未曾有の財政危機は、わが国の社会や経済、そして市民生活の隅々にさまざまな歪みをもたらしている。ここにきて、その歪みは大きさを増し、障害分野にも広く深く影響を及ぼしつつある。本年度から本格的に推し進められている「三位一体改革」なる政策路線は、こうした動きにさらに拍車をかけることになろう。
さて、わが国における障害分野の向こう一年間であるが、なかなか読みづらいものがある。はっきりしていることは、否が応でも「三位一体改革」路線に晒されることであり、第二次大戦後営々と積み上げてきた諸制度・施策に、財政面から容赦なくメスが入れられることであろう。ここで問われるのが、障害団体の存在である。むろん、座して看過するわけにはいかない。決して、「守りの運動」であってはならず、同時にもしかしたら旧来の運動の方法では太刀打ちできないのかもしれない。われわれ日本障害者協議会(以下、JD)もまたその真価が問われることになろう。理論性と機敏性を基軸にいかにして存在感を高めていくかであり、合わせて障害運動全体の増長にどう貢献できるのか、かつてなく重要な年度となりそうである。
ここで、本年度を展望しながら、ポイントとなる事柄を列挙してみたい。
その第一は、政策面である。最大の焦点は、介護保険制度と障害保健福祉施策(主には支援費制度)との統合問題である。おそらくは、年度途中で政府としての基本方向を確定することになろう。JDとしては加盟団体の経験と英知を結集し、歴史の検証に耐え得る選択が求められることになる。統合問題以外で重要と思われるのが、「障害者差別禁止法」の立法化の課題である。JDとしても、立法化に向けての地ならしに尽力していく必要がある。また、明年の通常国会において、定時改正を迎える精神保健福祉法ならびに障害者雇用促進法の改正作業にも、備えを怠ってはならない。さらには、厳しい状況下にあってつい目先の課題に目が奪われがちであるが、この時期だからこそJDが一貫して掲げてきた基本的な政策課題、すなわち①扶養義務制度、②障害の認定・等級制度、③所得保障制度、④施設体系・施設制度、⑤社会的入院・社会的入所問題など、これらをしっかりと見据えることであり、改正や解消の道すじを拓いていかなければならない。
第二は、国際的な動向である。ここでのポイントは、国連での障害者権利条約をめぐる動きということになる。年度内に、既に国連本部での第3回目と第4回目のアドホック委員会(特別委員会)の開催が確定し、採択に近づくことが予想される。条約が採択された場合の加盟国に及ぼす影響は多大なものがあり(わが国の場合は、国会での批准が前提になるが)、JDとしても特別の体制をもってこれに対処していきたい。
第三は、障害団体間の連携についてである。昨年10月に発足した「日本障害フォーラム準備会」(略称、JDF準備会)は、年度内に「日本障害フォーラム」として正式に発足することになろう。宿願としてきた国内障害団体の恒常的な交流体の誕生であり、JDとしてもその成功に向けて最大限力を発揮していかなければならない。国の内外で重要な課題が目白押しの障害分野にあって、JDFの誕生は歴史的な意味を持つことになろう。
第四は、JD内の団結力を強め、運動体としての力を高めていくことである。障害別、分野・領域別、年齢別など、多様な団体を擁するJDであり、総合的で全体的な視点を保ってきたのがJDの特徴なのである。総合的な視点を大切にしながら、政策提言力に磨きをかけ、その本旨である運動体としての力を高めていかなければならない。また、加盟団体の事情はまちまちであり、わけても財政力や会員数の厳しい団体を、全体としてどう支えていくか、この一年間の大切なテーマとしていきたい。
以上の諸点を踏まえながら、2004年度の事業計画について十分検討をいただきたい。
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