障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

25年7月10日更新

障害者の投票等に関する要請書

〇JDでは7月7日に障害者の投票行動に関する要請を総務省に行いました

【PDF版はこちらから】


 

2025年7月7日

総務大臣 村上誠一郎 殿

認定NPO法人 日本障害者協議会
代表  藤井 克徳
TEL/03-5287-2346 FAX/03-5287-2347
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
Email/office@jdnet.gr.jp


 

障害者の投票等に関する要請書


 

 当会は、総務大臣への要請書(2022年5月31日)にあるように、障害者権利条約と差別解消法により、障害のある人びとの投票において「合理的配慮を欠くは差別」として、問題事例の改善を求めた。「すべての人に投票の壁をなくそう」「投票に行こう」など障害者団体の要請があり、マスコミの大きな報道もあった。
 こうしたなか、総務省・中央選挙管理委員会は、参議院選挙を前に「事務連絡」を通知し、各選管から寄せられた事例や意見を貴省ホームページ含め、都道府県・市町村選管に情報を提供したことは評価したい。しかしながら、地域格差は大きく、対応マニュアルの作成と活用などが求められた。そのため衆議院選挙を前に当会は二度目の要請を行った(2024年10月18日)。
 私どもは、この度の参議院選挙にあたって、1164万人(人口の約9.3%)を越える障害のある人びとや投票に困難を抱えるすべての人たちの選挙の改善、環境整備の徹底を引き続き求める。また、2024年の要請後の貴省・中央選挙管理委員会で改善にとりくまれた事項を明らかにしていただきたい。そして、以下の重点項目を強く要請する。

1.障害者権利条約・総括所見、障害者差別解消法等に基づき、障害者の投票における「合理的配慮」「不当な差別的取扱いの禁止」の徹底と対応マニアルの作成と周知の徹底

    (1)貴省・中央選挙管理委員会による2024年10月以降の改善のとりくみ、および昨年の総選挙における障害のある人の投票実態(投票数、投票率、点字投票数など含む)を明示すること。

    (2)各選挙管理委員会ごとの「対応要綱」の策定と具体的「対応計画」を持つよう指導すること。障害のある人の投票における「合理的配慮」「不当な差別的取扱いの禁止」に関わる研修・啓発や周知をはかること。

    (3)障害のある人の投票における「合理的配慮」「不当な差別的取扱いの禁止」に係る実態を調査すること。投票所の設置・人的配置等において各選挙管理委員会の対応に格差が生じており、「合理的配慮」のための積極的なとりくみを踏まえた、格差解消をすすめること。

    (4)令和5年1月に貴省選挙部管理課がまとめた『障害のある方に対する投票所での対応例について』の各自治体・選挙管理委員会の反応・対応の把握とさらなる周知徹底をおこなうこと。


2.障害者の投票等における早急で具体的な改善を求める課題
(1)投票に関するバリアフリー化

    1)投票所までの移動含めたアクセスの改善を行うこと。

    2)投票所内は期日前投票所を含め、すべての人の移動可能な場所に設置するとともに、段差の解消、車いす用トイレの設置などバリアフリー化を徹底すること。

    3)記載台が不安定で記載できないことから、広くて安定した、高さ調整も可能なものにすること。

    4)視覚障害のある人に対し、点字板、照明具の設置および候補者名簿の点字版・拡大文字版の用意を徹底すること。

    5)投票の仕方の説明など、投票所に研修を受けた案内・誘導などの人的配置をすること。

    6)盲ろう者に対し、係官との意思疎通を円滑にはかるため、投票所内に同行している通訳や介助者が入れるようにすること。

    7)2003年の公職選挙法改正において、「巡回投票」の必要性についても附帯決議された。いくつかの自治体では「巡回投票」のためのバス運行などが始まっている。巡回型の移動投票所などを広めること。


(2)投票方法の改善

    1)投票制度は、投票所に行って自筆で書くことが原則になっているが、自著による記入方法の改善をはかること。

    2)「代理投票」は「代筆役」と「見守る役」の2名を補助者として選挙管理委員会の職員に限定している。その際の不正防止とプライバシーへの配慮を徹底すること。

    3)郵便投票は、介護保険「要介護5」、障害者手帳の両下肢・体幹・移動機能障害の1級・2級、心臓などの内部障害1級または3級など対象が限定されている。希望するすべての障害のある人を対象にするとともに、その手続きの簡素化をはかること。


(3)情報のアクセシビリティ確保

    1)「義務制選挙公報」(衆参両院議員選挙・都道府県知事選挙)は、候補者を選択する上で、一日も早く発行・送付されるよう都道府県選挙管理委員会を指導すること。また、視覚障害がある人に対し、点字・音声・拡大文字やアクセシブルな電子版などの選挙情報を選挙公報として位置づけ、各選挙管理委員会の責任で発行するよう徹底すること。

    2)政党の任意に委ねられている手話通訳の配置を改め、すべての政見放送などに国の責任で手話通訳・字幕等を配置し、聴覚障害のある人に対する情報提供を徹底すること。

    3)知的障害や発達障害のある人に対し、フリガナやわかりやすい選挙公報の発行・送付とともに、投票所の記載台前に候補者の写真を提示するなど合理的配慮をするよう周知徹底すること。


(4)各省と連携した周知

    1)投票所への移動にあたって、いわゆる「政治的活動」としてガイドヘルパー等の福祉サービスが利用できないことがないよう周知、徹底すること。

    2)通訳介助含め選挙に関する費用は公費負担とすること。

    3)病院・高齢者施設・障害者施設など、入院・入所している人の投票については、「概ね50人以上」の指定基準を緩和し、希望する医療・福祉施設が「不在者投票施設」(指定病院等)に指定されるようにすること。


 

フッターメニュー