24年2月15日更新
○介護報酬の見直しで訪問介護の基本報酬が引き下げられたことを受け、JDは2024年2月1日、緊急共同声明を発表しました。
訪問介護基本報酬の引き下げに抗議する
緊急声明
2024年4月1日より適用される介護報酬単位が公表されました。それによると、訪問介護の基本報酬は身体介護、生活援助、通院乗降介助とも、すべて基本報酬が引き下げられています。
基本報酬は引き下げたものの、処遇改善加算のアップ率はすべての事業中最高なので、事業収入全体では影響がないかのように説明されていますが、試算すると最上位の処遇改善加算を取得してもマイナスになってしまいます。
事業所経営実態調査で訪問介護が収益率7.7パーセントという大幅な黒字となったことが引き下げの理由とのことですが、これは増加の一途であるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)等の併設事業所の収益率が高いからです。サービス提供効率が高く、調査の提出率も高いと考えられます。
一方、小規模な単独事業所は調査に応じる余裕さえありません。併設型訪問介護は、同一建物内に居住する利用者を回って介護するため施設介護に近く、地域の中を一軒ずつ訪ねてケアを提供する訪問介護とはかけ離れ、カテゴリー自体を分けるべきものです。
訪問介護はすでに15.3倍の有効求人倍率で、訪問介護員の高齢化も突出しています。地域の在宅介護を支えてきた小規模事業所は次々と撤退。ヘルパー不足でケアプランに必要な訪問介護を組むことができないという悲鳴が全国の現場から聞こえてきます。
人件費比率が72.2パーセントの訪問介護で基本報酬を引き下げれば、単独型小規模事業所の経営は悪化し、閉鎖倒産が相次ぐことでしょう。仮に処遇改善加算で職員賃金を上げることができたとしても、物価高騰の中で経常費などをまかなうことができないからです。
在宅介護の命綱である地域に根差した単独型の訪問介護が減っていけば、独り暮らしや老老世帯はたちまち「介護難民」になります。「家族介護」に頼らざるを得ず「介護離職」は激増します。「可能な限り最後まで住み慣れた地域で」を謳った国が進める地域包括ケアシステムはますます有名無実になるでしょう。
多くの人々が訪問介護の現状を危惧する中、この基本報酬引き下げは暴挙というほかありません。強く抗議し、撤回を求めます。
認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク 理事長 上野千鶴子
NPO法人高齢社会をよくする女性の会 理事長 樋口恵子
NPO法人日本障害者協議会 代表 藤井克徳
きょうされん 理事長 斎藤なを子
ケア社会をつくる会 世話人 小島美里 中澤まゆみ
2024年(令和6年)2月1日
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