障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

14年11月20日更新

障害者差別解消法の基本方針案への意見

JDは、11月20日、障害者差別解消法の基本方針案への意見を内閣府特命担当大臣宛に提出しました。


 【PDF版はこちら】

                                                      2014年11月20日



内閣府特命担当大臣
 有 村  治 子 様


               障害者差別解消法の基本方針案への意見

                                    特定非営利活動法人 日本障害者協議会
                                                  代表 藤 井  克 徳



 本協議会は、障害者権利条約(以下、権利条約)や障害者基本法がめざす共生社会の実現に向け
て運動をすすめています。
 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)の基本方針案につい
ては、11月10日の第18回障害者政策委員会での議論を最終とし、パブリックコメントを経て閣議決定
されると伺っています。
 この障害者差別解消法の基本方針案は、本年日本が批准した権利条約に基づくべきものであり、
「『障害を理由とする差別の禁止に関する法制』についての差別禁止部会の意見」も大切な基準です。
そうした基準に照らして、11月10日の基本方針案(障害者政策委員会資料)について、つぎのような
改善を求めます。

1.Ⅱ-2「不当な差別的取扱い」について 
 障害者の家族は、教育現場や職場など社会生活のいろいろな場面で、さまざまな差別、排除、不利益
な取扱いを受けている現状があります。権利条約第2条で「あらゆる形態の差別」を差別として規定して
いることを踏まえ、「不当な差別的取扱い」の対象に家族も含めるべきです。
 また、障害があるからという理由の他に、「車いすに乗っているから」「精神科病院に通院しているから」
「手話通訳を必要としているから」等、障害に付随したことから発生する差別も「不当な差別的取扱い」に
位置づけるべきです。

2.Ⅱ-3「合理的配慮」について 
 (1)の1つ目の●に「いわゆる『社会モデル』の考え方を踏まえ」とありますが、社会モデルは「合理的
配慮」の基礎であるだけでなく、「不当な差別的取扱い」の基礎でもあります。障害者差別解消法の全体
に通じる考え方ですので、表現を改め、位置を再考すべきです。
 (1)の3つ目の●にある「必要かつ合理的な手段及び方法により、かつ、実施に伴う負担が過重となら
ない範囲で行われるものであり」は削除し、「合理的配慮」は、権利条約の表現を用いるべきです。そして、
合理的配慮の不提供は不当な差別的取扱いであることを明記すべきです。

3.Ⅴ-2「相談及び紛争の防止等のための体制の整備」について 
 相談窓口の機能の発揮如何で、障害者差別解消法の真価が問われます。相談窓口には、法律の専門
家や、障害当事者など、専門性と対応力を持ち合わせた人材を充て、どの自治体でも同等の支援が提供
され、各地域で信頼される仕組みづくりのための具体的な方策を明らかにすべきです。
 障害者差別解消法では新たな機関の設置を行わないこととしていますが、本来であれば、障害者政策
委員会 差別禁止部会での意見の通り、裁判外紛争解決の仕組みが必要であると考えます。当面は既存
の相談機関で対応されるのであれば、実際に差別の禁止あるいは紛争解決の役割を果たし得る最善の
状況で利用しやすいものとし、その実績と検証を踏まえて、3年後の見直しで裁判外紛争解決の仕組みを
整備することを明記すべきです。

4.Ⅴ-3「啓発活動」について 
 権利条約第8条では、締約国は意識の向上と合わせて、「あらゆる活動分野における障害者に関する
定型化された観念、偏見及び有害な慣行と戦うこと」と明記されています。国や自治体は、地域社会に
ある偏見や有害な慣行の実態を把握し、それを正していくという積極的な対応をすべきです。マスコミ
報道(インターネットも含む)などの誤った、あるいは偏見を助長する表現などに対し、すべての報道機関
が権利条約の目的に合致した表現を用いることを指針とすべきです。

5.Ⅴ-4「障害者差別解消支援地域協議会」について
 障害当事者の参画を含めて、各地で数多くのモデル事業を実施すべきです。 また、裁判外紛争解決の
仕組みへの発展をも視野に入れるべきです。

6.差別を真に解消する「対応要領」「対応指針」を
 障害者が不当な差別的取扱いを受けるのは、国家機関に限らず、地方公共団体を含む行政との関係
や、さまざまな事業者との関係の中にあります。とりわけ地方公共団体における「対応要領」の努力義務
の徹底をすべきです。また、事業者における「対応指針」の法的義務の徹底、及び「合理的配慮の提供」
の努力義務を徹底して、紛争解決に向けた実効性のある「対応要領」「対応指針」とすべきです。

7.万全の内容での法実施と3年後の見直しの具体化を
 障害者差別解消法附則第七条で、法の施行後3年後の見直しを規定しています。以上6項目の改善
点を含めた万全の体制をもっての平成28年の法施行は言うまでもありませんが、社会情勢に合わせる
など改良のための見直しに関しての具体化が必要で、その主体者を明確にすべきです。


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