障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

21年11月22日更新

新型コロナウイルス感染対策に関する要望書

○JDは2021年10月14日、「新型コロナウイルス感染対策に関する要望書」を厚生労働大臣宛に提出し、回答を求めました。
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○厚生労働省各部署からの回答(10月29日現在)を加えました。
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2021(令和3)年10月14日
厚生労働大臣 後藤 茂之 様

特定非営利活動法人 日本障害者協議会(JD)
代 表  藤 井  克 徳



新型コロナウイルス感染対策に関する要望書



 岸田新政権が誕生し、所信表明演説で「コロナとの共生を前提とした新しい社会を創り上げる時だ」と述べられました。新たな創造は極めて重要です。そのためにもこの間の検証・総括が重要ではないでしょうか。

 感染が抑えられているこの時期だからこそ、新型コロナの感染拡大の中で、障害のある人たちがどのような状況にあり、どのような困難を抱えていたのか、国の責任で明らかにする必要があると考えます。

 つきましては、以下の4点に関してのご回答をお願いいたします。すぐに結論の出ない問題もあると思いますので、その場合は、市民社会の意見を聴き、共に対策を考える懇談の機会を求めます。

1.精神科病院でのクラスターについて
1)実態の把握について
 精神科病院におけるクラスターの発生状況(死亡者数などを含め)、閉鎖的な状況の中でどのような処遇が行われていたのか、なぜ感染症専門病院への転院が進まなかったのか、国の責任で調査し、その実態を明らかにしてください。
(回答)10.29
1 厚生労働省では、同一の場所で2名以上の感染者が出たと報道された事案の件数を集計しており、このう ち医療機関における件数は10月25日時点で1451件となっている。診療科ごとの件数については、報道 等では施設類型が明確でないものが多いため、集計することは困難である。
2 精神保健福祉法に基づく入院に当たっては、精神障害者の医療及び保護を目的として、患者の人権に配 慮し、対象者や手続き等について厳格な規定を設けており、その上で、入院患者の処遇が適切に行われる よう、各都道府県等が精神科医療機関に対する実地指導を行うこととしている。
3 新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備に当たっては、本年3月に厚労省コロナ本部が発出した 事務連絡「今後の感染拡大に備えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について」において、 各都道府県で策定する病床確保計画で 、精神疾患の患者等の特別な配慮が必要なコロナ患者の受入れ体 制整備を考慮した病床数とするようお願いしているところ。
4 その上で、精神科医療機関において、精神疾患を有する入院患者が感染した場合の対応については、精 神疾患及び新型コロナウイルス感染症それぞれの重要度等も考慮した上で、転院が必要となる場合の転院 先となる連携医療機関の確保・調整を予め行っておくよう各都道府県に対し促している。

【社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課】
【健康局結核感染症課】
【医政局地域医療計画課】

2)今後の対策について
 実態把握と並行して、今後また、感染拡大が起こった際に、閉鎖的処遇が一般的になっている精神科病院においてクラスターを発生させないための対策について明らかにしてください。

3)精神科病院の抜本的改革について
 精神科病院で頻発したクラスターは、閉鎖的な環境、一般病院より少ない職員配置などが背景にあると考えられ、正に精神科病院の抱える構造的な問題です。遅れている日本の精神科病院の改革を早急に抜本的に実施する必要があります。精神科病院の改革を、どのような進め方で、いつまでに実行するのかを明示して下さい。

2.新型コロナ感染の治療体制と予防について
1)これまでの総括と今後の対策
 2020年~2021年にかけて、国や自治体の障害のある人への新型コロナ感染対策で何が不足していたと考えられているのか、これから重点的に取り組むことは何か、現在の方針・計画を教えてください。

(回答)10.29
1 障害福祉サービス等は、障害者やその家族の生活を継続する上で欠かせないものであり、十分な感染防 止対策を前提として、障害者に対して必要な各種サービスを継続的に提供できるようにすることが重要であ ると考えております。
2 障害福祉サービス事業所等における感染防止対策 については、普段からの手指消毒等の基本的な感染 防止対策が重要であるとともに、感染者発生に備え、感染防護具の着用等、事前にシミュレーションを実施 することが重要であることから、感染予防・拡大防止対策に関するマニュアルや感染症発生時の業務継続ガ イドラインを作成し、周知等行っているところです。
3 引き続き、障害福祉サービス事業所等において、適切に感染防止対策が行われ、障害者に必要な支援が なされるよう、対応してまいりたいと考えております 。

