10年11月11日更新
2010年11月10日
自由民主党政務調査会
障害者特別委員長 衛藤 晟一 様
日本障害者協議会
代表 勝又 和夫
障害者自立支援法の一部改正に関する意見書
平素より障害者の権利の拡充ならびに社会福祉政策の充実へのご尽力に対し、心より敬意を表します。
この度は、障害者自立支援法(以下、自立支援法)の一部改正に関連してヒアリングを開催していただいたことに御礼申し上げます。62団体で構成する日本障害者協議会(略称JD、構成団体は資料1を参照)は、結成から30年間にわたって、一貫して障害者が地域で生きる権利の実質化とそのための施策の在り方を提言してきました。本日も、こうした観点から意見を述べたいと思います。
なお、意見表明の前提として、また貴党における自立支援法をめぐる課題の検討にあたり、1.障害者権利条約、2.自立支援法訴訟に伴う基本合意文書(資料2参照)、3.「障がい者総合福祉法(仮称)の制定以前に早急に対応を要する課題の整理(当面の課題)」(資料3参照)を尊重していただくことを改めてお願い申し上げます。
1.JDの基本的な立場
先の通常国会で提出された、「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」(以下「つなぎ法」と略す)に関するJDの基本的な立場は、このような形での改正を行うべきではないというものです。
早急にとるべき道は、障がい者制度改革推進会議が提示した「障がい者総合福祉法(仮称)の制定以前に早急に対応を要する課題の整理(当面の課題)」(以下「当面の課題」と略す)について、予算措置にて(政省令等の改正含む)具体化すべきことと考えます。
障がい者制度改革推進会議総合福祉部会は、自立支援法に代わる新法を策定するための検討を行っておりますが、その策定がなされるまで放置することができない早急に対応すべき「当面の課題」(障がい者制度改革推進会議議長宛、平成22年6月7日付)をまとめました。
この「当面の課題」は、障がい者制度改革推進会議が第1次意見を6月29日に総理に手交した際に、障がい者制度改革推進会議として「菅直人内閣総理大臣」宛に一緒に提出しています。当面の改善策にあたっては、この「当面の課題」に示された重点事項を尊重し、実施すべきと考えます。
「当面の課題」でまとめられている4つの重点課題は、総合福祉部会の合意事項ですが、その他の点については、検討中の課題も含まれています。今回の法改正が未だ検討中の論点を先取りして改正するとすれば、「当事者のことは当事者抜きに決めるな」という趣旨で設置された総合福祉部会の意義を損なうこととなることを危惧します。
2.「重点課題」等の実現にあたっての考え方
以上、JDの基本的な立場を述べてきました。ただし、自立支援法の部分的な改正を全面的に否定するものではありません。法の改正が考えられるのは、前述した「当面の課題」の具体化にあたり、法的な根拠が無ければ財務当局との折衝が著しく困難となるとの判断が成された場合に限るべきです。その場合であっても、厳格に下記の要件の範囲での改正とすべきです。
1.「つなぎ法」は時限立法とすること
現在検討中の総合福祉法(仮称)は、2013(平成25)年8月までに施行することになっています。新法の施行と同時に、自立支援法そのものが廃止されます。とすれば今回の「つなぎ法」は、早急に対応すべき課題に対処した「つなぎ」の役割と認識しています。
今回の改正で自立支援法の問題点がすべて解決していないことを明確にするためにも、新法が施行されるまでの時限立法とすべきと考えます。
2.「改正」の内容を限定すること
部分的な改正にあたっては、その内容は限定的とすべきです。くり返しになりますが、総合福祉部会での柔軟で幅広い論議に制約を与えるものであってはならず、あくまでも「当面の課題」である重点課題の範囲で対処すべきと考えます。
その点で、たとえば先の国会で提出された「つなぎ法」にある「相談支援の充実」などは、推進会議や総合福祉部会で合意した重点課題には含まれておらず、その内容の当否は別にして、前述の理由から、今改正からは除外すべきです(障害児分野も同様です)。
一方で、移動支援の個別給付化は早急に対応すべき課題と考えますが、「つなぎ法」の法律案・骨子では、「重度の視覚障害者」に限定されています。「当面の課題」にあるように「視覚障害以外も含む移動支援の個別給付化や重度訪問介護の知的・精神障害者、障害児」も対象とすべきです。
3.自立支援法の経過措置の延長
現行の自立支援法にあっては、利用者負担に関係する緊急措置(障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた緊急措置)や新規事業体系への移行、事業者の経営基盤の強化などについて、その実施期限を2012(平成24)年3月末までと定めています。いわゆる経過措置と言われるものです。
新法の施行は遅くとも2013(平成25)年8月とされている状況下にあって、経過措置が切れた諸制度の更なる変更が想定されます。新法の施行時期からみて、その直前での制度切り替えはどうみても不合理であり、無用な混乱も予想されます。新しい法制度が施行されるまで経過措置を延長すべきです。
以上
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