24年9月19日更新
VOL.44-6 通巻NO.531
JD理事 出森 幸一
「健康的で長寿の国」のイメージが強い日本ですが、実は、世界有数の人工透析大国であることをご存じでしょうか。
日本透析医学会の統計調査によると、2022年12月31日時点の透析患者数は34万7,474人、約360人に1人が人工透析を受けていることになります。透析が医療保険に適用された1967年以降、統計調査が行われてきましたが、右肩上がりを続けていた患者数はこの年初めて減少に転じ、これにより、前年の2021年が「ピークの年」に躍り出ることになりました。過去に何度か透析患者数の将来予測が行われても、その通りにはならず、容易ならざることを思い知らされましたが、2012年に行われた将来予測では、2021年の約34万9千人をピークに患者数が減少すると予測されていたので、今回はその通りの結果が出たことになります。
患者数が増加する要因は、糖尿病や高血圧に合併する腎機能障害によることがわかっていますが、高齢者人口の増加も要因の一つに挙げられます。現在、超高齢社会が継続している日本ですが、2040年までは高齢者人口は増加を続けると言われています。これでいくと、透析患者数のピークはまだ先にあるように思えますが、統計調査委員会では、この度の「2022年末患者数減少」の背景には新型コロナウイルス感染症の影響があると分析しています。新型コロナウイルス感染症は、透析患者で致死率が高く、2020年以降直近の3年間は、50歳以上において新型コロナ肺炎による死亡が急増したことから、これが患者数減少の背景にあると示唆しています。
さて、腎臓病には原因・症状の異なる様々な疾患がありますが、これらをまとめて広く捉え、慢性的に腎機能が低下している状態を慢性腎臓病(CKD)と呼ぶようになりました。CKDが進行していくと「透析」が必要になるばかりか、「心筋梗塞」や「脳卒中」で死亡する危険性がはるかに高いことがわかり、数が多いだけでなく生命予後も悪いCKDは「新たな国民病」と言われています。
全腎協は、当事者団体としてCKD対策への取り組みをはじめ、患者の高齢化や透析の長期化により生じる通院困難者や要介護者の問題、ハードルの高い特別養護老人ホームへの入所の問題その他、医療費助成制度を後退から守る取り組み、災害対策の取り組みなど、様々な課題を視野に入れて活動を展開しています。それにも増して、会員数減少を改善し組織強化を図ることを最優先課題としています。
■視点 石原繁野さんの青春
JD副代表 薗部 英夫
「視点」でもなんどか紹介させてもらった糸賀一雄さんの「私塾」としてスタートした滋賀のあざみ寮。その施設長をされた石原繁野さんが6月9日に亡くなられた。
繁野さんは昭和12年(1937年)岡山生まれ。昭和31年(1956年)に、滋賀県・大津に開設されたあざみ寮(糸賀房(ふさ)・初代寮長)と出会い、知的障害のある女子寮生たちと共に生きられた。ペルーを訪ね、チャイカイ文化の織物に学んだ「あざみ織(むすび織り)」を寮生のしごととして発展させた。
わたしたち夫婦は、「あざみ織」を結婚式の記念品にしたいと、石部に移ったあざみ寮を訪ね、繁野さんのお宅に一晩泊まらせていただき、寮生のみなさんのたくさんの話をうかがった。この10年ほどは、春になるとお宅を訪問して、美味しいご飯を頬張りながらの語り合いが楽しみでした。「もうちょっと若かったらいっしょに北欧行きたかったわ」。ほんとにそうでしたね。
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近江学園創設者の糸賀一雄さん、糸賀さんと研究活動にとりくんだ田中昌人さん(全国障害者問題研究会初代委員長)を敬愛していた繁野さんから聴く発達保障の真髄に迫る実践や寮生のみなさんの姿は興味深く、時間を忘れるほどでした。
昨年、張貞京(ちゃん ちょんきょん)さん(京都文教短期大学)著『高齢期を生きる障害のある人』(全障研出版部)の編集でも張さんと繁野さんのインタビューに同席しました。
「糸賀先生から、(アルバイトしていた)あざみ寮に残ったらいかがですかって言われて嬉しくて働きはじめたの」「糸賀先生のところには、いろんな研究者や芸術家が集まってたの」「織物をはじめるのと同時ぐらいに田中先生が(発達研究に)関わってくれたからよかったね。何かいろんな発想が生まれてきた。そこからいろんな展開につながっていった」「楽しんでたんですね。仕事は楽しくないとあかんよね」。
糸賀一雄著『福祉の道行-生命の輝く子どもたち』(中川書店)は、糸賀さんが新書判の本を出したいと書きためた原稿を田中さんらが整理され2013年に刊行された。第四章「子どもたちの心の中に社会を織る」は繁野さんの実践研究だ。
「役割をはたすということは、集団生活のなかでないとできないことである」「暮らしのなかに素朴な実用に耐える芸術を生み出すのである。そういう生産者として、あざみ寮の娘たちはふさわしいのではあるまいか」「どんな障害をもっていても、"人と生まれ人となっていく"のであって、その道行きは万人に共通であるという根本的な理念である」。糸賀さんの言葉だ。
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寮生のことを語りはじめたら話は終わらない。楽しかったこと、おもしろかったこと、感動したこと、涙がでたこと、織物のしごとも、みんなでとりくむ寮生劇も、東大寺への「死ぬことは怖くない」を知る学びの旅も、なかまの看取りのことも、みんなみんな繁野さんの人生そのものだった。
コロナの影響で、退職後も出かけていたあざみ寮の訪問も、寮生たちの繁野さんのお宅訪問もできなくなって数年。そんななかでの在宅療養生活で、最後の頃は、みんながかわるがわるお宅を訪ねた。主治医も「この家はいいですね。みなさんの声が聞こえて」と言っておられたという。
住まいだけでない「暮らしの場」「働く場」「余暇の場」、そしてこころ許せる仲間がいること。日本におけるノーマライゼーションとインクルージョンのとりくみ、安心できる暮らしの総合的な環境づくりの重いバトンはリレーされる。
現実を、大人を変えていく少年を書きたかった~「バッテリー」
品川 文雄(発達保障研究センター前理事長 / 元小学校障害児学級教諭)
深掘りしよう、国連による解釈や指針
佐野 竜平(日本障害者協議会理事)
まちづくりに防災を織り込む ~誰もが〈助かる〉社会を創るために~
石塚 裕子(東北福祉大学教授 / 日本福祉のまちづくり学会副会長)
いつもの帰り道で-安永健太さんの死が問いかけるもの-
今井 友樹(映画監督)
障害年金改革の機運を高めましょう・・障害年金法研究会から国への提言の意義
藤岡 毅(弁護士)
長沼 慧(画家)
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