【障害保健福祉部障害福祉課】

2)PCR検査の継続及び拡大について
本年は、障害福祉事業所の職員、新規利用者へのPCR検査が実施されるようになりました。感染の有無を定期的に検査できる仕組みとして重要な施策ですが、その対象に障害のある人は含まれていません。 PCR検査の継続と対象拡大について、どのように検討されているのか、拡大の時期なども明らかにしてください。
(回答)10.26
○ 障害者施設については、集団感染が生じた場合に入所者や施設運営への影響が大きいことから、高齢者 施設と同様に、地域の感染状況に応じ、集中的な定期検査の対象としてきたところです。
○ なお、集中的な定期検査の対象者については、高齢者施設等におけるクラスターは、感染した職員から生 じる傾向が多いとの指摘があることを踏まえ、主に施設の従事者を対象としています。
○ 検査の必要な方が迅速・スムーズに検査を受けられるようにするとともに、感染拡大を防止する必要があ る場合に広く検査を受けられるよう、体制を整備していきます。

【厚生労働省コロナ対策推進本部 検査班】

3)感染しても安心して治療・療養できる仕組みの構築について
在宅で治療を受けられずに亡くなる方のことが報道されていました。医療がひっ迫すると治療の優先順位がつけられ、障害のある人や高齢の人は必要な感染症治療が受けられない実態があります。保健所の体制整備、感染症病棟の整備等、いつまでに実施する予定になっているのか、具体的に明示してください。

3.感染者の後遺症(神経免疫系疾患の発症)への喫緊の取り組みについて
米国等では、新型コロナ感染後に、筋痛性脳脊髄炎など神経免疫系の疾患の発症に関する調査研究が進んでいます。一方、日本では何の対応も行われていません。患者団体による調査では、感染後の深刻な状況が報告されています。感染者の神経免疫系の後遺症の調査、並びに治療についての調査研究についてどのように考えているのか、調査の時期や内容等、詳細を明らかにしてください。
(回答)10.26 別添PPTスライド3枚
 新型コロナウイルス感染症の遷延症状(いわゆる後遺症)については、未だ不明な点も多く、先ずは実態を把握するために、厚生労働省厚生科学研究にて調査を実施しています。
 調査の中間結果については、第39回厚生労働省アドバイザリーボードで報告(別添資料に調査の時期、内容、詳細が記載されています)、及び"診療の手引き"や厚労省HPのQAにて公表しています。これらの調査は今年度末に最終結果がまとめられる予定です。
 また、医療従事者向けに、神経症状を含む遷延症状を呈する方に対する科学的知見に基づく診療の考え方について、改めて今後公表する予定としております。

                                    【厚生労働省健康局結核感染症課
新型コロナウイルス感染症対策推進本部 戦略班】

4.障害福祉事業所の報酬支払い方式の見直し
新型コロナの感染拡大の中で明らかになったのは、報酬の日額払いの仕組みによって障害福祉事業所の運営が不安定に陥る現状です。ワクチン接種の副反応のため1週間も休まざるを得ないような状況もあります。不安定な運営の下、感染防止のため、障害のある人を守るため、事業所は様々な自助努力をしており、職員の負担は重くなる一方です。この状況を打開するには、日額払いの仕組みの見直しが必要です。現在急ピッチで進められている障害者総合支援法の見直しの中にこの問題を含めるべきだと思います。時限的には通常報酬を保障するなどの対策が必要です。障害福祉事業所への保障など、今後の取り組みについて教えてください。
(回答)10.29
1 障害福祉サービスは、利用者が日ごとに複数のサービスを組み合わせて利用することができるよう、日々 の利用実績に応じた日額払い方式により報酬が支払われる仕組みとしており、これは、医療保険制度や介 護保険制度も同様となっています。
2 一方で、急な欠席や入院等による影響については、「欠席時対応加算」や「入院・外泊時加算」などによっ て一定の対応を図っています。
3 利用者がニーズに合ったサービスを選択できるようにするため 、基本的にはこの日額払い方式を維持して いくべきと考えております。
4 また、新型コロナウイルス感染症への対応として、全ての障害福祉サービスについて、
    ・一時的に人員や 運営の基準を満たすことのできない場合にも報酬を減額しない取扱いや
    ・居宅への訪問等により相談支援 を行うなど、できる限りの支援を実施したと市町村が判断する場合    には、通常と同額の報酬を請求できる取扱い
  を可能としています。
5 障害福祉事業者が事業を継続することは、障害者が安心して生活していくために必要不可欠であり、今後 とも適切な支援を進めてまいります 。

【障害保健福祉部障害福祉課】

                     

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