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●解説

  失明と闘った滝沢馬琴

   江戸時代も後期になると、文化の中心も上方から江戸に移り
  、出版文化も盛んになります。
   活字と違って、一枚分をそっくり彫って刷る関係で、絵や連
  綿と続く漢字仮名混じり文もそのままに印刷出来たのです。絵
  入りなのが、一般化に大きく役立ちます。
   犬の字をそれぞれの苗字に持つ八人の剣士が大活躍する「南
  総なんそう里見八犬伝」や、源為朝ためともの勇壮な生涯を描
  いた「椿説しゅんせつ弓張月」などの、滝沢馬琴ばきんの作品
  も、こうした出版文化に乗って生まれたのでした。
   が、なにしろ大長編のために、何十冊にもわたって、何年、
  いや十年以上の歳月を掛ける大事業にもなったのです。読者の
  評判が、励ましになったことでしょう。
   しかし。全く思いがけない事態が、馬琴に襲いかかってきま
  す。眼病による視力の衰退です。
   そして、ついに失明の日を迎えて、筆がとれなくなってしま
  うのです。想は湧いてくるのに、書き留めることが出来ない。
  作家としてこんな悔しさは無いでしょう。
   息子のお嫁さんに、口述筆記を頼んでも、漢語・漢字の多い
  文章。途方に暮れながら続けるしかないのです。


    晩年失明して嫁に筆記を
    させて「八犬伝」等と
    完成させた 滝沢 馬琴。
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