22年12月20日更新
○北海道内の施設で20年以上前から、障害のある人が結婚したり、パートナーとの生活を送る際に不妊処置が条件とされていたとの報道がありました。
JDは、「子どもを産み育てる権利をすべての人々に」と題した声明を発表しました。
2022年12月20日
声明 子どもを産み育てる権利をすべての人びとに
認定NPO法人日本障害者協議会
北海道内の施設で20年以上前から、知的障害のある人たちが結婚や同棲を希望する際に不妊処置が条件とされ、それに8組16人が応じていたことが報道された。衝撃的な事実であり、けっして看過できない。暮らしの場や働く場を提供することと引き換えに、子どもをもつ権利が奪われたのだ。
今回の事件に留まらず、障害のある人たちが子どもを産み育てる権利を侵害され続けている可能性を否定できない。こうした被害をどうしたらなくすことができるのか、そのためにはまず全国規模での被害の実態解明が急務である。そのうえで官民挙げて知恵を出し合う必要がある。
私たちは、優生保護法第1条(目的)「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」にある優生思想からの決別を求めてきた。また、国連から9月に出された総括所見(日本の障害者権利条約の履行状況を審査し、勧告した文書)では、津久井やまゆり園の事件が社会における優生思想や能力主義の考え方に起因していると厳しく指摘している。私たちの生きる社会にはびこる能力主義や健常者優先は、根深い優生思想からの脱却を妨げている。優生思想からの決別のためには、障害者政策史上最大の未決着問題である優生保護法問題の全面解決を急ぐべきである。今なお行われていない立法府と政府の総括を求めたい。
他の者との平等を求める障害者権利条約は「障害のある人が両当事者の自由かつ完全な合意に基づき婚姻し、家族を形成する権利が認められる」(23条)、と明記している。障害者権利条約に定められた当然の権利であり、権利侵害は決して許されない。
他方で障害のある人の結婚や同棲、出産・育児を支える政策的な仕組みがないこともこの事件の背景にある。障害のある人が子どもを産み育てる権利を認め、地域での生活を支える仕組みを早急に検討すべきである。
本件に関して、当該法人への厳しい批判は当然であるが、同時にこの問題を個別化、特殊化してはならない。「氷山の一角」との見方も少なくない。一方で、こうした問題を容認する社会の雰囲気があるのかもしれない。今回の問題は、この国の市民社会全体が問われているのだということも強調しておきたい。
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