24年8月28日更新
VOL.44-5 通巻NO.530
JD理事 山本 伸一
2024年元日に発災した「能登半島地震」。地震後における避難所等での暮らしは、その人の尊厳が損なわれる可能性があります。リハビリテーション支援は、2011年東日本大震災から始まり、2016年熊本地震、そして今回におきましても「日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)(ジェイラット)」による避難所支援が定着してきました。JRATとは、日本リハビリテーション医学会、日本リハビリテーション病院施設協会、日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本言語聴覚士協会等の13団体で構成される「東日本大震災リハビリテーション支援関連10団体総合戦略会議」から発展した団体です。支援者の職種は、医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等であり、そのチームが避難所を巡回し、生活不活発病を防止します。利用者の心身機能を評価しトリアージ(優先度を決めること)を行います。段差があり、転倒等の危険性があれば福祉用具を活用し環境整備を行います。テントなどに引きこもりになりがちであれば、集団・個別による体操指導、さらには作業場所を確保し、手芸などの趣味やActivity(アクテビティ)等を行います。そのアプローチは、災害関連死を防ぐことになります。
2024年4月30日、日本医師会災害医療チーム(JMAT)(ジェイマット)が撤退する期日をもって、JRATの支援活動も終了しました。結果的には、この期間で延べ5900名以上の動員による支援となりました。避難所等に対しては、ある程度の成果もありました。しかし今、人々の生活は、そして尊厳は、守られているのでしょうか。6月になって能登半島の事業所の2割は閉鎖しているとか、障害者事業所に通っている利用者を支援する職員が足りないと聞きます。今、JDF(日本障害フォーラム)が支援に入り、構成団体であるJDもそのボランティアの募集をしています。みんなで協力し合ってまいりましょう。
災害には、Stage(ステージ)(段階)があります。リハビリテーションに例えますと、発災時1か月は急性期、3か月程度は回復期(復旧期)、その後は、生活期(復興期)です。心身ともに自立するには、だれもが非常に長い時間がかかるでしょう。事業所に通われている方々にとっては、さらに支援が必要です。共に助け合い、共に生きる。そして、共に活きる世界の再構築を切に願っています。
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2024年5月31日の日本障害者協議会(JD)総会におきまして、理事を拝命いたしました。微力ではございますが、何卒よろしくお願いいたします。
■視点 優生保護法問題全面解決に向けて 一刻を争う精神科医療改革
JD常務理事 増田 一世
◆優生保護法全面解決への第一歩だが
優生保護法裁判最高裁判決が出た2024年7月3日、そして首相官邸で岸田内閣総理大臣が原告に謝罪した7月17日、いずれも忘れられない日となろう。原告をはじめ被害にあった人たちの長年の辛苦に対し、司法が国の人権侵害を認めた。優生保護法裁判はさまざまな困難を乗り越え、重い扉をこじ開けた。この大きな一歩に原告はじめ弁護団、支援してきた人たちは歓喜の声をあげた。本当によかった、でもなぜこんなにも時間がかかったのか、との思いもそれぞれの胸に去来する。
首相官邸での面談で優生保護法の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)を代表して発言したJD藤井代表は「この国はこの日を境に変わらなくてはならない。変えなくてはならない」と語った。それもまた多くの人たちが共感するところであった。この日を機に変えるべきことが山積しているという事実も重い。
優生保護法の目的には「不良な子孫の出生を予防する」とあり、いのちを選別する法律として役割を果たし、障害のある人への差別偏見、排除の構造をつくってきた。声のあげづらい人ほど社会の辺縁に押しやられ、声をあげようもない状況に置かれた。
◆強制不妊手術と保護義務者制度
そして、一刻も早く改革しなくてはならない社会課題の1つに東京八王子の「滝山病院事件」に代表される精神科医療の問題がある。2023年2月にNHKが報道し、その実態を明らかにした滝山病院での患者たちへの処遇は想像を絶するものであった。そして、6月29日には「死亡退院 さらなる闇」として、NHKはその後の滝山病院の状況を伝えた。精神疾患があっても人工透析ができる病院として重宝がられている滝山病院の治療が、いかに劣悪なものだったか、昨年の報道以降も新たな入院患者が送り込まれていたことも報道された。いのちを支えるべき医療の場でいのちが奪われていく現状が明らかなのに、病院は存続している。
戦後、精神病者監護法、精神病院法を廃止し、1950年に成立した精神衛生法。各地に広がっていた私宅監置(座敷牢)を廃止する法律ではあったが、一方で警察官通報、精神障害のある人の行動制限、保護拘束の規定等社会防衛的要素が色濃く残されていた。そして、この精神衛生法に創設された保護義務者制度は、遺伝性以外の精神病患者や知的障害者に対する強制不妊手術に道を開いた。1952年の優生保護法改正には「遺伝性のもの以外の精神病又は精神薄弱についても精神衛生法に規定する保護義務者の同意があれば審査のうえ同手術を行えることとするものである」が加わった。精神科医療の問題の根深さの一端を露呈している。
◆一刻の猶予もない精神科医療改革
精神障害のある人への差別偏見は、長年月を経て社会の中に重く積み重なってきた。精神障害のある人への隔離収容政策は今なお続く。優生保護法問題の全面解決に向けて、精神科医療・保健福祉改革もその課題の1つに位置づけるべきであろう。そのために日本がまず取り組むべき課題は、すでに国連の障害者権利委員会が日本に向けた総括所見(2022年9月)に具体的に指摘されている。「独立した機関での死亡事例の調査」「非自発的入院、虐待につながる拘束を認める法令の禁止」「虐待防止のための独立した監視制度の設置」「精神科病院における残虐で非人道的な取扱いを報告・通報・救済や処罰の制度」等である。優生保護法がもたらしたすべての人権侵害や差別からの脱却のためにも精神科医療改革は早急に取り組むべき課題であり、10年、20年、30年と長期入院を続ける人たちの多くは高齢者であることを鑑みても、一刻の猶予もない。
不思議な世界にいざなう~富安 陽子の世界
品川 文雄(発達保障研究センター前理事長 / 元小学校障害児学級教諭)
令和の名裁き、国に鉄槌
藤井 克徳(日本障害者協議会代表)
災害と障害の課題 ~インクルーシブな防災の実現に向けて~
石塚 裕子(東北福祉大学教授 / 日本福祉のまちづくり学会副会長)
求められる真実の検証と障害者理解
赤平 守(日本障害者協議会理事)
~旧ソ連の障害児収容施設で~
古本 聡(翻訳業)
「優生」に悩んだ障害者たち――手術によって奪われるものは?
荒井 裕樹(二松学舎大学教授 / 障害者文化論研究者)
憲法と障害者2024〈予告〉・読者プレゼント
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■団体賛助会員・・・・・・1口10,000円(年間)
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