障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

09年1月9日更新

「産科医療補償制度」施行にあたっての声明

「産科医療補償制度」施行にあたっての声明


2009年1月8日
日本障害者協議会
代表 勝又 和夫


 私たち日本障害者協議会(JD)は、昨年11月25日「『産科医療補償制度』の再検討を求める意見書」を政府に提出し、制度の施行を延期することを求めました。しかし残念ながら、この1月1日、予定通り制度がスタートしてしまいました。

 本協議会は、このことに対して、強い憤りと懸念を表明致します。

 この制度は、分娩が原因で発症した脳性まひ児に対しては、総額3000万円の補償が支給されます。まずこの制度の成立過程について、全体の予算に組み込ませる手法をとり、立法府での実質的な審議もなされないままに進められたことに強く疑問を抱きます。このような経過からは、この制度が産科医療機関や分娩機関の被訴訟リスクを回避するためのものではないか、と捉えることができます。

 そして何よりも、脳性マヒの障害をもつ当事者の中には、「脳性マヒが生まれてはいけないのか」という見方でこの制度を見ている人も決して少なくないということです。もっとオープンに論議されて然るべき課題だと私たちは認識しています。

 「障害」への支援のあり方は、原因によるのではなくニーズに応じて提供されるべきだというのが、本協議会の一貫した主張です。

 また、公的医療保険から支出される一時金を、民間の損害保険会社が運用することや、日本医療機能評価機構が制度を運営することにも疑問が生じます。

 産科医不足などの厳しい現実を少しでも改善していく必要性はありますが、この問題の本質は、構造改革の名のもとで、医療費抑制政策がとられ、医師全体の数の伸びを抑えていたからに他なりません。今こそ医療・福祉の予算を大幅に増やし、人の生命や健康が守られるように、国の政策を大転換させることこそ、急がなければなりません。

 「障害観」への誤解を招きかねず、国の責任も棚上げするかに見えるこの制度を、きちんとした議論を経ずして施行した政府の姿勢に大きな憤りを禁じ得ません。

 本協議会は、引き続きこの「産科医療補償制度」の再検討と、抜本的な見直しを強く求める次第です。

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