21年10月16日更新
○JDは2021年10月4日、成年後見制度利用促進に関する国の次期基本計画の策定に向けてのヒアリングに他団体とともに参加し、意見を提出しました。ヒアリング後、担当の厚労省社会・援護局 地域福祉課 成年後見制度利用促進室より、追加・修正等があれば提出をとの連絡があり、補充意見を提出しました。意見の概要は専門家会議に提出されるとのことです。
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2021(令和3)年10月4日
【成年後見制度利用促進に関する国の次期基本計画の策定に向けてのヒアリングで提出】
成年後見制度利用促進専門家会議 御中
特定非営利活動法人 日本障害者協議会(JD)
代 表 藤 井 克 徳
成年後見制度に対する意見書
高齢者・障害者の財産等を保護する観点においては、詐欺等の犯罪が社会的関心を集める中で、成年後見制度が権利擁護的な役割を果たしていることは認めたいと思います。しかし、成年後見を一度受けてしまうと、会社の役員等になれないなど、多くの欠格条項がありました。これらについては一括削除されたものの、「心身の故障」などとして、返って制約が広まったとの指摘もあります。市民としての権利の保障と、財産の保護という問題を両立させ調和を図りながら解決していくことが求められます。
日本は障害者権利条約を批准していますが、私たち(JD)が参加している日本障害フォーラム(JDF)は、この条約の理念を国内政策に活かす取り組みを行なっています。本年3月JDFは、「日本の総括所見用パラレルレポート」をまとめ、国連の障害者権利委員会に提出しています。その中で「成年後見制度と訴訟無能力条項の廃止」を提起し、「障害者の法の前の平等を制限する法律が存在することを懸念する」旨を明らかにし、民法および民事訴訟法の改正を強く訴えています。さらに代理意思決定支援ではなく、支援付き意思決定への転換、「障害者の意思および選好を基礎においた法的能力の行使に当たって必要とする支援を障害者に提供する制度」を求めています。まさに日本の成年後見制度は、国際的な観点からは転換期を迎えているといえます。
障害者等の権利擁護を考えていく際、財産の保護ももちろん重要ですが、虐待や差別からの"保護"という視点も必要で、これらを包括的な形の一つの制度として作り上げていくことも課題として挙げられると思います。ただ、このような考え方をすぐに実現できるかと言えば、ある程度の時間が必要だと考えます。2017年3月に閣議決定された「成年後見制度利用促進基本計画」により、意思決定支援や身上保護の重視、権利擁護支援の地域ネットワークの構築などが具体化しつつあります。しかし、次期計画の策定にあたっては、以下について更なる検討を重ねていただきたいと考えます。
記
1.財産の保護のみならず、障害者等の諸権利を保障する包括的な権利擁護制度の構築をすること。
2.現行の制度における"代理意思決定"の要素を極力抑制し、「支援付き意思決定」の要素を可能な限り高めていくこと。
3.家庭裁判所の成年後見決定にあたっては、総合的に状況を考慮していき、市民としての権利をはく奪しかねないものと認識し、可能な限り慎重に行うこと。また関係者も同様の認識を持って当事者を支援すること。
成年後見制度に対する補充意見
有意義だったヒアリング
10月4日(月)、成年後見制度に対する意見交換会(ヒアリング)を開催してくださり誠にありがとうございました。
当会(JD)は、
1.財産の保護のみならず、障害者等の諸権利を保障する包括的な権利擁護制度の構築をすること。
2.現行の制度における"代理意思決定"の要素を極力抑制し、「支援付き意思決定」の要素を可能な限り高めていくこと。
3.家庭裁判所の成年後見決定にあたっては、総合的に状況を考慮していき、市民としての権利をはく奪しかねないものと認識し、可能な限り慎重に行うこと。また関係者も同様の認識を持って当事者を支援すること。
を意見書で提出いたしました。ヒアリングでは様々な観点からの意見が出され、私たちにとっても勉強の機会となり、とても有意義な時間でした。 以下は、補充意見です。
成年後見制度は必要なのか、検証を
成年後見制度は障害者や高齢者の権利を守る目的でつくられた制度であるにもかかわらず、時が経つにつれ、逆に障害者の人権を制約してしまっていることがしばしばあります。現在は欠格条項が改正されていますが、先日、成年後見制度を受けていたがために、退職を余儀なくされた障害のある男性の問題に対して岐阜地裁は、成年後見制度にある欠格条項は憲法違反との判断を下しました(10月1日)。現在でも「心身の故障」のある人に対しての欠格条項が存在しています。
成年後見制度自体、医学モデルの考え方に基づいてつくられたものであり、「社会モデル」や「人権モデル」を基調にした障害者権利条約の考え方とは相容れないことに着目する必要があります。
権利能力とともに行為能力が認められてこそ、法的能力が尊重されていると言えます。「法の下の平等」を考える時、だれにも意思があり、その決定能力は備わっていると考える必要があります。詐欺や犯罪から財産を守るとする成年後見制度ですが、「後見」を受けることによって烙印を押され、社会参加や将来の可能性を閉ざしてしまう実態もあります。現状は、成年後見制度の利用率は圧倒的に低い状況です。後見を受ける障害者・高齢者は、費用負担をしています。成年後見人による不正事件も少なくなく、何のために後見を受けたのかわかりません。本当にこの制度が必要とされているのか、しっかりした検討が迫られています。
権利擁護を包括的にし、他施策との連携も視野に
法律自体を改正し、包括的な権利擁護制度による支援付き意思決定による権利擁護への転換が必要です。
法律改正がなされるまでの間は、成年後見に安易に依存するのではなく、既存の社会福祉法制を駆使していくことが重要であると考えます。社会福祉力を十二分に展開させ、福祉サービス、福祉事業の中で、障害当事者同士(ピア)のつながりを重きに置いたソーシャルワーク機能を十分に発揮させていくことが求められます。財産の保護は大切ですが、それ以上に「どういう生活をしたいのか」を基底に、本人の意思に基づいた生活を実現させていく取り組みが求められています。
その時は、障害者差別解消法や、障害者虐待防止法等、関連法と緊密性をもたせながら行なっていくことは重要な視点となると考えます。
何卒、「社会モデル」「人権モデル」に基づいた"意思決定支援"の仕組みがつくられ、実践がなされますようご尽力をよろしくお願い申し上げます。
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