24年5月23日更新
VOL.44-2 通巻NO.527
JD理事 藤木 和子
タイトルの質問は、小学生から大人まで多くの「きょうだい」から質問されてきました。質問の答えは、法律的にはNOですが、私自身も障害のある弟がいて、「将来はよろしくね」「お姉ちゃんがいて安心ね」という親や周囲の期待やプレッシャーに、実家を出るかどうか、障害に関係ある仕事をするか、結婚などで悩んできた経緯があります。だからこそ、新刊『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと50の疑問・不安に弁護士できょうだいの私が答えます』(中央法規)は、「法律ではこう考えます」「あなたの自由です」とできるだけシンプルに整理した本にしたいと考えました。
また、「ユーモアを忘れず、子どもたちにも読んでほしい」と全部の質問に一コマ漫画的なイラストをWOODYさんに描いてもらいました。 左下の絵は民法の扶養義務の説明で、一つのパンの例えを使って、親の未成年の子への義務は強い義務なので子どもたちに分ける必要があるのに対し、きょうだいの場合は弱い義務なので自分で全部食べてOK!というイラストです。「きょうだいは余裕がある範囲で助けるのでよい(事実上は選択)。意向や状況によって、関わり方は毎日、週1回、月1回、年1回、関わらないなど選べる」「まずは自分の生活と人生を優先する」、が法律の考え方だと説明しています。
障害のある兄弟姉妹には、福祉サービス、障害年金や生活保護などの制度があり、生存権の保障は国の責任です。
障害のある人、きょうだい、親それぞれが幸福追求権を持っていますが、幸せが一致する場合だけでなく、対立したり調整が必要な場合もあります。それぞれが自立した一人の人間として尊重され、悩まずにすむ世の中を実現できるように、微力ながら一つひとつ前向きに進んでいきたいと思います。
■視点 優生政策の火種は今も
JD代表 藤井 克徳
「毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたり、あるいは物を作ったりとは違って基本的に皆様方は頭脳、知性の高い人たちです」、すっかり有名になった川勝静岡県知事の発言だ。4月1日の新入県庁職員向けの訓示で飛び出したという。報道各社は、一斉に職業差別と断じた。一事が万事と言うが、障害関連政策を含む県行政全体が心配になる。同時に、またぞろと溜息が漏れる。行政責任者による特定の人びとをさげすんだり差別する発言は後を絶たない。
主なものをあげてみよう。障害のある人に対して、「ああいう人ってのは人格があるのかね」(石原慎太郎東京都知事 1999年9月)、「弱い遺伝子、悪い遺伝子が出た方」(神田真秋愛知県知事 2007年4月)、「高度医療のおかげで以前は自然に淘汰(とうた)された機能障害を持ったのを生き残らせている」(竹原信一鹿児島県阿久根市長 2009年11月)、「妊娠初期にもっと(障害の有無が)わかるようにできないのか。(教職員も)すごい人数が従事しており、大変な予算だろうと思う」(長谷川智恵子茨城県教育委員 2015年11月)などである。
言い回しもシチュエーションも異なり、十把ひとからげで論じるのはよくない。他方で、そこに共通する問題が浮かび上がるのも間違いない。共通するのは、言われた側の心に深い傷跡を残すことであり、性懲りもなくくり返されていることである。少し深掘りすると、他にも通底する問題が見えてくる。一番の問題点と言っていいのかもしれない。それは、偏った公益論である。公益論を後ろ盾とすることで、問題発言を問題と認識できなくなるのかもしれない。
そこで、公益について考えてみたい。元々は、社会一般の利益とか公共の利益と解されていた。これに国利や国益の意味が重なるのである。前述の問題発言は、後者に足場を置くもので、国益もしくは統治者の利益ととらえているのだろう。
国益と言いたいところを、公益という表現でうまくカムフラージュした典型の一つが、あの優生保護法だった。同法の真髄を成す第4条には、「優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは」とある。公益のもとに、どれくらいの人が命の継承を阻まれ、生き方を捻じ曲げられたのだろうか。更に看過できないのは、公益を目的とするこの法律で、障害者を「不良」呼ばわりしたことだ。この法律は、同趣旨の国民優生法と合わせると56年間(1940年~1996年)この国に君臨した。誤った障害者観を醸成させ、定着させるには十分な期間だった。後を絶たない問題発言は、こうした半世紀余に及ぶ優生政策と無関係とは思えない。
ここにきて、政府の障害者政策に従来に増して嫌な空気を感じる。財務省や厚労省の政策文書に、「生産性の向上」がやたらと登場することだ。例えば、就労継続支援事業B型で、平均工賃と公費水準が連動する形がとられるようになった。平均工賃が低ければ公費が抑えられる。一般論として、「生産性の向上」は悪くはない。ただし、不用意に障害者政策と結び付いたときに、とんでもない状況が待ち構えている。働く力の乏しい人にとっての「生産性の向上」の強要は、「お荷物」と言われるも同然で、居づらさにもつながりかねない。まともな政策とは思えない。優生政策の火種は静かに今も。社会のリーダー層の中に、障害者政策の中に。取り越し苦労でなければいいが。
逼迫する職員不足と2024年報酬改定のゆくえ その①
小野 浩(きょうされん常任理事)
スクリーンリーダー開発の軌跡
齋藤 正夫(ソフトウェア開発技術者)障害者の権利を実現する先駆者、モンティアン・ブンタン氏
佐野 竜平(日本障害者協議会理事 / 法政大学現代福祉学部教授)
生まれて良かったと思える社会の実現のために
品川 文雄(発達保障研究センター前理事長 / 元小学校障害児学級教諭)
最高裁大法廷での勝訴を~人権侵害・優生思想のない社会の礎に~
佐藤 路子(優生保護法訴訟原告家族)
強度行動障害の息子とともに
今井 忠(一般社団法人日本自閉症協会副会長)
~旧ソ連の障害児収容施設で~
古本 聡(翻訳業)
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