障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

22年4月19日更新

2022年「すべての人の社会」4月号

2022年「すべての人の社会」3月号

VOL.42-1 通巻NO.502

巻頭言 覚悟の新しい生活様式

JD理事 馬上 和久

 先日、妻が3回目のワクチン接種を受けました。私には極度のアレルギーがあり接種後の副反応の血栓を懸念して、ワクチン接種は受けていません。国民の3回目のワクチン接種率は全体の3分の1程度にすぎない状況なのに、テレビのニュースでは4回目のワクチン接種が取沙汰されています。

 これら新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の経緯は、2019年11月中国湖北省武漢市から感染が始まったとされていて、瞬く間に世界を席巻しました。感染症蔓延に伴う対策で、手洗い・うがい・マスク着用等が欠かせない習慣になりましたが、2021年9月頃から顕著になった感染者数の減少により緊急事態宣言等も解除になりました。しかしながら第5波の感染者数鎮静化の原因は判然としていません。

 多くの人のワクチン接種による社会的抗体が形成されたとか、新型コロナウイルス菌自体の変質による感染力弱体化等が原因とされています。このような状況経緯を背景として、従来冬の感染症の主流であったインフルエンザの発症がここ数年少なかったことから、今冬は従前のインフルエンザ流行が懸念されていましたが、第6波の感染拡大により現在に至っています。

 これらの状況を踏まえ私たちの社会生活は今後どのように変わるのでしょう。手洗い・うがいは当たり前としても、常時マスクをして感染者が一定数以上発生する度に休校や在宅勤務等、生活スタイルを変えて対応するのでしょうか。いいえ、そんなことはないと思います。多くの感染症同様、ワクチン接種により制御出来る病気になるでしょう。人類は感染症と長く共生をしてきました。そんな経験から、怖い未知の感染症を普通の病気同様制御出来るものにしてきたのです。現在数々の調査研究が進められています。ワクチンと並んで罹患後の対処薬開発です。服用薬・点滴薬等が順に治験を終え医療現場に投入されています。

 私たち透析患者の日常生活も新たな生活習慣が広がりつつあります。その一例が毎朝起床時の体温測定です。発熱が認められた場合、透析室に直接行かず、発熱外来に行って感染の有無を調査することが求められたり、透析室の指示に従うことが決まりとなりました。勤務の態様も少し変わってきたようで、地方の新幹線駅周辺に転居したり、従来レジャーで使われていた郊外の施設に併住するとか、サラリーマン経験ある身として身につまされる思いです。ですが、新たな生活様式としてこれからの標準なのでしょう。

 

視点 優生保護法裁判、2つの高裁判決から想うこと

JD副代表 石渡 和実

 厳しい闘いを展開していた優生保護法裁判で、立て続けに嬉しい判決があった。2月22日の大阪高裁、3月11日の東京高裁である。裁判関係のメーリングリストには、「思わず涙が出た」という弁護士の皆さんの言葉が次々に流れた。

 大阪高裁の太田晃詳(てるよし)裁判長は、優生保護法が自己決定権を保障した憲法13条や法の下の平等を定めた14条に違反するとした。20年を過ぎると損害賠償の権利がなくなる除斥期間については、「そのまま認めることは著しく正義公平の理念に反する」と断じた。この言葉に、「胸がすく」想いがしたのは私だけではあるまい。

 東京高裁の平田豊裁判長は、優生保護法を「差別的思想で、目的達成の手段(避妊手術)も極めて非人道的」と痛烈に批判し、明確な憲法違反であると言い切った。除斥期間に関しては、「最高法規である憲法に違反する被害の救済を、下位規範である民法724条(除斥期間の規定)を無条件に適用して拒絶することは慎重であるべき」と論じた。「なるほど!」と、法律に疎い私も合点させられてしまった。

