障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

24年4月19日更新

2024年「すべての人の社会」4月号

2024年「すべての人の社会」4月号

VOL.44-1 通巻NO.526

巻頭言 2024年度のはじめに

JD理事 中村 敏彦

 「降ります。空けてください!」車内から悲痛な声が聞こえてきました。電車から降りようとしている人がいても、まったく動こうとせず、スマホに夢中な人たちに発せられた言葉でした。こんな些細なことではありますが、最近、他人に無関心な人たちが増えているように思います。コロナ禍による自粛生活も背景に、話し相手が人ではなくなった弊害でしょうか。必要な情報も、必要でない情報も、時にはうその情報も、身近に、手軽に入手できるようになった半面、人と接する時間も少なくなりました。

 無関心といえば、障害者問題にも大きく影響します。障害に対する最も手強い壁は「無関心」と「無理解」と言えます。共生社会を実現するためには、他人に関心を持つこと、理解すること。容易ではありませんが優先課題のひとつだと思います。

 さて、平素より当法人の活動をご支援いただき、ありがとうございます。認定特定非営利活動法人日本障害者協議会(略称:JD)は、1980年、国連・国際障害者年(1981年)を日本でも成功させようと、障害当事者、家族、施設、専門職、研究者等、全国的な障害者団体が大同団結し、「国際障害者年日本推進協議会」として発足しました。発足以来、調査研究や政策提言の策定と公表、学習会・セミナー等の開催、情報誌やホームページ等による情報の提供、広く国民に向けた啓発運動などを 継続して行なっています。

 2012年、特定非営利活動法人(NPO法人)の認可を受け、2015年には、「認定」NPO法人の認定を受け、社会的責任と役割を果たすべく努力しているところです。「認定」NPO法人を維持していくためには、一定の要件をクリアし続けなければなりません。そのひとつの要件に、活動が社会から必要とされていることを証明するパブリック・サポート・テスト(PST)の基準を満たす必要があります。

 現在も、加盟団体(正会員)、また、個人や団体の賛助会員、そして、多くの皆様の寄附によって支えられてはいますが、とりわけ苦労しているのが、PSTにある絶対値基準「実績判定期間内の各事業年度中の3,000円以上である寄附者の数が、年平均100人以上であること」を満たすことです。

 JDは常に「最も困難で弱い立場にある人」の視点やニーズを大事にして活動しています。一人ひとり、そして、社会から必要とされ続けることが重要であり、そのために価値のある活動につなげていく必要があります。本年度も様々な活動を通じて諸課題に向き合っていきます。どうか、当法人の活動をご理解いただき、これまでにも増して支えていただきますよう、改めてよろしくお願い申し上げます。

視点 障害者基本法改正への鐘を          


JD副代表 薗部 英夫

 TVドラマ「昨日、悲別(かなしべつ)で」は、1984年当時リアルタイムで見ていた。廃坑となる北の町で、雪の中のファイヤーストームを囲む若者たち。エンディングの「22才の別れ」にぐっときてた。  10年ほど前、倉本聰「明日、悲別で」の舞台を観た。「2011年3月11日は「敗戦」の日と同じように、日本が変わらなければならない歴史の結節点だった」。いのちやエネルギーや政治のありようなどを変えなければならなかった。  そして今、テレビや新聞、社会に感じる息苦しさは半端ない。朝の電車の中で、「稼ぎたいなら、もっともっとがんばって!」とドアに向かって、独り言をくり返す青年をみた。

 心身障害者対策基本法(1970年制定)が、「障害者基本法」と改称するのは1993年。その後2004年、2011年に改正された。1981年の国際障害者年にはじまり、2006年採択の障害者権利条約など国際的な障害者の人権保障の流れのなかでのことだ。

 障害者基本法は附則に、「国はこの法律の施行後三年を経過した場合において、この法律による改正後の障害者基本法の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とある。  でも、2011年改正から13年が経過している。この間、制度改革推進会議は数々の制度改革の意見をまとめた。障害者権利条約の批准と国連審査による総括所見など大きな節目があった。

 障害者基本法改正への機運がJDF(日本障害フォーラム)内でも高まるなかで、3月6日、参議院予算委員会で藤井克徳JD代表は参考人としてつぎの意見を述べた。

 障害者基本法改正にあたっては、①2014年に批准した障害者権利条約にもとづくこと。そのためには新しい章立てなど見直しが必要。②遅れているところをひき上げること。優生保護法問題の対処、女性障害者分野の複合差別問題の解消、本格的な所得保障制度の確立、過重な家族負担からの解放など。

 JDは、今年1月から政策委員会と三役・理事会によって基本法改正にむけての意見をまとめる議論を行なっている。

 大きくはつぎの三つの柱をもとに、各条文ごとに検討すべき意見を整理している。
  (1)制度改革推進会議第二次意見の尊重
  (2)障害者権利条約人権指標に準拠すること
  (3)障害者権利条約、総括所見をふまえた障害者 基本法改正は「新しい章立て」でだ。

 各条文では、たとえば「総則の(目的)」では「障害者権利条約にのっとり」と明記すること。「(定義)」では、「障害及び社会的障壁により継続的に」を「継続的または断続的に」すべきこと。「(地域社会における共生等)」などの「可能な限り」は削除すべきことなどを求めている。また、「合理的配慮」の追加なども指摘している。「第三章 障害の予防に関する基本施策」の見直し、新たに「障害者施策の推進と監視」の章立ての必要性も強調している。基本法改正を実現しよう。

 10年前の舞台に戻る。廃坑の町、原発廃棄物最終処分場を誘致しようとする町。「明日、悲別に希望」はあるのか。カッチーニの「アベマリア」が流れ、「22才の別れ」のピアノが入るともう涙だ。

 希望は「無数のキャップライトの光」「友情」「約束」、そして「一寸引き=時間をかけて一寸ずつ動かす」に感じた。今も希望の鐘はそこに。

2024年3月の活動記録


ささえあい・つながり・わすれない

能登半島地震の状況 ~障害のある人のいま~

大野 健志(きょうされん「能登半島地震」災害対策本部事務局長)




ささえあい・つながり・わすれない

人とのつながりがあっての今、生きて
-東日本大震災から13年、能登への恩送りをいつか-

郡 信子(ディさぽーとぴーなっつ 施設長)




移動の権利

駅利用時に感じる二つの格差

平野 泰代(東京視覚障害者協会)

  


報告

JD 2023年度特別セミナー




連載 出かけよう!おとなも読みたい えほん・児童文学の時空旅 第8回

むこう岸~三つの悲しみに満ちた魂が出会い、もがき苦しみつつ、見いだす微かな光明

品川 文雄(発達保障研究センター前理事長/元小学校障害児学級教諭)

  


連載 優生思想に立ち向かう 第47回

【いのちを分けない社会へ】優生保護法問題の早期・全面解決に向けて

松本 多仁子(優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会事務局長)




連載 障害者権利条約を日本で生かす 17

「こども誰でも通園制度」(仮称)からみえてくるもの

中村 尚子(NPO法人発達保障研究センター理事長)




連載エッセイ 障害・文化・よもやま話 第43回

「優生」に悩んだ障害者たち――ハンセン病療養所の性的少数者(中編)

荒井 裕樹(二松学舎大学教授 / 障害者文化論研究者)




トピックス


いんふぉめーしょん 

JDの藤井代表が初めての"詩集"を上梓




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〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 日本障害者協議会
TEL:03-5287-2346 FAX:03-5287-2347

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