障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

21年12月21日更新

2021年「すべての人の社会」12月号

2021年「すべての人の社会」12月号

VOL.41-9 通巻NO.498

巻頭言 全身性障害者が感染症にかかると(体験から)

NPO法人日本障害者協議会理事 太田 修平

 日本では第5波を頂点に少しずつコロナ感染者が減少し、世界でも類を見ない落ち着きをみせている。専門家は冬に向かって第6波の可能性が大いにある、と話している。

 私はこの夏、第5波の大きな波のただ中、「みずぼうそう」という感染症に罹かかってしまった。子どもの時に罹っていなかったらしい。2回目のコロナのワクチン接種を打って1週間後、39度台の高熱と発疹が出た。かかりつけの病院でみてもらったが、そこは皮膚科がなく、近くの皮膚科がある大きい病院を紹介してもらった。そこで「みずぼうそう」と判明し、医師から「1週間の入院、家族でも面会禁止」ということを言われた。

 「私は自分では何もできない重度障害、言語障害もあり、介護のことが心配」と言うと、医師は「任せてください。うちではそういう患者さんたくさんみていますので、安心してください」と言った。心配な気持ちのまま、あれよあれよという間に手続きが進められ、付き添ってくれた妻と別れの挨拶を交わすこともないまま、病室に連れて行かれ、あっという間に着替えさせられ、おむつをあてがわれてしまった。

 介助の仕方について説明する時間もないまま、事が進行し、ナースの人たちは、私の言うことをろくに聞こうともせず、一方的だった。私のような障害の重い者は、おむつでトイレをしているのだろうという前提があるみたいで、私が色々と話しても言語障害を理解しようともしなかった。

 私は一日中気持ちの悪い思いをさせられ、そのことばかりを考えていた。食事も急いで食べさせられた。大体10分以内に終わらなければならず、急いて食べるから、吐き気をもよおすこともあった。だがナースコールをしても最低1時間経たないと来ない。5日目「この病院で喉を詰まらせて死にたくない」とLINEでSOSのサインを出し(スマホは持っていてよく、入力の介助をしてくれる職員もいた)、翌日何とか自宅での治療が認められた。

 知り合いの障害の重い人でコロナに罹り入院した人がいて、やはりヘルパーの介護は認められなかったらしい。東京都は重度の障害者が入院した際、病院が認めれば重度訪問介護を利用してよい、としている。しかし感染症の場合は、なかなか病院も認めない。コロナ禍で、障害の重い人が感染症で入院することは珍しいことではなくなる。医療スタッフの人員体制のあり方についての見直しはもちろんのこと、医療スタッフに対する研修をしっかり行い、特に全身性障害者についての知識や対応のあり方について身につけてほしい。最低限「聞く姿勢」を持ってほしい。

 

視点 やるなら今しかねえ

NPO法人日本障害者協議会副代表 薗部 英夫

 40年前に初回が放送された倉本聰のドラマ「北の国から」。映画「男はつらいよ」とともに見たことがないという若い世代も増えているようだ。この「北の国から」には、東日本大震災後のコロナ禍での今を舞台にした「幻の台本」がある。ぜひ見てみたい。

 主人公の黒板五郎(田中邦衛)と子どもたちの物語には、バブルとその後の時代へのアンチテーゼが重低音で流れている。印象に残っているシーンに、五郎が歌う長渕剛の「西新宿の親父の唄」がある(「'92巣立ち」)。「66の親父の口癖は やるなら今しかねえ~ やるなら今しかねえ~♪」。

 2021年10月、衆議院選挙が終わった。投票率は約56%と低く、そのうち、期日前投票数は約19%で2000万人を越えたそうだ。いうまでもなく、投票は重要な政治参加の権利だ。ところが、障害者への合理的配慮を欠くような事例が寄せられている。これは障害者権利条約(第29条 政治的及び公的活動への参加)の実現を妨げるものだ。以下、4つの視点からいくつかの事例や改善要望を整理してみたい。

 1)情報のバリアフリーの視点
○ 「期日前」がはじまっているのに「選挙公報」が届かない。「裁判官国民審査」の「公報」含め、電子データでも提供してほしい。入院や入所している障害者にも確実に届けてほしい。
○ 知的障害者にわかりやすい「選挙公報」がない。

 2)投票所の環境などに関するバリアフリーの視点
○ 低床の投票記載台で「イスに座って記入したい」と希望しても「車いす専用です」と断られた。
○ カラーユニバーサルデザインに基づく投票箱の色分けや誘導矢印表示がない。

 3)投票方法、投票用紙などのバリアフリーの視点
○ 原則自書のみとする公職選挙法が、自書の困難な障害者の投票権の行使を妨げている。
○「裁判官国民審査」用紙のマス目はめちゃめちゃ狭く、不随運動がある人には記入が困難。
○ 視覚障害者は、審査で×をつける場合は、一人一人の裁判官の名前を、自らが点字で打ち、バツ(×)を打つ。投票方法を改善してほしい。
○ 補助者を投票所事務員に限定する公職選挙法が、通訳介助者を介して自らの意思を伝える必要がある盲ろう者や、自らの意思を家族・支援者に対してであれば伝えられる障害者の投票権の行使を妨げている。自らが選んだ同伴者による代理投票の実現を。

 4)その他のバリアフリーの視点
○ フィンランドではすべての病院で投票をやらなければならないという法がある。病院・施設等に移動投票所を開設してほしい。
○ 筋ジス病棟で暮らしています。期日前投票を代理投票しました。代理記載人の管理課員に、指さししてもらい、記載してもらう。立会人には 投票内容が知られないようにするためカーテンの外で立ち会ってもらいました。他ではどうしていますか?
○ 障害者手帳取得が非常に困難で、障害者総合支援法の対象にもなっていない難病の人には、投票所まで歩いて行くことができなくても車いすは支給されず、期日前投票することもできない人がたくさんいる。改善してほしい(筋痛性脳脊髄炎の会)。

 投票における合理的配慮を欠く問題事例を寄せ合い、整理して、多くの障害者団体とともに国などに改善要請したい。やるなら今しかねえ~。


2021年11月の活動記録



連載 アートと障害者 No.13

自分の「ふつう」を描きつづけていく     黒坂 祐(美術作家)




連載 あらためて公共財とはなにか 2
発達障害を手がかりとして考える「トイレの機能分散」     橋口 亜希子(発達障害を手がかりとしたUDコンサルタント)





連載 家族も自分の人生を歩む 家族依存・家族支援を考える 第5回

障害のある人の自立した暮らしと家族のノーマライゼーション    新井 たかね(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協)会長)




連載 優生思想に立ち向かう《28》

教科書にみる優生思想    伊賀 公一(NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)副理事長)




連載 社会の「進歩」は人々を幸福にするか?12

進歩≒便利≠幸福=優しさ=人の繋がり 中村 敏彦(一般社団法人ゼンコロ会長/NPO法人日本障害者協議会理事)

         



トピックス・インフォメーション



報告 JD憲法と障害者2021

-だれもが尊厳をもって生きられる社会のために-




連載エッセイ 障害・文化・よもやま話

第29回 寄り道編「コロナの後」を考えるために
荒井裕樹(二松学舎大学准教授)




いんふぉめーしょん

日本障害者協議会JD《連続講座 2021年度》オンライン



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