障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

24年3月22日更新

2024年「すべての人の社会」3月号

2024年「すべての人の社会」3月号

VOL.43-12 通巻NO.525

人道支援・開発・平和構築の連携(ネクサス)における当事者の役割

JD理事 野際 紗綾子

 

  ガザの人道危機、能登半島地震等、国内外で緊急事態が起こりました。そして、様々な地域で危機が長期化・深刻化する中で、世界の難民・国内避難民は1億1,400万人に上ります。難民問題への対応を論議する「グローバル難民フォーラム」が2023年12月13~15日にスイスのジュネーブで開催され、参加してきました。

 同フォーラムで様々なイベントがあった中で「"Nothing about us, without us("私たち抜きに私たちのことを決めないで)」というタイトルの関連部会もありました。ここでいう「私たち"us"」とは、難民・避難民自身のことです。フォーラムを通じて、難民当事者団体の重要性があらゆるところで指摘され、多くの難民当事者が発表していました。

 日本政府は「人道・開発・平和の連携(ネクサス)」を宣言(プレッジ)しました。具体的には、人道支援と並行して、難民の自立、受け入れ国の負担軽減のための開発協力、難民を生む根本的な原因である紛争の解決・予防のための平和構築を行うものです。AARは調整役を担い、緊急人道支援を実施するジャパン・プラットフォーム(JPF)の加盟NGO一同として、それに呼応するかたちで、ネクサスの宣言を合意しました。

 ガザ、ウクライナ、シリア、スーダン、アフガニスタン、ミャンマーなど、「平和」からは程遠い状況にある国や地域は、残念ながら少なくありません。そのような状況下で私たちにできることを考えたとき、人道支援と開発協力と平和構築の連携(ネクサス)が重要になってきます。例えば、すべての人に優しい社会を築いていくための「障害インクルーシブな開発」事業に取り組みながら、災害や紛争が起こった時には、障害者も誰も取り残すことのないよう、命や生活をつなぐ人道支援を行うことが重要になります。

 そしてさらに、開発協力と人道支援に携わりつつも、いつかそれら国や地域に平和が訪れたとき、もしくは訪れるまでの間に、紛争や災害の影響を受けた人々が自らの力で復元・回復していく力(レジリエンス)を高めていくよう、エンパワメントすることも重要です。その中心となるのは、紛争の影響下にある難民・避難民の「当事者」であることは言うまでもありませんが、その中でもさらに厳しい問題に直面する、障害のある難民・避難民の「当事者」の参加の重要性について理解を促進し、経験や知見を積み上げていけたらという思いを新たにしました。

視点 能登半島地震 甚大な被害 支援に力合わせたい          


JD常務理事 増田 一世

 2024年2月21日、日本障害フォーラム(JDF)の声かけで、能登半島地震の障害者支援に関する第1回情報交換・意見交換会が石川県社会福祉会館(金沢市)で開催された。参加メンバーは、石川県内の障害者団体や支援団体、石川県健康福祉部障害保健福祉課、そしてJDFを構成する各団体からの約50人であった。

 JDFでは、1月1日の能登半島地震を受け、1月5日に災害総合支援本部の会合をオンラインで開き、各団体が把握する情報交換を開始。東日本大震災や熊本地震の際に現地支援センターを立ち上げ、地元の障害関係団体等と協力して、長期にわたる支援を行なってきたJDFだが、日を追うごとに被害の大きさが明らかになり、現地支援センターの必要性も議論してきた。

 まずは石川県内の障害関係団体との意見交換が重要と、この第1回意見交換会開催となった。JDFの阿部一彦代表は、開会にあたり「仙台から来た。13年前の東日本大震災には被災地域の代表としてJDFの人たちと意見交換を重ねた。それぞれの地域の困難は違うが、地元の皆さんとのネットワークが重要であり、それが伴わないと支援の実効性はない」と述べた。

