今回の協議員総会は、「障害者自立支援法案(以下、自立支援法案)」の国会審議の山場での開催ということになった。介護保険と障害保健福祉施策との統合案の提示に端を発した政策論議は、一年余にわたって、審議会(社会保障審議会障害者部会)厚生労働省と障害関連団体との間で繰りひろげられてきた。厚生労働省が国会に提出した自立支援法案は、形の上ではこれらの論議を集約したものとしている(同法案は2月10日に閣議決定され、即日第162回通常国会に提出された)。115箇条の本則と117箇条の付則から成る、大掛かりな法案である。
たしかに、改善点が見受けられる。精神障害施策の他障害施策との共通化や市町村の役割や責任の明確化、施設体系の見直しなどは、いずれもJDなどが主張してきたことであり、積極的な側面として評価できよう。しかし、問題点も少なくない。いわゆる応益負担制度(厚労省は途中から定率負担と呼称したが)の導入をはじめ、所得保障制度や障害定義が欠落したことは決定的な弱点と言わざるを得ない。とくに、応益負担制度の導入は、改善点のすべてを打ち消して余りあるものと言ってよかろう。
5月12日に、JD主催によって開催した「障害者自立支援法を考えるみんなのフォーラム」には、会場となった日比谷公会堂・野外音楽堂の定員をはるかに上回る6600人が集った。同法案に対する不安と不満がいかに大きいか、予想以上の参加者数からもこのことが伺える。と同時に、JDを含む障害関係団体に対する期待感の強さを感じさせるものがあった。国会での決着がどうなるかはなお不透明であるが、JDは引き続き関係団体と連携を強めながら、問題点の消去に向けて全力を尽くしていきたい。
なお、通常国会での決着の仕方の如何を問わず、同法案に関連しての「後遺症」が続くものと予想される(成立した場合には政令・省令の策定や予算確保などで、継続審議や廃案の場合は新たな局面づくりへ向けて)。JDは、中長期的な視点をも携えながら、関連した動きに応えられるよう、できる限りの備えをとっていきたい。
さて、今年度の国内課題でもう一つ重要なのは、障害関係団体の連携の強化である。具体的には、昨秋発足したばかりの日本障害フォーラム(JDF)の活動や事業について、これをいかに軌道に乗せていくかである。JDFがどんな形で力量や存在感を発揮していくのか、このことはわが国の障害分野の近未来に少なからず影響していくことになろう。とくに、財政危機下での障害者政策の拡充は、関係団体の連携抜きには考えられない。JDとしても、JDFの活動や事業に積極的に参画し、人的な面を中心に最大限の貢献を果たしていきたい。
他方、国際面に目を転じるならば、引き続き障害者権利条約をめぐる動きに注目する必要がある。採択そのものは確定的になりつつあるが、問題はその水準である。水準が高ければ高いほど、国内の障害関連法律に好影響が及ぶのである。また、「障害者差別禁止法」の制定準備に向かおうとしているわが国であり、この点からも条約水準が気になるところである。JDは、JDFと一体となりながら、またアジア太平洋域内を中心とする国際NGOとも連携を図りながら、国連・特別委員会の審議傍聴やロビー活動に関わっていきたい。
以上、障害分野をめぐる内外の動向の特徴を記してきたが、改めて問われるのがわがJDの主体的な力量ということになる。運動体としてより力を高めていくことに尽きるが、そのためにも、
①財政基盤の確立、②会員間の交流促進、団結力の増幅、③若いエネルギーの結集、これらを実質化していかなければならない。今年度は、これらをめぐる会員間での論議をこれまでに増して活発なものにしていきたい。
これらを踏まえながら、以下の事業計画について十分な検討をいただきたい。
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