09年2月19日更新
VOL.28-11 通巻NO.344
日本障害者協議会(JD)理事
政策副委員長 佐藤 久夫
オーストラリアのビクトリア州には介護を要する障害者に「要コンパニオンカード」を発行し、1人分の入場料でレクリエーション施設や公共交通を利用できる(介護者のチケットを無料にする)制度がある。他州にも広がりつつある。
オーストラリアでは1992年に連邦の障害者差別禁止法が制定され、これをきっかけにスポーツ施設、劇場、公園、遊園地などレクリエーション施設や公共交通機関の利用に2人分の料金を払うのは不平等だとの声が障害者から上がった。施設運営者たちはこれに応えて介護者を無料にするなど個別対応をしてきたが、誰が真に要介護障害者なのか窓口での判断も難しかった。
このカードが交付されるのは、これら施設の利用に際して、移動、コミュニケーション、身辺処理、学習・計画・思考などにかなりの人的介護が必要な障害者である。その状態に波があっても生涯続くものである必要がある。単に安心のため、励ましのための付き添いが必要、等は除外される。
このカードは、所定様式に本人(または後見人)が必要事項を書いて、医療や福祉の専門職が証明の署名をし、郵送で申請され、判断され、発行されるものである。発行機関から確認のために関係者がインタビューされることもある。専門職の社会的信用という面でも注目される。
この制度を活用する事業者にとってのメリットとして、企業のイメージアップ、障害者の権利保障という社会的責務を満たす、障害者という新市場・顧客の開拓、障害者差別としての告発の予防、などが挙げられている。
障害者に「割引をする」時代から「平等を保障する」時代への移行を感じる。平等な収入を就労や年金で保障し、平等な出費で暮らせるように保障しようと。障害にともなう余計な出費は個人や家族の重荷にせず社会全体で背負う。こうして、障害者を含めた全員参加となれば、経済的にも精神的にもより豊かな社会となる、との認識を広めたい。
田中 徹二
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