11年6月15日更新
VOL.31-3 通巻NO.372
法政大学現代福祉学部 岩崎 晋也
「 社会福祉」という言葉、あるいは「福祉」という言葉の人気がない。「福祉」というと
恩恵的なイメージがあり、権利性が薄いと思う人も多いようだ。そうしたことも背景にあってか、
今回の障害者基本法の改正案においても、これまでの「福祉に関する施策」の替わりに、
「自立及び社会参加の支援等のための施策」と記されている。この改正自体については、
「福祉」の中身をより明確に表現したものとして評価するが、社会福祉学の研究者として、
「社会福祉」という言葉に込められてきた意味については述べておきたい。
日本で「社会福祉」という言葉が一般に使われるようになったのは戦後のことで、
実質上、日本国憲法第25条第2項に国の責務として「社会福祉」の増進が規定されて
からである。戦前は、明治時代には<感化救済事業>、大正時代には<社会事業>、
昭和戦前期には<厚生事業>と呼ばれ、時代の求めに応じて変遷してきた。
ただ戦前の基調にあったのは、天皇による慈恵としての援助という性格であり、
さらに戦時中に行われた厚生事業にいたっては、障がいをもつ人を含め、すべての人を
人的資源として、国防に動員する政策が行われた。現代の社会福祉の理念とはまったく
正反対の政策が行われたのである。だからこそ戦後になって、戦前の慈恵主義や軍国主義を
払しょくする意味もあり、新しい言葉として「社会福祉」という言葉が使われるように
なったのである。
この「社会福祉」は、単に憲法として上から与えられた言葉にとどまらない。
「社会福祉」を市民の立場から具体化するために、『朝日訴訟』や『堀木訴訟』など、
権利としての社会福祉を実現する運動が行われたのである。しかし時代を切り開く新しい
言葉であった「社会福祉」も60年以上経ち、かつてのような輝きは失いつつあるようだ。
では戦前のように、時代とともに新しい言葉に変更すべきであろうか。ソーシャルケアや
ソーシャルワークなど、カタカナ言葉が社会福祉の替わりに用いられることも増えている。
しかし単に外来語を用いれば済むという問題でもないであろう。「社会福祉」に慈恵的な
意味を感じる人がいることを認識しつつ、「社会福祉」という言葉に込められてきた
先人の思いや運動をきちんと伝え、この言葉に新たな輝きを加えることこそ、社会福祉の
研究者の役割の一つと考えている。
東川 悦子
難病をもつ人々と障害者制度改革
第1回 難病対策の現状と課題
水谷 幸司
ポスト障害程度区分 第3回
知的障害者への意思決定支援と要支援尺度
柴田 洋弥
障害のある子どもたちのいま 第3回
警告!子ども・子育て新システム
池添 素
プラビダーコスタリカでの活動から その3 坂下 共
JD加盟団体訪問 いってみよう、聞いてみよう 27
埼玉県障害者協議会
花田 春兆
暮らしの中の暴力・虐待への対応と新たな社会福祉像を求めて
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