 そして、現地の団体から次々と被害状況が報告された。「被害が大きすぎて何から手を付けてよいか…、安否確認だけでも大変だった。家を失って避難所生活、地元から離れ二次避難所で暮らす人もいて、地域組織の継続も厳しい。被災者は故郷を離れたくない、できれば戻りたいが、現状の生活再建の支援金では住宅再建は難しい。現在も断水状況が続くところもある」「安否確認、被災状況、必要な支援の調査を行なった。避難していても能登に帰りたいというニーズに応えられる復興支援が必要」「耳が聞こえないので情報が入ってこない。通訳も被災。Wi-Fiがつながらないと遠隔通訳も利用できない」「当団体に所属する奥能登の障害者手帳所持者の半数以上の状況が確認できていない。専門職の団体が個別訪問の予定だが、聴覚障害者の特性を理解できているか心配」「2月13、14日と5つの市町を訪問し、避難所にも行ったが、避難生活も50日となり疲れてきている。壊れた家でも自分の家に帰りたいとの思いでいる。訪問した3つの事業所は、利用者は半数に満たないが再開した。だが、事業所の敷地は液状化し、修理が必要。避難している職員や退職希望者もいる。人材不足、支援費も不十分で運営も厳しい。平常時の制度では再建が難しい。国庫補助の検討を」「加盟事業所10か所の内、4か所が建物被害、特に輪島、珠洲が酷い。日中活動を再開しても、給食を食べて解散という状況。和倉温泉が壊滅状態で仕事を失った事業所もある。金沢市や県外避難した利用者も多く、避難先の状況を把握しづらい。障害に合わせた仮設トイレも少ない。障害のある人は地震の恐怖からお風呂に入れなくなったり、家に入れなくなった人もいる」。

 このような各団体の報告を受け、藤井克徳JDF副代表は「生活再建資金や福祉避難所の問題は、JDFとしても厚労省や県に要望していきたい。障害のある人の安否確認に動き始めた団体もあり、こうした団体と連携して動いていきたい。東日本大震災、熊本地震の時には現地支援センターを設置し、地域からのSOSを受け止め、必要な支援を他団体とも連携して進めた。事業所の職員も疲弊しており、支援内容は時間とともに変わっていくだろう。今後も不定期でもこうした会議を重ね、どこに困難があるのか共有しつつ、必要な支援をしていきたい」と述べた。

 意見交換会の後、JDF有志で中能登、奥能登の被災地や障害福祉事業所を訪問する機会を得た。被害状況は厳しく、被災現場に立つと言葉を失い、長期にわたる支援の必要性を痛感した。突然、安心できる住まいや日常を失い、豊かな自然や文化も根こそぎ奪われた。この事態に直面し、JDとしても、国に能登半島地震復興政策の優先度を高めていくことを強く求めつつ、加盟団体の皆さんと力を合わせ支援の担い手となっていきたい。

2024年2月の活動記録


What's New

JR駅無人化反対訴訟について

德田 靖之(弁護士)




私の運動の軌跡と『障害のある人の分岐点』

すべての人の人権を考える~30年余の要約筆記活動から~

三宅 初穂(( 特非)全国要約筆記問題研究会前理事長)




立候補

障害者権利委員会委員選挙に向けて

 田門 浩

  


連載 出かけよう!おとなも読みたい えほん・児童文学の時空旅 第7回

ネエネエ ノンタン あそぼう

品川 文雄(発達保障研究センター前理事長/元小学校障害児学級教諭)

  


連載 家族も自分の人生を歩む 家族依存・家族支援を考える 第24回

何層ものネットワークとつながりを大事に

中島 哲(弁護士/一般社団法人札幌市手をつなぐ育成会理事)




連載 障害者権利条約を日本で生かす 16

第27条労働及び雇用、総括所見が伝えたいこと

中村 敏彦(JD理事/一般社団法人ゼンコロ会長)




連載 赤國幼年記Special版12

~旧ソ連の障害児収容施設で~

古本 聡(翻訳業)




トピックス・インフォメーション


いんふぉめーしょん 

優生保護法問題の政治的早期・全面解決を求める3.21院内集会




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