26年5月21日更新
2026年「すべての人の社会」5月号
VOL.46-2 通巻NO.551
■巻頭言 街づくりとは
JD理事 長岡 雄一
長年にわたり、視覚に障害のある方の白杖(はくじょう)を使用した歩行訓練を行なってきました。歩行訓練は白杖の使用法だけを訓練するものではなく、保有視覚や視覚以外の他の感覚を利用して収集した情報の解釈等を訓練していくものです。
そうした訓練の過程では、必ずと言っていいほど、歩行する環境の問題にぶつかります。昨今、関心の高まっている駅のホームの問題だけでなく、街の中に多く敷設されている点字ブロックの形状や敷設方法にかかわる問題、車道と歩道が分離されていない道路の問題等々、数え上げればきりがありません。そしてそれらは、即、移動の安全に直結します。
歩行訓練そのものは、今ある環境をいかにうまく利用して歩行するかを中心に考えられるものですが、時として上記のような、訓練という範疇では解決できないような事態に直面します。また、視覚に障害のある方のために設けられていると思える各種設備が、実は、視覚に障害のある方のことを考慮していないのではないかという事例も少なからず見られます。いい例が点字ブロックです。
歩道上などに設けられている点字ブロック(誘導ブロックや警告ブロック)の中でも、誘導ブロックは、それを伝うことで、目的地までの到達を容易にしているわけです。しかし皆さんも見かけることもあるかと思いますが、ある場所で急に曲がったり、消えてしまったりということが起きています。それは、道路の形状や、マンホールの都合であったりと、元々の道路の状況(社会インフラといってもいいかもしれませんが)に影響を受けていることが原因と思われます。
ただ、ここで考えなくてはいけないことは、社会インフラを整備していく段階で、点字ブロックが後付けになっているという事実です。最初から視覚に障害のある方の動線を中心に整備をしていけば、点字ブロック特に誘導ブロックのおかしな配置はなくなるであろうし、結果として、移動の安全も今より確保されるのではと思います。
移動の安全の確保は何より重要なことです。
街づくりが、白杖や盲導犬、車いすなどを利用する方々を一義的に考慮して開始されることを強く望んでいます。
■視点 やまゆり園事件から10年に思う Ⅱ ~障害のある人の地域での暮らしに期待~
JD副代表 石渡 和実
「やまゆり園事件から10年」というイベントや特集をあちこちで目にするようになった。JD藤井代表も、この欄の3月号で率直な思いを語った。「いのち」も「名前」も消された19人、事件の真相究明にはほど遠い、など「無い無いづくし」で事件が封印されてしまったと嘆く。そして、「節目の年だからこそ新たな展開を」と期待の言葉で結んでいる。
筆者は、事件発生後に神奈川県が設置した検証委員会の委員長を務めた。しかし、本来の役割を果たしきれなかった、という悔いの念を抱き続けている。委員会では、「本人不在」という言葉が飛び交った。被害に遭った知的障害者の声や思いを受け止めることなく、防犯体制の強化などだけの報告書になってしまった。職員であった植松死刑囚が事件に至った背景、さらに社会に根深い優生思想、これらの課題にこそ真正面から向き合うべきであったのに何もできなかった。それだけに今も、この事件にはこだわり続けている。
2014年1月20日、日本が障害者権利条約を批准し、福祉実践において「合理的配慮」や「意思決定支援」が注目されるようになった。事件後、やまゆり園入所者の地域移行をめざして意思決定支援に取り組む鈴木敏彦氏(現淑徳大学副学長)は、「障害者はこんなもん」とみなす支援者の「決めつけ」や「あきらめ」を厳しく追及する。本人の「最善の利益」と称して親族や後見人等が代わって決定する成年後見制度が批判され、条約12条「法律の前にひとしく認められる権利」が登場した。障害特性や程度に関わらず意思決定支援が実践され、快不快や好き嫌いも含めて思いを受け止め、それを尊重して実現に努めている。
10年以上が経過し、本人が納得できる「自分らしい暮らし」が具体化しつつある。こうした流れの中で、障害者も認知症のお年寄りや子どもも「社会的弱者」などではなく、それぞれが「かけがえのない存在」と認識されてきている。障害者観だけでなく人間観が確実に転換している。
2024年7月3日、優生保護法裁判の最高裁判決は、「優生保護法は憲法13条・14条に違反し、成立の時点で違憲であった」と断じた。「期待以上だった」との声も多い。最初に仙台で提訴した新里宏二弁護士は「被害者の声こそが社会を動かす」と確信し、弁護団の戦略として「障害者の心からの声」を裁判官に伝えることに努めたという。ハンセン病裁判でも活躍する徳田靖之弁護士は、「人類の歴史は差別された当事者、排除された少数者が作り上げてきた」と主張し、「当事者とともに憲法13条を武器に闘う」と訴える。優生思想の克服には「障害当事者との協働」が重要と、裁判を闘い抜いてきた法律家は声を揃える。
「闘い」ではなくとも、障害のある人が地域で当たり前の暮らしを続け、その暮らしぶりを目にすることで住民の意識が変化してきていると感ずる。最近も、都内でこんな話をお聞きした。「60歳を過ぎて退職し、ガイドヘルパーになって初めて障害者と接するようになった。特別支援学校に迎えに行くと長時間の座り込みとかバスから降りてくれないとか、予想外の事がいろいろあるが、苦労を上回る充実感を日々味わっている。今は、障害者と関わることが楽しくて仕方ない」。似たような声を聞くことが増え、障害のある人の存在が、暮らしぶりが、確実に地域の意識を変革していることを実感する。
どのような障害があろうとも、自らが選択した地域の暮らしを継続できる支援システムを拡げていくことが、やまゆり園事件から10年の今、ますます求められている。
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第93回 私らしく生きる
里 塁樹(ピアサポーター)
やまゆり園事件10年の節目に 優生思想を乗り越えるために
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