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●解説 蟹の手の上田秋成 近代以前の日本文学では、極めてしい幻想的で、気高いロマ ンの香りに満ちた作品「雨月物語」の著者として、上田秋成の 名は忘れられないでしょう。 京都 南禅寺境内の末寺の庭にある秋成の墓は、台石に蟹が 彫られ、墓碑銘には<無腸の墓>とあります。 無腸とは、腹部が無いように見えるところからの蟹の別名で 、秋成は俳句などの雅号に使っていました。 なぜ、秋成がこれほどまでに蟹にこだわったのでしょうか。 その秘密は彼の両手の指にありました。 幼い時のホウソウの毒で、あるいは欠け、あるいは短くなっ ていて、筆を持つにも、残った短い二本の指で、蟹がはさみを 使うように、はさみ込んで書くしか無かったのです。 ある秋成研究家は「足が悪い場合は、たとえ歩けなくても、 紙に向かって書いている間は忘れていられる。だが彼の場合、 書いている間も、その手と直面し続けなけばならなかったのだ 」と書いています。 彼はその手で、類い希れな名作を生んだのです。 蟹の指で筆をとり、晩年には 失明に近かった「雨月物語」 の 上田 秋成。[←←最初] [←前頁] [次頁→] [最後→→]
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