障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

23年2月15日更新

声明 郵便投票は希望するすべての障害者を対象に

○障害等級で郵便投票が制限され、選挙権の行使が侵害されたことを訴えた岡山地裁での裁判で、その訴えが退けられました。多様な投票方法の実現と合理的配慮を求め、声明を発表しました。


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2023年2月14日

声明 郵便投票は希望するすべての障害者を対象に
-障害等級で郵便投票が制限された訴えを退けた岡山地裁判決-

 

認定NPO法人日本障害者協議会
代表 藤井克徳

 

 2020年の岡山県知事選で、郵便投票を希望しても利用できなかった岡山市の障害のある女性が、選挙権の行使を侵害されたと国を訴えた裁判で、1月25日、岡山地裁は原告の訴えを認めない判決を下しました。
 下肢障害で障害者手帳4級を所持する原告が、郵便投票を希望したところ、対象が障害等級1、2級に限られているとして認められませんでした。原告は、郵便投票が認められず選挙権の行使が侵害されたこと、憲法の諸規定や障害者権利条約に違反すること、郵便等投票制度の改善を怠っている国会の立法不作為を訴えました。
 判決は、通院などのタクシー利用や自転車移動歴から、原告が投票所まで行くことは著しく困難であったとは認められないとしています。自転車で交通事故を繰り返してきたことや、生活保護でタクシー代が厳しいことは考慮されていません。
 また、一般的に、「類型的に」肢体不自由1、2級の者は投票所に行くことが不可能又は著しく困難だが、「類型的に」4級の者はそうではない、としていますが明確な根拠は示されていません。
 現在の郵便投票の制度が1974年に始まってからすでに半世紀が経ち、エレベーター・エスカレーターもバリアフリーという言葉もなかった当時に比べて、今では都市部では車いす利用者にとってのアクセスは大きく改善しました。むしろ原告のような不安定な歩行をする人の移動の方が困難な場合もあります。
 昨年秋に公表された国連の障害者権利委員会からの総括所見(勧告)は、医学的な障害の判定(等級)と、その人が置かれている環境からもたらされる障害にはズレがあり、その点に留意して法制度を見直し、必要な支援を提供するよう求めています。不正防止対策も重要ですが、すべての有権者の投票のしやすさが優先されるべきです。選挙への参加は民主主義を支える土台です。判決は、そのための国会や政府の今後の努力を促し、原告の思いにこたえる必要がありました。 
 本協議会は2022年5月、「問題事例の改善を求める201の事例・要望集」を作成し、総務大臣に改善を要請しました。現行の郵便投票は、「介護保険要介護5、障害者手帳の両下肢・体幹・移動機能障害の1級・2級、心臓などの内部障害1級または3級など対象が限定されています。私たちは、希望するすべての障害者を対象にするとともに、その手続きの簡素化」を求めています。なお、郵便投票については、圧迫感や緊張感によって投票所に行くことが困難な精神障害のある人、要介護5ではないが外出が困難な高齢者、病気で自宅療養中や(不在者投票所の指定を受けていない)病院に入院中の人など、多くの人にニーズがあります。総務省は昨年末、各選挙管理委員会に投票しやすい環境をどう整えているかなど大規模な調査を実施しています。その結果を注視したいと思います。
 私たちは今後も、障害者権利条約と総括所見(勧告)を基に、多様な投票方法の実現と合理的配慮の拡充を含め、障害のある人の投票における環境整備が推進されるよう取り組みます。

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