22年7月22日更新
VOL.42-4 通巻NO.505
JD理事 佐々木 良子
わたしの祖母は、陰口は言わない人でした。陰口ではなく、本人に言うのです。詳細は覚えていないのですが、座敷で本家の息子(と言っても私の父より上)に向かって何か言って一同シーンとするということもありました。祖母の法事の際、お坊さんから、「気の強い……」と言われたので、誰もが知る気の強い人だったようですが、祖母の気の強さは、祖父を戦争で亡くしていることもあるのではないかと思ってもいます。
祖父は、昭和20年3月20日徴兵されました。33歳だったそうです。祖父には、父を含めて子供が4人いて、それぞれ小3、小1、5歳、3歳だったそうです。3月10日の東京大空襲で、祖父の姉の安否がわからない中での出兵でした。祖母には、孫の私から見ても仲良しの友達がいました。一人は物静かで、一人はおしゃべり、そして祖母です。よく家の軒先で、3人でお茶飲みをしていました。容姿も性格も異なる3人の共通点は、戦争で夫を亡くしているということでした。
わたしの地元鶴ヶ島(埼玉県)には、韓国で生まれ育ち、終戦後、日本に戻った、聞こえない、ろうの方がいます。いつもニコニコと優しく、みんなのお母さんのような方なのですが、その方の本当の苦労を知ったのは、「手話この魅力あることば」の収録の時でした。全国手話通訳問題研究会では、ろうの方自身の体験を手話で語っていただき、その内容を残す取り組みをしています。その方が、「手話この魅力あることば」の話者に選ばれ、収録に同行しました。編集者の手腕もあると思いますが、そこで語られた内容は、今まで私が聞いたことのない話もありました。何も知らず韓国で野山を歩き、鶏ややぎを飼っていた少女時代。家族の中で自分だけ「聞こえない」ことが分かった時の葛藤や怒り。その感情をおさめ、以前と変わらない暮らしを続ける強さも感じる内容でした。その中でも、ろう学校のことは、初めて手話で話し、学ぶことのできた場としてとても楽しそうに語られているのですが、その学校にも戦争の影が忍び寄ります。早く戻りたいと再開を心待ちにしていたろう学校が突然閉鎖、そして、終戦を迎えます。
今、ウクライナで戦争が行われています。ニュースで、「死者〇〇名」というテロップが流れない日はありません。亡くなった方やその家族、関係者などなどを含めると戦争被害者は一体何人になるのでしょうか。ウクライナから遠く離れた日本で、今、何ができるのでしょうか。私は祖母から戦争の話を聞いたことがありませんでしたが、改めて話を聞くことも大切なのかもしれません。今、わたしにもできることを模索していきたいと思います。
JD常務理事 増田 一世
本年5月31日、金子恭之総務大臣宛の要請書「障害者権利条約、障害者差別解消法等に基づき、障害者の投票行為における合理的配慮を欠く問題事例の改善書」、合わせて「投票における合理的配慮を欠く問題事例の改善を求める201の事例・要望集」(以下201の事例・要望集)を総務省選挙部管理課および選挙課の担当者に手渡した。当日の懇談は対面とオンラインで行われ、JDの藤井克徳代表、当事者・家族が参加し、その実情を訴えた(要請書の概要は、本紙5月号4~5ページ参照。HPでも公開中)。
この取り組みは、昨年の衆議院選挙で近隣の高齢のご夫婦(車いすと杖歩行)の期日前投票に同行した薗部副代表の問題意識に端を発している。国民の当たり前の権利である投票が、障害があることで様々な障壁にぶつかる事実、これは看過できないと、JD内にプロジェクトチームを組織し、61の加盟団体、JDF13団体に呼びかけ、投票の障壁となった事例を集め、201の事例・要望集にまとめた。
総務省との懇談の際、薗部副代表は「公職選挙法は国会での審議が必要になるが、201事例の切実な声は、各選挙管理委員会で改善できることが多い。これらの声を各地域の選挙管理委員会に届けていただきたい」と語った。障害者権利条約29条(政治的及び公的活動への参加)のa項には投票の手続き、設備及び資料が利用しやすく、理解しやすいものであること、秘密投票が保証され、支援機器や新たな機器が利用できることとある。
総務省からは、障害のある有権者に向けて実施していること、総務省として各選挙管理委員会に必要な支援を行なっていること、選挙公報の点字版や録音版などは、誤りなく公平に正確にできるのかといった技術的な課題もあることなどが説明された。
先日のJDセミナーでもご発言された小森淳子さんは、脳性まひがあり代理投票の際に自分が選ぶ人を大きな声で言われてしまい、秘密投票できなかったと経験を語り、JDの太田修平理事は「選挙のたびに必要な対応がとられず、選管の人と言い合いになってしまう。対応要領や投票マニュアルはあるのだろうが、各自治体の選挙管理委員会に浸透しているのか、実態調査が必要」と指摘した。総務省との懇談の最後に藤井代表から「障害のある人が選挙に参加できない状況は解消されるべきだ。1票の格差が論じられる中、1票を投じられない人がいることを重く受けとめていただきたい。実態を把握し、話し合いの場を継続的に」と結んだ。
総務省との懇談後の記者会見では、マスコミ各社の関心は高く、追加取材も行われ、NHKのニュース番組で2度にわたって取り上げられた。こうした報道を目にした地方議会の議員からは、要請書と201の事例集をもとに担当課のヒアリングを行い、市議会でも議論していきたいといった連絡もあった。
要請書や201の事例・要望集は特別なことを求めてはいない。障害のある人が投票することが当たり前であると想定されていれば、その多くは解決する。しかし、現状は障害のある人の投票の権利が軽んじられている。そこに根本的な課題がある。
6月7日に閣議決定された「骨太方針2022」には、防衛力強化が明記され、戦争できる国への傾斜が危惧される。7月10日予定の参議院選挙は私たちの意思決定の重要な機会になる。障害を理由に貴重な1票を行使できないことはあってはならない。JDの要請書、201の事例・要望集が全国の選挙管理委員会で活用されることを切望する。
私が感じたもの
田中 徹二(日本点字図書館会長)
高校保健体育の教科書から始まる「こころの健康社会」
福田 正人(群馬大学 大学院医学系研究科 神経精神医学)
JD第11回総会とJDセミナー
ネコのしーちゃんと暮らすしあわせ!~どんな障害があっても家族をつくって生活ができるように~
家平 悟(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協)事務局長)
きょうだいの私、自分の人生を前向きに生きていきたい
宮﨑 木綿子(熊本県在住)
障害のある子どもたちの今とこれから
池添 素(障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会事務局長)
アジアから:場面別4 -公共交通機関-
佐野 竜平(日本障害者協議会理事
法政大学現代福祉学部教授)
信号の見えない障害者のこれまで、これから
寺西 昭(愛知視覚障害者協議会事務局長)
内田 由佳(自立生活センターとくしま)
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