障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

22年2月25日更新

2022年「すべての人の社会」2月号

2022年「すべての人の社会」2月号

VOL.41-11 通巻NO.500

巻頭言 あるグループホームの現状

JD理事 戸髙 洋充

 1990年に神奈川県で生活ホームの補助金制度がスタートしました。私の所属している運営母体の 精神障害者家族会も、ホームを作るための準備会を、家族会・職員・市担当課・保健所・地域・精 神科病院相談室の関係者で発足させ、1993年に生活ホームを定員5名で2カ所開設しました。その 当時のホームを作る目的として、①精神科病院の長期入院者の退院先、②親亡き後の住まい、③親 からの自立が謳われていました。

 現在、当法人は、4か所で22名が生活しています。入居者のホーム入居前住居は、精神科病院41%、家族同居36%、単身他23%です。病院からの退院者は、家庭でもなく単身生活でもなく、ホームしか行く所がなかった方たちです。家族同居のうち75%は同居が困難になっていた方で、親からの独立が25%です。緊急連絡者(何かあった時の連絡者)は親52%(両親存命34%)、兄弟22%で、その平均年齢が73歳。親の高齢化と、亡くなった場合や、医療的な判断が求められた時にどうするかが大きな課題です。金銭管理は、自己管理32%、家族27%、後見等27%、日常生活自立支援事業14%ですが、高齢の親がどこまで管理出来るか、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業過剰と精神障害対応の困難さが聞こえてきます。生活費は、年金+貯金+給与が5%、年金+貯金32%、貯金5%、年金+仕送り26%、生活保護32%で、仕送りは親が生きている間の保証で、貯金も目減りしていきます。生活保護受給者が年々増えています。

 サテライトを使って、ホームから一人暮らしにチャレンジした方が、サテライト退居後を見据え、自分で住みたい物件を不動産にあたりましたが、家主から障害を理由に断られました。サテライト退居後は家賃補助が無くなりますが、地元の市の生活保護基準の住宅扶助は41,000円。この金額の物件は、段々なくなっています。一般の人は家賃やアクセス等から選択できますが、障害があるために断られるのです。最近、自治体に居住支援協議会が設置され、居住支援法人が活動を始め、市内では、ホームからの退居者のアパート生活の支援をしてもらっていますが、限られた物件の中でマッチングが上手くいかないようです。

 日本は居住福祉が非常に遅れていると言われています。どこで誰とどんな生活をするか、個々の思いがあるでしょうが、障害があることで、個々の生きづらさや生活のしづらさがあり、ホームだけでなく、色々な選択が出来る制度やそれをサポートする仕組みをどう作るかが課題であると思います。

 

視点 「骨格提言」に近づく法改正を -『障害のある人の分岐点』を生かして-

JD常務理事 増田 一世

 日本障害者協議会(JD)の藤井克徳代表の単著「国際障害者年から40年の軌跡 障害のある人の分岐点 障害者権利条約に恥をかかせないで」(やどかり出版、2021)が昨年11月に出版された。障害分野の40年と著者の生きてきた足跡が重ね合わされた書下ろしである。だからこそ読み応えがある。また、編集者泣かせだった重厚な年表も本書の大きな特徴だ。読者には折に触れ活用されるものとなるだろう。もうお読みいただけたでしょうか。

 私が、やどかりの里で働き始めたのが1978年、藤井さんの描き出す40年とほぼ重なる。同じ40年 でも、藤井さんが記されたことで、改めてはっきりとした輪郭をもって迫ってくる事実も多かった。そして、障害者自立支援法が登場する2000年代以降は、JDの活動に加わり、藤井さんの記述をたどりつつ、2000年以降の20年を改めて考える機会になった。

 私の働くやどかりの里は、精神衛生法の時代、精神障害のある人を地域で支える法制度のない1970年に活動を始めた。最初の20年間は活動を存続するための努力の日々であり、精神障害のある人にとって地域での支えがどれだけ重要なのかを繰り返し訴え続ける年月だった。そのために出版や研修・研究事業が始まった。1990年に拠点となる施設を開設し、それ以降100人を超える社会的入院(長期入院)の人たちを地域に迎え入れ、ニーズに合わせて社会資源を地域に点在させ、地域のネットワークを構築してきた。

 やどかりの里で精神障害のある人の生活支援・労働支援の仕組みが整いつつある時、再び逆風が吹き荒れた。障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)だ。障害者福祉をサービスに置き換え、障害のある人と支援する人を分断する仕組みが導入された。この逆風にどう対峙するのか、法人内で何度も何度も話し合いを重ね、JDはじめさまざまな団体と協力し、法改正の運動にも積極的関わってきた。

 その中で動き始めたのが、障がい者制度改革推進会議であり、そのもとに設けられた総合福祉部会だった。私も総合福祉部会のメンバーとして、障害者自立支援法にかわる障害者総合福祉法制定に向けて、検討に参加する機会を得た。厚生労働省の講堂に集まった総合福祉部会の55人は、障害者自立支援法への評価はそれぞれだったが、障害のある人や家族も多数参加し、活発な議論が交わされた。事前に意見提出が求められ、会議前に目を通す資料は分厚く、ハードな会議だった。多様な参加者のためにさまざまな配慮があり、まさに合理的配慮のお手本となる参加型の会議だった。障害者権利条約の大きな後押しもあり、新たな法を生み出すことへの期待があった。そして、さまざまな意見の違いを乗り越え、「障害者総合福祉の骨格に関する総合福祉部会の提言―新法の制定を目指して」がまとめられた。

 しかし、期待は大きく裏切られた。障害者自立支援法から障害者総合支援法に改正されたが、看板架け替え法と非難された。そして、3年ごとの見直しが行われてきたが、骨格提言から遠ざかっている……と感じるのは私だけではないだろう。2022年には総合支援法の見直し、日本の障害者権利条約の履行状況の国連審査が予定されている。法の見直しは国連の勧告後にと思う。「他の者との平等」の実現のためにこそ、障害者総合支援法改正が行われるべきだからだ。一歩でも骨格提言に近づくために……為政者にこそ、本書を熟読いただきたいとの思いを強くしている。

 

2022年1月の活動記録



障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会ニュース57

   


通巻500号を迎えて

-42年間に感謝し、これからも歩み続けます-     




連載 アートと障害者 No.14

私と色弱と人生   はらだ たけひで(画家・絵本作家)

 


連載 あらためて公共財とはなにか 4

多機能トイレの利用集中に"利用"分散の考えを
    山本浩司(NEXCO中日本)




連載 家族も自分の人生を歩む 家族依存・家族支援を考える 第6回

家族として「当たり前の家族」でありたい
岡田久実子(全国精神保健福祉会連合会)

         



連載 優生思想に立ち向かう 第29回

虐待はなくならない


小西勉&及川信城  司会:山口博之




連載 社会の「進歩」は人々を幸福にするか? 14

福祉機器の進歩と幸福
井上剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)




連載エッセイ 障害・文化・よもやま話

第30回 優生思想に悩んだ障害者たち―句集『車椅子』を追いかける(前編)
荒井裕樹(二松学舎大学)




トピックス・インフォメーション


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