24年10月24日更新
VOL.44-7 通巻NO.532
JD理事 黒澤 和生
本年8月28日から9月8日までの12日間にわたり、パリパラリンピックが開催された。オリンピックは、パリ大会で33回目だが、パラリンピック競技大会は17回目を数える。日本選手団の参加選手数は海外での大会では史上最多の409人だった。それぞれの競技で熱戦が繰り広げられ、選手たちは活躍した。我々も感動の連続であった。
ところで皆さんは、パラリンピックの歴史をご存じだろうか。第2次世界大戦で傷を負った兵士のリハビリ施設であった英国のストーク・マンデビル病院の医師F・グットマン(脊髄損傷科の初代科長)が、急増する傷病者の医学的治療と早期の社会復帰を目指して積極的にスポ-ツ導入を進めたことに始まる。ストーク・マンデビルが、パラリンピック発祥の地とされている所以である。
1948年のロンドンオリンピック開会の同日、グットマンのセンターで『ストーク・マンデビル競技大会』が開かれた(アーチェリーと卓球)。病院で開催されたスポーツフェスティバルが欧州各地に拡がることになる。1952年には、オランダの選手たちも参加したことから、この年の大会が『第1回国際ストーク・マンデビル大会』と位置づけられた。1960年、オリンピック開催国イタリアのローマ大会から『第1回パラリンピック』(車いす使用)と呼ばれる(第9回国際ストーク・マンデビル大会)。第2回は、1964(昭和39)年に「第13回国際ストーク・マンデビル競技大会」と「国際身体障がい者スポーツ大会」の2部構成で開催された。この大会は『東京』で開催され、東京オリンピックと同時開催となった。この大会では"愛称"としてパラリンピックの文字が初めて登場した。日本での開催は、ストーク・マンデビル病院に留学した中村裕(ゆたか)医師の功績が大きい。
1989年、もう一つのオリンピックを目指して、国際パラリンピック委員会(IPC)が設立された。各国パラリンピック委員会から構成される国際非営利組織である。設立の目的は、機会均等と完全参加、卓越した障害者の技と力を競う場の提供であり、従来の「参加型」パラリンピックを改め、標準記録や国際ランキングの導入(個人競技)、予選通過の義務化(団体競技)など競技性重視へと向かうこととなった。
国際オリンピック委員会(IOC)との連携協議の結果(連携協定:2000年以降)、①「オリンピック開催都市は引き続きパラリンピックを開催しなければならない」②「組織委員会はパラリンピックも担当する」③「パラリンピック開催に伴う財政的援助の義務化」などの基盤整備の実施などが合意された。パラリンピックは、誰一人取り残さないという社会的包摂の推進(ソーシャル・インクルージョン)において実績のある世界最大級のスポーツイベントに成長したと言われている。
■視点 つけられていないけじめ
JD代表 藤井 克徳
胸のすくような名裁きから三か月余を経た。最高裁大法廷判決を新たな基点として、さまざまな動きがみられる。主なものとしては、内閣総理大臣を中心とする関係大臣による原告への謝罪面談、同種の裁判でありながら進行の事情で最高裁判決に束ねられなかった案件の和解合意の調印(最高裁判決と同水準の補償条件)、政府と原告・弁護団・優生連の間での基本合意文書の締結、提訴していない被害者すべてを対象とした補償法の立案、真相究明のための調査ならびに検証、再発防止策の構築などがあげられる。これらのうち、関係大臣による謝罪面談と係属訴訟の和解調印、基本合意の締結は既に終えており、残りは、これからヤマ場を迎えたり、議論が始まることになる。
大きくは全面解決に向かうことになるが、気掛かりなのは国の姿勢だ。判決を追い風に積極的な姿勢に転じるのか、それとも渋々向き合おうとしているのかである。もう少し突っ込んで言うと、加害者意識を堅持できているのか、優生思想との決別をどこまで真剣に考えているのかということになる。判決に従うだけでなく、判決を凌駕する構えがほしい。
その点で一つはっきりさせておきたいことがある。それは、一連の裁判で政府が示してきた見解のふり返りである。けじめをつけるべきと言った方がいいかもしれない。少なくとも次の事柄については、説明責任を果たすべきだ。説明責任だけでなく、謝罪の弁がほしい。代表的なものとしては、大半の地裁や高裁で示されていた「優生保護法による被害は憲法違反」について、国は一貫して認否を避けてきたことだ。最高裁の結論が出た今、なぜ認否を避けてきたのかの理由を明らかにすべきである。また、判決に先立って5月下旬に行われた口頭弁論での国側の言い分もひどかった。具体的には、「(除斥期間問題について)例外を広く認める解釈を採ると、既に消滅したはずの責任を追及する訴訟が提起されるなど、法的安定性に対する影響は計り知れない。(中略)国は、原告らの権利行使を不能にしたり、著しく困難にしたりすることに積極的に関与しておらず、特段の事情があるとは認められない。」、「国会では一時金支給法が全会一致で成立した。同法での解決が最も適切で妥当だとの立法府の意志を示すもので、司法が自ら確立した判例法理を根本的に変更し解決を図るのは、立法府の役割をないがしろにすることになりかねず、司法が果たすべき役割を超える。」である。文字通りの言いがかりであり、屁理屈としかいいようがない。原告は嫌な思いをさせられたに違いない。
最高裁の大法廷判決は国の主張をことごとく退けた。だからといって、国の「言いたい放題」が一括して不問に付されたわけではない。国は国で、重要事項については自身の口で説明責任と謝罪を行うべきである。
こうしたけじめは、原告の嫌な思いを晴らすだけではない。今後の関連立法の制定準備や、検証作業にあたっての新たな足場づくりにもつながるはずだ。判決の好感ムードに掻き消されることなく、けじめもまたこの時期の疎(おろそ)かにしてはならない課題となろう。
新十津川物語
品川 文雄(発達保障研究センター前理事長 / 元小学校障害児学級教諭)
障害の理解と配慮を 警察に求めたいこと
酒井 依子(鴻沼福祉会事務局長)
一般的意見第1号(2014年)第12条 法律の前にひとしく認められる権利
藤木 和子(日本障害者協議会理事 / 全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会副会長 / 弁護士)
当事者と一緒に考える災害への備え
石塚 裕子(東北福祉大学教授 / 日本福祉のまちづくり学会副会長)
家族みんなの「自立」は、困難を乗り越える原動力
赤塚 美枝(「ぷりずむ」理事長)
障害年金改革の声をあげましょう!・・障害年金改革の日弁連から国への意見書の意義
藤岡 毅(弁護士)
寄り道編 ―講演報告「障害者運動の水脈をたどる」
荒井 裕樹(二松学舎大学教授 / 障害者文化論研究者)
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