 判決にも感動したが、さらに感極まったのは異例と言われる「所感」である。原告の北三郎(活動名)さんに向けて語った。「手術によって、人としての価値が低くなったものでも、幸福になる可能性を失ったものでもありません。差別されることなく、今後も幸せに過ごしてほしいと願います。それを可能にする差別のない社会を作るのは、国はもちろん社会全体の責任と考えます」。北さんは涙を拭って一礼し、傍聴席からは拍手が沸き起こったという。

 これを聞いて思い出した裁判があった。2013年3月14日の東京地裁判決である。当時50歳だったダウン症の名児耶(なごや)匠(たくみ)さんが、「選挙に行きたい」と起こした裁判で、後見人が付いたために公職選挙法により選挙権が奪われたことを憲法違反と訴えたのである。訴えが認められ、定塚(じょうづか)誠裁判長は「どうぞ、選挙権を行使して社会に参加してください。堂々と胸を張っていい人生を生きてください」と所感を述べ、やはり傍聴席から拍手が起こった。国は控訴したが世論の力もあって、7月17日に東京高裁で和解に至った。障害がある人の、「訴え」の偉大さを認識させられた。

 さて、東京高裁判決から2日後の3月13日、「優生保護法とわたしたちの子育て」というオンラインセミナーが開かれた。参加者は20人余り、うち15人ほどは子育てを経験した30代から70代までの障害当事者であった。結婚・出産を大反対され、母体保護法時代の出産であっても、「たいへんだからもう子どもは要らないでしょう。卵管を縛る手術をしましょう」と、医師から平然と言われたという人も複数いた。大学2年生の脳性まひがある女性は、「結婚は難しいかも、子どもを産むなんて無理」と今も言われ続けるという。日本社会に根深く残る優生思想を実感させられたが、彼女は力強く言い切った。「私達の世代で止めなくちゃいけない。子どもを産むのがぜいたくなんて言わせちゃいけない」。

 障害ゆえに厳しい体験を強いられた人が裁判を起こし、世論を動かして法律や制度を改正し、当たり前の暮らしを実現する。優生思想をはじめとする差別の解消に向かって、障害当事者が歩み続ける。

 2つの高裁判決は、そのような運動が確実に成果をもたらすということを実証してくれた。両判決とも国は上告したが、誰ひとりあきらめてなどいない。「差別のない社会を作るのは社会全体の責任」。この言葉を噛み締めて、改めて力を結集しなければならない。JD藤井代表は言う。「運動は裏切らない!」  

2022年3月の活動記録



JD最近のうごき

藤井代表、NHK放送文化賞受賞・ウクライナの障害者を想い詩作
ウクライナへの軍事侵攻・戦争反対の声明 障害を取り巻く裁判、連続講座

 佐々木 良子(日本障害者協議会理事)

   


ささえあい・つながり・わすれない

東日本大震災から11年後の福島、南相馬の今
郡 信子(ディさぽーとぴーなっつ)     



投票バリアフリー  

精神障害者の参政権の課題
  山田 悠平(一般社団法人精神障害当事者会ポルケ)



連載 アートと障害者 No.15

正常と色弱の境界はない

栗田 正樹(色弱のデザイナー・アーティスト

NPO法人北海道カラーユニバーサルデザイン機構)


連載 家族も自分の人生を歩む 家族依存・家族支援を考える 第8回 

親亡き後を担う知的障害者の兄弟
神達 五月雄(荒川オヤジの会)

         


連載 優生思想に立ち向かう 第31回

優生保護法による強制不妊手術被害
大阪、東京高裁が被害救済を認める
新里 宏二(全国優生保護法被害弁護団)




連載 COVID-19のインパクト 第16回

アジアから:場面別1 -背景の紹介-
佐野 竜平(日本障害者協議会理事 
法政大学現代福祉学部)



連載エッセイ 障害・文化・よもやま話 第31回

優生思想に悩んだ障害者たち―句集『車椅子』を追いかける(後編)
荒井 裕樹(二松学舎大学)



トピックス


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