障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

15年12月18日更新

障害者総合支援法施行3年後の見直しにあたっての介護保険優先原則に関する要望

○JDは、12月2日、「障害者総合支援法施行3年後の見直しにあたっての 介護保険優先原則に関する要望」を厚生労働大臣、社会保障審議会障害者部会委員へ送付しました。
  【PDF版はこちら】


厚生労働大臣 塩崎 恭久 様
社会保障審議会 障害者部会委員各位

                  障害者総合支援法施行3年後の見直しにあたっての
                       介護保険優先原則に関する要望
      

                   2015年12月2日
特定非営利活動法人 日本障害者協議会(JD)
                代表 藤井 克徳
                   (公印略)





 日頃より日本障害者協議会の活動にご理解とご協力をいただき、誠にありがとうございます。
 現在、障害者総合支援法の3 年を目途とした見直しにおける高齢障害者の問題の一つとして、介護保険優先原則は選択肢の幅を広めるものとして維持すべきという方向で議論が進められてい ます。確かに、2007 年初出の「障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」では、障害福祉サービスの種類や利用者の状況に応じて介護保険サービスを一律に優先させことはないと明記され、2015 年2 月18 日の事務連絡においてもその旨は確認されています。しかし、市町村ではサービス名称が同じ、または、類似しているという理由で、介護保険の対象となると強制的に移行が求められ、同制度に申請しなければ障害福祉サービスを打ち切るという運用をしている自治体もあります。これは憲法25 条の生存権規定、および障害者権利条約の基本的人権の保障に抵触する問題です。また、介護保険制度への移行に伴う応益負担の発生は、国(厚生労働省)との「基本合意文書」に、同制度への移行の強制は「骨格提言」で提案された支援の継続性の考え方、および障害者権利条約前文(n)、第3条(a)に反しています。
 障害者総合支援法の3 年を目途とした見直しに際しては、財源論を前提とすべきではありません。あるべき姿を示し、その実現に必要な財源を、きちんと確保すべきです。また、障害者権利条約の批准国にふさわしい政策の推進と法治国家として障害者自立支援法違憲訴訟団との和解文書である「基本合意」を実現させなければなりません。「基本合意を交わしたにもかかわらず、65歳になった日から介護保険となり、利用料の負担と介護保険の型にはまったサービスを強いられ、厳しい毎日を強いられている」という仲間たちの切実な訴えを耳にします。こうした観点から、日本障害者協議会は3 年を目途とした同法に係る高齢障害者問題(介護保険優先原則)の見直しに関して、下記の5 項目の要望をします。

        ******************************** 記 ********************************

① 「基本合意文書」には「一 国(厚生労働省)は、速やかに応益負担(定率負担)制度を廃止 …障害福祉施策の充実は、憲法等に基づく障害者の基本的人権の行使を支援するものである ことを基本とする。」、「二 2 …応益負担(定率負担)の導入等を行ったことにより、障害者、 家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深 く傷つけたことに対し…反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たる」と明記されてい ます。この約束と反省を遵守し、応益負担(定率負担)を徹底した介護保険等の社会保険制度への統合を前提とする議論、および、介護保険を基準に市町村民税非課税世帯に利用料負 担を求めるような障害者総合支援法の見直しは行わないでください。

② 障害者総合支援法第7 条および同施行令第2 条における介護保険法関連の優先規定は、「基本 合意文書」に反して障害者に「応益負担」を再び課す規定であるため撤廃してください。な お、撤廃されるまでの経過措置として、障害者が65 歳で、または40 歳以上65 歳未満で特定 疾病により介護保険の対象となった時、本人の意向を尊重して障害福祉と介護保険サービス をサービス単位で選ぶことができる選択制を導入してください。

③ 仮に介護保険への移行を選択した場合でも、それまで使えていたサービスの必要量が減少す ることはあり得ません。こうした問題が市町村で生じないように、障害福祉の上乗せ・横出 しを用いながら、必要なサービスを給付するよう市町村の障害福祉課および介護保険課に周 知徹底してください。なお、その主旨を障害者総合支援法施行令に明記してください。

④ 2015 年3 月31 日における「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」の一部改定による、規制緩 和がされたサービスやボランティア主体のサービスを含む地域支援事業(第一号事業)の優 先規定は撤廃してください。

⑤ 障害者が介護保険の対象になった時、障害固有のサービスとされる重度訪問介護や行動援護 等の国庫負担基準は切り下げられます。介護保険に移行させるための財政誘導は撤廃してく ださい。

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