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22年6月16日更新

詩「訣別」ふじいかつのり作

◎優生条項が廃止された1996年以降、被害者は、厚生省(後の厚生労働省)に尊厳の回復を迫りました。しかし、そこでの対応は、「当時は合法だった」「適法だった」の一点張りでした。この論法は、被害者の門前払いに用いられただけではなく、優生保護法問題の全面解決を図る上での障壁となりました。

 

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訣別

 

ひんやりとしたお役所に溶け込んでいる言葉がある

それは、「当時は合法だった」

どれくらいの人が、生き方をねじ曲げられたのだろう

どれくらいの人が、言い返せないままの人生を強いられたのだろう

 

合法ってなんだろう

お役所が門前払いをするときの、もう一人のガードマン

過去の悪事を覆うときの、魔法の黒幕

正面を向いて説明できないときの、マジックワード

 

合法を振りかざす人はそっくり

威張っている人

なにかを隠そうとしている人

上の人に言われたとおりにしか振舞えない人

 

独裁者がよく言っていた

「どこがおかしい やっていることはすべて合法だ」

「今の私は、合法に選ばれている」と

あのヒトラーだって

 

優生手術もそうだった

わけのわからないうちに、メスを入れられていた

身体を押さえつけられ、麻酔を打たれ、だまされもした

命のバトンを壊しておいて、「当時は合法だった」

 

ハンセン病の隔離政策も

水俣湾での水銀のたれ流しも

原爆症の認定の狭さも

やはり、「当時は合法だった」

 

いい加減に訣別しなければ

個人の上に居座る合法などもうたくさん

いい加減に訣別しなければ

それは、“そのままでいい”が尊重される社会の入り口 

 

ふじいかつのり (NPO法人日本障害者協議会)

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