23年6月20日更新
○特例子会社で働き続けるために求めた合理的配慮が認められず、退職せざるを得なくなった原告の請求は岐阜地裁で認められず、名古屋高裁に控訴中です。JDでは、この裁判を応援し、障害のある人への合理的配慮の遵守を求めて声明を発表しました。
2023年2月20日
声明 障害特性を理解し、合理的配慮義務の遵守を
-障害のある人に対する合理的配慮提供義務に関する岐阜地裁判決について-
認定NPO法人日本障害者協議会
代表 藤井 克徳
特例子会社に勤務していた高次脳機能障害のある労働者が、上司の交代を機に、自らの障害への理解と職場環境改善を求めた提案を拒絶され、やむを得ず退職せざるを得なくなったことによる精神的苦痛に対する賠償請求を求めた裁判で、2022年8月30日、岐阜地方裁判所は、原告の請求を棄却する判決を下しました。
障害者雇用促進法は、募集・採用時・採用後の障害を理由とした諸事情の改善のために必要な合理的配慮を示しており、合理的配慮の提供は国や自治体、事業者の義務としています。
障害者権利条約では、第8条(意識の向上)で「社会全体の意識の向上、並びに権利及び尊厳に対する尊重の育成」、第27条(労働及び雇用)で「政策及び措置(積極的差別是正措置、奨励措置を含む)を通じて、民間部門における雇用を促進すること」「職場での合理的配慮の提供を確保すること」としています。さらに、国連の障害者権利委員会による日本への総括所見では、第27条に関して(58パラグラフ)「個別支援と合理的配慮を尊重すること」「障害者、特に知的障害者、精神障害者及び障害のある女性の雇用を奨励・確保するための積極的格差是正措置及び奨励策の強化、実施のための効果的な監視機構の確立」を求めています。
原告は、採用面接時に自ら高次脳機能障害の理解を求め、入社時には、指示の方法や服装の自由、強迫性障害によるトイレ時間への配慮などを申入れ、会社は了承しています。
当協議会は、以下の三点を極めて重大な問題として指摘します。① 障害者雇用の促進及び安定を確実に達成することを認定要件とする特例子会社で起こった事件であること、② 採用時と採用後で上司が変わり、個人的価値観で障害ならびに合理的配慮の理解が異なっていること、③ 障害理解を深め、合理的配慮を浸透させるべき役割をもつ司法が、原告の症状を認めながらも判断を誤り、多様性を受入れていこうという社会目標に逆行した判決を下したこと、です。
原告弁護団は、この判決を不当判決として名古屋高裁に控訴しました。私たちは、この活動を支援するとともに、高裁での社会モデル/人権モデルに立脚した判決を求めます。
当協議会では、今後も、障害のある人の多様な働き方が実現するよう、労働現場での合理的配慮の拡充を含め、障害のある人の職場環境の整備推進に向けて取り組んでいきます。
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