22年9月20日更新
VOL.42-6 通巻NO.507
■巻頭言 憲法制定75年 平和・人権を守る道筋を考える!
JD「憲法と障害者2022」に参加しましょう!
JD理事 白沢 仁
原水爆禁止2022世界大会(ヒロシマデー集会・ナガサキデー集会)が8月4日から9日までの6日間、広島・長崎での現地集会とともにオンラインでも開催された。大会テーマは、「被爆者とともに、核兵器のない平和で公正な世界を―人類と地球の未来のために」。世界各国から延べ4000人、オンラインアクセス4300か所とこれまでにない参加と関心を集めての大会となった。新型コロナウイルス感染の影響で3年ぶりの開催となったこと、なによりも2017年7月7日に国連採択、2021年1月22日に発効された核兵器禁止条約の第1回締約国会議が6月21日から23日にオーストリア・ウィーンで開催されたことも大会成功の背景にあったことは間違いない。
広島と長崎に原子爆弾が投下されて今年で77年むかえている。しかし、人類はいまなお、核兵器の危機に直面している。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵略を強行している中で、核兵器による威嚇を繰り返している。アメリカや北大西洋条約機構(NATO)も「核抑止力」にしがみつき、その維持・強化を図っている。世界唯一の戦争被爆国・日本の政府は、核兵器禁止条約を「非現実的」と反対し、批准どころか署名さえしていない。アメリカの「核の傘」に依存することに固執し、最近ではウクライナ侵略を口実に、憲法9条に自衛隊を明記、「敵基地攻撃能力」の保持、「核共有」、そして防衛費の「国内総生産比2%」「防衛力を5年以内に抜本強化」などの議論をつよめている。
今年の世界大会では「広島宣言」「長崎からのよびかけ」が採択された。「広島宣言」では、《核兵器は、人間として死ぬことも、人間らしく生きることも許さない、「絶滅」だけを目的とした「絶対悪の兵器」である。その使用も、使用の威嚇も断じて許してはならない。その危険を根絶するには、核兵器の完全廃絶以外にない。我々は、新たな決意をもって、「核兵器のない平和で公正な世界」の実現にむけて歩みをすすめる。》と世界によびかけた。この決意を被爆国日本の政府と国民がどう受け止め、どう行動するかが、いま大きく問われている。
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日本障害者協議会(JD)は11月1日(火)、障害者のしあわせと平和を考えるシリーズ8『憲法と障害者2022』を開催します(本誌前頁などで案内)。憲法制定75年を機に、戦争・核兵器のない平和な社会の実現とハンセン病・優生思想の歴史をふりかえり、人権が保障される社会の実現にむけて、一緒に学び合い、考え合いましょう。1人でも多くの方々の参加を呼びかけます。
JD副代表 石渡 和実
8月22日、23日、国連(ジュネーブ)の障害者権利委員会での日本審査である。立場によって期待するところはさまざまであろうが、審査結果を踏まえ、それぞれの新たな活動がスタートすることになる。日本の社会はどこまで前へ進めるのか、転機としなくてはならない。
2014年1月20日、日本が条約を批准してから確実に変わってきたと感ずることは多い。その1つが、「意思決定支援」である。障害者権利委員会の「一般的意見第1号」では、第12条「法律の前にひとしく認められる権利」が取り上げられた。この条文が作られた背景には、一般に権利擁護の制度と認識される成年後見制度が、「最善の利益」と称して本人の決定を否定する、権利侵害そのものである、という当事者の強い主張があった。
成年後見制度の社会への広がりを目的の1つとする日本成年後見法学会(筆者も会員)は、条約の批准にすぐさま反応した。批准から12日後の2014年2月1日から2016年3月21日まで、9回にわたって「意思決定支援」を柱にシンポジウムを開催した。司法、福祉、医学など、さまざまな分野の研究者、実践者19人が登壇し、海外からの報告も含め、まさに学会の総力を挙げて、成年後見制度のあり方を検討したのである。
こうした努力の成果として、2020年10月までに、国レベルでの意思決定支援ガイドラインが、障害者支援、認知症支援、終末期における医療・ケア、身寄りのない人の医療、成年後見制度の利用など、5種類も作成された。子どもの権利条約とも関連する「意見表明支援」も検討され、2022年6月の児童福祉法の改正に至っている。
障害者権利条約の最大の意義は、医学モデルから社会モデルへの「障害者観の転換」であるとも言われる。しかし、障害分野に限らず、今まで「弱者」と位置付けられていた高齢者や子ども、死が迫っている人など、まさに「人間観の転換」が実現しつつあると感ずる。また、こうした流れを受け、難しいと言われていた民法改正までが実現する見込みだという。後見・保佐・補助の三類型を一元化、制度利用の終了や期間の限定、欠格事由との切り離しなど、抜本的改正が検討されている。
「意思決定支援」に関しては、津久井やまゆり園に入所していた方々の新しい生活をいかにして築くか、を検討する神奈川県の「意思決定支援チーム」の活動も注目されている。このアドバイザーを務める和泉短期大学教授の鈴木敏彦氏が、その成果を多くの場で発表してくださっている。ここでは、「意思決定支援」について特集した『実践成年後見 No92』(2021年5月)に掲載された、鈴木氏の論文の一部を紹介したい。
津久井やまゆり園から地域移行した方々が、別人のような笑顔で、生き生きと作業に励んでいる、といった様子はテレビなどでも紹介されている。施設内では引き出せなかった力を発揮し、まさにエンパワメントされ、充実した日々を送っている。本人の意思を尊重し、支援者が真摯に向き合うことで、「わかってもらえた」と一層前向きになる。その姿に触発され、支援者もさらに意思決定支援を充実させ、本人も生き生きと反応を返していく。こうした繰り返しを、鈴木氏は「利用者‐支援者のエンパワメントサイクル(プラスの循環)」と呼び、支援者も力を付け、より的確な支援ができるようになると主張している。同じ特集で、社会福祉士の西原留美子氏はこれを、「正のスパイラル」と呼んでいる。
本人中心の意思決定支援は、支援者も親や家族、地域の人々も力を付けていくという「エンパワメント連鎖」などの言葉も紹介されていた。意思決定支援の実践は、本人だけでなく、周囲の人々も変え、地域そのものが確実に変わっていくのである。
今回の参院選では……
庵 悟(全国盲ろう者協会)
小森 淳子(全国障害者問題研究会岐阜支部)
高梨 恵子(障害をもつ人の参政権保障連絡会)
太田 修平(障害者の生活保障を要求する連絡会議)
障害者権利条約 初の日本審査を終えて
藤井 克徳(日本障害者協議会代表)
音楽との出会い
石塚 研(全国精神障害者団体連合会 清算人)
今、大人が声を上げる時 一人ひとりが風を起こそう
天笠 明憲(埼玉県在住)
“内なる優生思想”と向き合い続ける
迫田 朋子(ジャーナリスト/元NHK福祉番組ディレクター)
このままでいいのか⁉ 日本!! ~精神障害者支援を通して見える問題~
内山 澄子(全国精神障害者地域生活
支援協議会(あみ)副代表
)
アジアから:場面別5 -娯楽・スポーツ-
佐野 竜平(日本障害者協議会理事
法政大学現代福祉学部教授)
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