護における地域間格差

吉田 政弘(土屋総合研究所 所長)



連載 私の"ほッ"とタイム⑩

ほっとする時は映像と音楽を楽しんでいます。


関口 明彦(日本病院・地域精神医学会理事)



連連載 障害者権利条約を日本で生かす 5

対日審査が明らかにした政府と市民社会の大きなギャップ
増田 一世(日本障害者協議会常務理事)


連載エッセイ 障害・文化・よもやま話 第36回

優生思想に悩んだ障害者たち ―『地下水』を読む(後編)―
荒井裕樹(二松学舎大学/障害者文化論研究者)



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