23年9月22日更新
VOL.43-6 通巻NO.519
JD理事
篠原 三恵子
日本では新型コロナウイルスの感染者が再び増加傾向にあり、「第9波」に入ったとの声も上がっています。コロナ後遺症に苦しむ人々は世界中で6500万人を上回ると推定され、その数は日々、増加しています。
神経免疫系難病である筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の集団発生は、歴史的にウイルス性疾患の流行後に起きており、患者の大多数はウイルス感染が引き金となり発症しています。海外では2020年春頃より多くの専門家が、COVID-19を引き金にME/CFSが多発する可能性を警告してきました。
当法人では、2020年5月に厚労省にCOVID-19とME/CFSの研究を要望するとともに、アンケート調査を開始し、日本におけるCOVID-19を契機としたME/CFSの発症を確認しました。2022年12月に改正された感染症法の参議院の附帯決議には、衆参両院で採択された当法人の2021年の請願項目「COVID-19後にME/CFSを発症する可能性を調べる実態調査、並びにCOVID-19とME/CFSに焦点を絞った研究を神経免疫の専門家を中心に開始する体制整備」が盛り込まれましたが、未だにCOVID-19とME/CFS関連の研究費は出ていません。
最近、長期に及ぶコロナ後遺症患者の約半数は、ME/CFSの診断基準を満たすとする論文や報道が相次いでいます。2022年12月に『NeurologyInternational』に発表された論文では、465人の参加者の58%がME/CFSの診断基準を満たしたとしています。日本でも同様の状況が起きている可能性が高いです。
このような中、日本においてME/CFSに対する治療薬の治験の準備が進められています。悪性リンパ腫の治療に使われるリツキシマブという薬の治験で、この薬は免疫細胞であるB細胞を枯渇させます。ノルウェーでは、薬の安全性を確かめる第一相試験と、効果や副作用を確かめる第二相試験は成功したのですが、より多くの患者で安全性や効果を最終確認する第三相試験に失敗しています。第三相試験では製薬業界から資金援助を受けられず、薬を半分の量しか投与できなかったことが原因の一つだと言われています。ME/CFSは世界的に治療法が確立されておらず、日本で製薬会社の協力のもとに治験に再挑戦することは、世界中の患者たちにも大きな希望を与えることでしょう。
ME/CFSは2014年の厚労省の調査で、患者の約3割が寝たきりに近いという深刻な実態が明らかになっています。パンデミック以前の推定患者数は約10万人でしたが、今では倍増している可能性もあります。2010年の患者会発足時は身体的な疾患であることすら疑われていましたが、ME/CFSが自己免疫疾患であると認められる日が、遠からず訪れることでしょう。
JD副代表
石渡 和実
7月26日、2016年の津久井やまゆり園事件から7年が経った。「何が変わったのか」、今、あちこちでこの問いが投げられている。8月12日に放映されたETV特集「鍵をあける 虐待からの再出発」も、これに答える秀作であった。
植松の死刑が確定後、事件は「封印」されてしまったとの指摘もあり、国が真正面から取り上げることはない。国民の関心も薄れてしまった、と言わざるをえない。しかし、昨年9月、障害者権利条約の日本審査後に出された「総括所見(勧告)」では、冒頭で津久井やまゆり園事件に触れ、障害者差別が根強く残る日本社会の変革を求めている。勧告を出した権利委員会で知的障害当事者として活躍するロバート・マーチン氏は、自らの入所体験も踏まえ、「やまゆり園事件後、施設で暮らす人のことを考え直したか」と政府関係者に鋭く問うたという。ジュネーブでは、今も「進行形」の大きなテーマなのである。
津久井やまゆり園を設置した神奈川県では、行政も民間も、この問題を追い続けている。津久井やまゆり園の身体拘束が明らかになると(NHKスペシャル:2018年7月)、県は他の県立施設についても調査を行い、中井やまゆり園での多くの虐待が疑われることになった。
中井やまゆり園は民間の施設では受け入れが難しい「強度行動障害」を有する知的障害者の中核施設として、直営で神奈川県職員が支援にあたっている。しかし、この施設で感覚過敏などに対応するために「刺激の遮断」として、明かりも無い部屋に鍵をかけ、たった一人で長時間閉じこめるという「身体拘束」が、20年以上も平然と繰り広げられていたのである。「これが中核施設か!」、特集を見て唖然とさせられた。
筆者は1980年代、「自閉症」が大きな注目を集めていた頃、施設職員として「自傷」や「他害」を有する人とも向き合っていた。パニックを起こすと3人がかりで抑え込む、といったことを当然のように行なっていた。90年代後半になり、知的障害者本人の主張や自己決定が注目されてくるなかで、筆者の意識を大きく変えた言葉があった。「命をかけての訴え」である。「自傷や拒食などを『問題行動』と呼ぶが、あれは彼らの強烈な自己表現である。命をかけてまで訴えたいことがあるのに、それに気付かない援助者の力量不足こそが問われなければならない」。都内の入所施設で、「強度行動障害」と呼ばれる人々の支援を担っていた立場からの発信である。頭を、ガツーンと殴られた思いであった。
「氷山モデル」なども広まり、外からは見えない本人の不安や苦痛、環境への配慮などが注目されるようになった今、「問題行動」は支援者や周囲が作り出していたと思わざるをえない。「刺激遮断」も必要ではあるが、「人となりを知る、暮らしを豊かにする」という支援者の本来の役割を中井は見失っていた、と特集に登場する大川貴志氏は指摘する。特集の後半で、「人間に生まれたくなんかなかった」という入所者の言葉は衝撃であった。「『強度行動障害』というレッテルへの謝罪」と称して、大川氏は再生に向かう中井やまゆり園と協力し、この方の想いをしっかりと受け止め、地域の生活を築こうとしている。
改めて総括所見が指摘する「パターナリズム」の罪、専門職の思い込みが辛い生活を強いてきたことを痛感させられた。中井やまゆり園も支援者も変わりつつある。その基盤は、障害がある人とどう向き合うかという人間観であり、それが「人権モデル」なのだと思う。
〜農福連携で地域をつなぐ〜
平井 喬(法政大学大学院人間社会研究科福祉社会専攻)
「知的障害があっても良い親になれる」欧米で見た日本との違い
市川 亨(共同通信社特別報道室編集委員)
『ウメー!。おっかなくねえぞオ、見ろオ アンちゃんのツラアーッ!』
品川 文雄(発達保障研究センター前理事長 / 元小学校障害児学級教諭 )
続・優生政策に立ち向う
百溪 英一(日本ダウン症国際情報センター(DSIJ) / 茨城県ダウン症協会事務局長)
家族にも支援の手を
林 あおい(もくせい家族会)
災害時対応(第11条)
赤松 英知(きょうされん常務理事)
~旧ソ連の障害児収容施設で~
古本 聡(翻訳業)
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