障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

23年11月22日更新

2023年「すべての人の社会」11月号

2023年「すべての人の社会」11月号

VOL.43-8 通巻NO.521

巻頭言 消える「みどりの窓口」、増える「無人駅」

JD理事 内田 邦子

 最近、視覚障害者の中でよく話題になっているのが、「みどりの窓口が無くなってどこにあるのかわからない」「窓口に職員がいない」など不便を強いられていることです。そこでちょっと調べてみました。

 JR東日本管内では2021年に440駅に設置していたものを2025年には約140駅にまで削減する方針です。この2年間ですでに94駅で廃止されました。JR東海も対面式の切符販売窓口を減らす方向、JR西日本も、2020年度に340駅に設置されていたものを2030年度末には約100駅に削減する方針です。

 なぜ「みどりの窓口」を減らすのでしょうか。JR東日本は削減を推進する理由として、チケットレスサービスの推進、機械や設備・人的資源のコスト削減と効率化、スペースを有効利用してあらたなサービスを行うためなどとしています。

 このような中でJRでは、「話せる指定席券売機」の設置で対応しようとしているようですが、「みどりの窓口」が閉鎖されるすべての駅に「話せる指定席券売機」が設置されるわけではないようで、テレビ電話での会話や操作に慣れていない高齢者や障害者への対応はどうなるのでしょうか。

 国土交通省によると、2020年3月末の時点で全国に9465ある鉄道の駅のうち、48.2%にあたる4564駅が無人駅となりました。

 読者の皆さんは、すでにご存じでしょうが、駅の無人化によって、大分市に住む吉田春美さん(故人)ら3人は、利用していた駅の変更を求めたり、無人駅を急きょ利用しようとして断られたことから、「駅の無人化は移動の自由を侵害する」などとして、JR九州に対し訴訟を起こしました。

 そのような中、2020(令和2)年5月に成立した改正バリアフリー法では、無人駅で鉄道会社が障害者のために取り組むべきガイドライン、たとえば、介助を希望する障害者に対しては、乗降時にすぐに対応できる支援体制を整備すること、あるいは介助を必要としない障害者に対しては、一人で列車に乗り降りできるように駅やホームを整備するようにということが附帯決議に盛り込まれました。

 安全を確保するのも利便性を提供するのも鉄道会社であり、公共交通機関としての責務は重大です。また、SDGsの観点からみてもこうした強引とも思えるやり方は許されるのでしょうか。そして、より最善な策を講じていく努力を、鉄道会社には求めたいと思います。

視点 忘れえぬ人

JD副代表 薗部 英夫

 一枚の写真がある。2006年11月11日、障害者自立支援法と平成の市町村大合併による大波が襲った年の結婚を祝う会でのベストショットだ。その写真が彼の遺影となった。

 新潟に暮らす脳性マヒによる重度の障害者・鈴木正男さん(1950年生)と出会ったのは1981年、学園祭での講演会だった。前夜、後輩のアパートに宿泊してもらい、わたしの作ったメチャクチャ炒めを、片足で食べ、「うまいよ」と言ってくれた。それからわたしたちは生涯の友となった。

 鈴木さんは「あきらめない人生」を懸命に生きた。10歳で父を亡くした。母に背負われ、近所の小学校へ数か月通った。「就学猶予・免除」で「学校へ行けないことだけは理解していた」そうだ。

 20歳を過ぎた頃、地域で障害者の集まりに参加。雑誌「みんなのねがい」を読むようになり、全障研の全国大会に参加すると、自分の視野の狭さを感じ、全国には同じような障害の人が輝きを放っていることに感動した。一人、二人と知り合いもできた。

 高齢となった母と二人で暮らしたが、母が入院することになり、介助者としての母と一緒に仕方なく彼も入院した。でも、母は退院できても、彼の身体の自由は利かなくなった。入院生活が一年ほど過ぎた頃、「もう自分では動けなくなった。いざることができないよ」と電話があった。

 彼の夢は新潟で全障研大会が開催されること。その夢が1993年に実現したとき、自分の町の福祉タクシー実現のとりくみを、障害者として自分が生きてきた誇り、しかし障害を持つがゆえの不自由、そして二次障害のやりきれないおもい、社会的不利としての行政への強い要望などをレポートにこめた。

 ところが、片足の指1本で打てたワープロも、二次障害で指先の感覚がなくなり、熱心な高校生ボランティアの「口述筆記」でレポートは完成した。その彼女は成人して彼の素敵なパートナーとなった。

鈴木正男さん 結婚写真  IT国会(2000年)でわたしは、鈴木さんのおもいとねがいを国会で訴えた。

 「新潟の鈴木正男さんから、電子メールで意見をいただきました。30歳ごろ、足で文字を書けなくなったので、足でキーボードを打ってワープロを使い始めました。42歳で障害が重度化して座ることができなくなり、寝たきりとなりました。もうだめかと思いましたが、科学技術の進歩を思うと、どんな障害があっても入力できる機器は開発できると信じることにしました。今は、あきらめるのではなく、人を介してもいいからと考えて、介護人と二人三脚で自分のホームページをつくり、介護情報を発信しています」。すべての人のためのIT基本法をと。

 それからもいろいろあった。なかでも、障害者自立支援法は、障害者がトイレすること、ご飯を食べること、外出すること、それらはすべて「応益」負担だ、「自己責任」だという天下の悪法だった。彼は仲間とともに連帯した。

 そして、長引くコロナ禍の生活も深刻で、結果彼の生命を削ることになった。

 障害者権利条約を締約したこの国で、鈴木さんたちが、つつましいけれど、生き甲斐のある生活を求めることは「贅沢」なのだろうか。

 鈴木さんとの出会いは、頭で考えるだけの「障害者問題」ではなく、「共感」と「実践」「運動」が試された。

 「学ぶこと、知は力だなあ」「あんたは、自分が生きてこれたブレーンの一人だ」「あんたに会えてよかったよ」。鈴木さんの言葉がよみがえる。

 おれも会えてよかった、そう思うよ。

2023年10月の活動記録

 

私の運動の軌跡と『障害のある人の分岐点』

学ぶ喜び・働く生きがいを求めて

藤野 高明(元盲学校教員)

 

連載 出かけよう!おとなも読みたい えほん・児童文学の時空旅 第5回

ひとりでいけるもん~はじめてのおつかい

品川 文雄(発達保障研究センター 前理事長 / 元小学校障害児学級教諭)

 

連載 優生思想に立ち向かう 第44回

「津久井やまゆり園視察」に参加して

八藤後 猛(日本障害者協議会 広報委員)

 

連載 家族も自分の人生を歩む 家族依存・家族支援を考える 第21回

たまたま、同じ家族に産まれてきただけなのに

仲田 海人(作業療法士)

 

連載 障害者権利条約を日本で生かす 12

精神科病院での隔離政策からの転換-14条、15条、16条関係-

池原 毅和(弁護士)

 

連載 赤國幼年記Special版8

~旧ソ連の障害児収容施設で~

古本 聡(翻訳業)

 

私の生き方 第82回

関口 真央(やどかりの里)

 

トピックス

 

いんふぉめーしょん
JDF全国フォーラム(12・6開催)障害者権利条約「総括所見」を受けた取り組みと課題

 

 

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