08年12月17日更新
VOL.28-9 通巻NO.342
日本障害者協議会理事 岡村 章三
障害者を街で見かけることが多くなり、JRの車内放送で「お客様ご案内」と車内放送を耳にすることも増えて嬉しくなります。
街づくりが整備されてきたとはいえ、視覚障害者の私が街を一人歩きすることは、危険なジャングルを歩いているようなものです。「ぶつかる、つまずく、落ちる」の3大危険に遭遇します。電信柱や車止め、看板、違法駐車の車にぶつかる、側溝に落ちるなど。私は最近、トラックの荷台に顔をぶつけ、前歯の神経が切れてしまいました。痛い思いを重ねるごとに、心に、負けてたまるかと硬いタコが出来ている気がします。
音響式信号機は、夜7時に音が出なくなります。人がいないからこそ必要なのです。信号待ちをしているとき一言「青に変わりましたよ」と声をかけられただけでとても嬉しい気持ちになります。また、横断歩道の歩車道段差2センチを標準とすると、バリアフリー新法には盛り込まれていますが、自転車やべビーカー、一部の車いす使用者の意見で段差がないところが増えてきています。 視覚障害者にとっては命の問題なのです。段差は、 向こう側の歩道に上がった確認なのです。
視覚障害者の街づくり運動で、今年一番のニュースは、4月にJR東日本が10年間で山手線全駅に随時、可動式ホーム柵を設置すると発表したことです。2010年に試験的に恵比寿駅と目黒駅に可動柵を設置し安全を検証しながら進めるそうです。
旧国鉄時代、全盲の上野さんが高田馬場駅ホームから転落し死亡した事故の、7年間の裁判の結果、「今後安全を確保する」とのことで和解しました。全国の駅ホームの側端に警告ブロックが敷設されてきましたが、ホームからの転落や接触事故はなくなりませんでした。
ホームにホームドアか可動式ホーム柵を設置してほしいと長年要望してきましたが、既存のホームは構造上無理、車両をホームの一定の位置にするのは人による操作では無理、編成された車両ごとドアの枚数が異なる等々の回答の連続でした。しかし、新路線に、そして設置技術の進歩で既存駅にも可動式ホーム柵が設置されるようになり、JR東日本の強固な壁に風穴をあけることが出来ました。全国の視覚障害者が東京の可動柵を見て安全性に感動し、地方の都市部でも可動式ホーム柵の設置が始まっています。
平成20年6月現在、新路線ホームドア方式141駅、新路線可動式ホーム柵140駅、既存改修工事によるもの133駅と全国に運動の力で拡大しています。
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