障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

12年2月27日更新

2011年「すべての人の社会」2月号


2011年「すべての人の社会」2月号

VOL.30-11 通巻NO.368

山本周五郎のことば
                                     日本障害者協議会理事 赤平 守

 「人生は教訓に満ちている、しかし万人にあてはまる教訓はひとつもない、殺すな、盗むな
という原則でさえ絶対ではないのだ」。

 昭和に生きた大衆文学の巨匠、山本周五郎の代表作の1つ『赤ひげ診療譚』の一節、主人
公、小石川療養生所の医師、赤ひげこと、新出去定のことばです。ご存知の方も多いかもしれ
ませんが、山本周五郎は徹底して「人間」を描いた作家です。また、彼の作品の多くには社会的
弱者が多く登場します。庶民の暮らしとは切っても切り離せない貧困の問題はもちろんですが、
障害ということばこそ使わないものの、身体障害だけでなく、知的障害や精神障害、発達障害を
容易に想像できる人々が数多く登場するのも彼の作品の特徴かもしれません。そしてそんな人々
を見つめる彼の眼差しからは、所謂「生きにくさ」を抱えた人々の中にこそ、人間らしさが育まれて
いくのだという、信念のようなものが感じられます。それは彼自身が高学歴とは無縁の貧困家庭
に育ち、12歳で東京・木挽町の『山本周五郎商店』で住み込みの徒弟から独学で這い上がらね
ばならなかったこと、作家となった後も権威と権力を嫌い、直木賞をはじめとして終生、文学賞の
類を辞退した唯一の作家であるというエピソードからも窺い知ることができます。

 奇しくもこの原稿を書いている時(1月24日)、菅直人首相の施政方針演説が始まり障害者基
本法の改正を今国会で提案すると明言しました。しかし、この1年の民主党の変化を思うとまた
山本周五郎のことば「法律の最も大きい欠点の1つは、悪用を拒否する原則がないことだ」(寝
ぼけ所長)や「病気にかかるのは人間ばかりでない。世の中も病んでいるときがある」(ながい坂)
といったことばが思い起こされます。昔も今も世の中は絶えず動き変化が求められています。しか
し、変化が多ければ多いほど、その変化についていけない人々が生み出されていくことも現実な
のだと知らねばなりません。

 最後に再び『赤ひげ診療譚』の新出去定のことばを紹介します。「見た眼に効果のあらわれるこ
とより、徒労とみられることを重ねていくところに、人間の希望が実るのではないか」。私にとって、
今一番こころに染入ることばとなっています。

1月の活動記録
 視点 谷間の障害も声と力を合わせよう!!!
東川 悦子
What's New !
 調査協力委員による政府の調査データの活用広がる
 JD協議員総会とシンポジウム日程決まる
岩崎 晋也
JD30周年 (11)
 自立支援法訴訟 ~勝利的和解後も運動は続く~
太田 修平
 年表 2007年~2008年

障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会ニュース(9)

国際交流
 支えあうアセアンスピリットで「自閉症ネットワーク:AAN」誕生!
氏田 照子
 国境を越えて、仲間とともに成長 ─AAN誕生の背景─
磯部 陽子
報 告
 ニュージーランド研修 ニュージーランド:インクルージョンはどこから 上野 博

連 載
 精神障害者も当たり前に暮らしたい 生活論・生活療法論の見直し 18
 能力障害をめぐって 中澤 正夫

 JD加盟団体訪問 いってみよう、聞いてみよう 23 日本発達障害福祉連盟

 エッセイ パラボラアンテナ〔99〕 与太郎
花田 春兆
トピックス

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