障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

20年9月16日更新

2020年「すべての人の社会」9月号

2020年「すべての人の社会」9月号

VOL.40-6 通巻NO.483

巻頭言 コロナ禍でのソーシャルディスタンス

NPO法人日本障害者協議会理事 全国精神障害者地域生活支援協議会代表 戸高 洋充

 昨年末から、新型コロナウィルスが中国で騒がれはじめ、クルーズ船、そして日本にも感染が拡大し、緊急事態宣言が出されたり解除されたりする中で、終息する見通しが立ちません。

 これまで、私たちの支援は、対面しながら話を聴いて、一緒に考え、必要があれば同行したり、関係機関とケア会議をしながら、その人がやりたいことを、伴奏型で支援してきました。今は、コロナという見えないウィルスに感染しないために、ソーシャルディスタンス、三密を無くし近づき過ぎないようにと、今までの人との関わり方を見直し、「新しい生活スタイル」を確立しましょうと言われています。リモートワーク、オンライン等、新しい生活スタイルの様式が広がっています。

 しかし、人類がこれまで色々な感染病と闘いながら今日に至っている歴史を考えると、このウィルスの正体の解明が進み、ワクチンが開発され市場に出てくるまでの1年位をどう乗り切るかだろうと思います。私たちは、生まれてから様々な人との関わりの中で、色々な経験をしながら生きています。社会もその中で回っています。今は、感染予防に注意を払いながら、これまで行なってきた直接支援を、如何に継続するか、だと思います。

 コロナに感染した人に対する誹謗中傷がニュースになっています。風評被害やデマ、最近はネットの炎上など心無い人はいつの時代にも在ります。感染した人を、危険物のように排除する社会とは如何なものでしょうか。感染予防を徹底すれば、無菌状態の生活をするしかありません。地球上には色々な微生物がいて自然が成り立ち、人間はそこで生きている生物に過ぎないと思います。

 科学の力を結集しても、最近の異常気象は防げないし、そもそも異常気象の要因は、人間の文明の進化がもたらしたと言われており、所詮対症療法でしかないと思います。

 人間は人との関わりの中で生きているのですから、その営みは変えることなく、手洗いやマスクをする配慮をしながら、利用者との関係性はこれまでと変えることなく続けていきたいと思います。

 私事ですが、96歳になる母親が熊本県内の介護施設に入所しています。昨年までは、年3回位会いに行っていたのですが、コロナ禍で会えていませんでした。先日オンラインで、久しぶりに、映像上ですが笑顔の母親と対面できました。耳が遠いので電話は無理ですから、今の時代だからオンラインで会えたのだと思います。あと1年頑張っていて、直接会えることを願っています。

視点 ナイチンゲール生誕200年に思う

NPO法人日本障害者協議会代表 藤井 克徳

 ナイチンゲールと言えば、近代看護の祖と言われている。日本を含む世界中でこれほどまでに世代を超えて、しかも親しみをもって知られている人物も多くはなかろう。今年は、そのフローレンス・ナイチンゲール(英国)の生誕200年に当たる。ついでに言うと没後110年でもある。年代で表すと生誕が江戸時代後半期の1810年、没したのが明治末期の1910年。子どもの頃から偉人伝などを通してなじみのある人が多かろうが、果たして本当のところはどうだったのだろう。節目の年に、あらためてその素顔に迫ってみたい。

 偉人伝の登場人物となると美化や誇張がつきもの。ナイチンゲールについても、「白衣の天使」「博愛的奉仕」などの表し方はその類かもしれない。しかし、ナイチンゲールの実像は、それを差し引いて余りある。調べれば調べるほどすごさが伝わってくる。しかも、実践や活動の主な舞台が150年近くも前だったことを合わせ見れば、思わず脱帽である。脱帽だけでなく、背筋をしゃんとさせてくれる。すごさの所以は何だろう。大きく見ると三つで集約できる。一点目は徹底した現場人間であったこと、二点目は今に通じる大量の書き物を残したこと、三点目は改革者の姿勢を貫いたことである。 

 「徹底した現場人間」を決定付けたのは、英仏とロシアが戦ったクリミア戦争(1854年~1856年)である。女性看護団のリーダーとして戦地に入ったナイチンゲールが心がけたのが、実態の掌握だった。その上に、あの「分け隔てのない看病」が行われた。このことが信頼できるのは、下級兵士による高い評判の記録が多数残されていることである。

 「今に通じる書き物を残したこと」でみると、まず掲げたいのは、『看護覚書』(1859年)、『病院覚書』(1863年)、『救貧覚書』(1869年)である。残した著作物は、冊子類を含めて150編。ひときわ光を放つのが『看護覚書』である(序章、本文13章、終章、補章から成る)。

 その真髄は何かであるが、序章にありと言いたい。序章の冒頭で病気の定義を記している。そこには、シンプルに「病気は修復過程である」とある。こうした疾病観から、いろいろな考え方やイメージが膨らむ。まず伝わってくるのは、「希望の大切さ」「病気のある人自身の復元力の尊重」である。同時に、「主人公はあくまでも病気のある人で、医師も看護師も補助的存在にすぎない」という解釈が成り立つ。また、「修復過程」という時間軸の視点が入っていることで、病気の原因に遡ったり、治療を終えた後の暮らしのあり方にまで視野が及ぶように思う。『看護覚書』の全体を眺めれば、決して拡大解釈でないことがわかってもらえよう。

 「改革者の姿勢」についても、エピソードは尽きない。強く感じるのは、「部分と全体」の双方に焦点を当てようとする姿勢である。一つの困難に遭遇した時に、その解決に力を入れるのと合わせて、時にそれ以上のエネルギーをその背景や原因解明に費やすのである。また、主張の方法にも特徴がある。統計手法の駆使にみられるように、わかりやすい理論化を大事にした。そうした手法での陸軍の改革や官僚主義の打破は有名な話である。残した言葉の一つに、「未完成は未着手に等しい」があるが、物事を成し遂げる力も並外れていた。

 コロナ時代の今にナイチンゲールが存在していたらどうだろう。「コロナ問題の担当大臣を、どうして経済再生担当大臣が担うんですか」と、総理大臣に詰め寄るに違いない。そして、「『命と経済の両立』とする発想法そのものが私には理解できません」と続けるのでは。

2020年8月の活動記録


What's New! 九州豪雨(令和2年7月豪雨)被災障害者緊急支援の現場から

野際 紗綾子(認定NPO法人 難民を助ける会 [AAR Japan] 支援事業部マネージャー)




JD40周年 運動のあゆみ1(設立から障害者自立支援法に対する運動まで)

「当事者参加」「協力共同」の運動こそが施策改善のカギ !
 ―結成40年・前半期の運動から学ぶこと― 白沢 仁(NPO法人日本障害者協議会理事)




連載 優生思想に立ち向かう

第18回 やまゆり園事件を問う-きょうされん神奈川支部の活動から-
海原 泰江(社会福祉法人あまね理事長)




連載 VHO-net20年の歩み⑤つながっているからできること

難病の患者団体とVHO-net 学んだこと 気づいたこと 生かしたこと
森 幸子(一般社団法人全国膠原病友の会代表理事)




コロナ禍の影響調査

きょうされんの新型コロナ報酬影響調査からみえるもの
大野 健志(きょうされん経営管理部会)
皿海 みつる(きょうされん経営管理部会)




トピックス・読書案内



COVID-19のインパクトその1

南アジア:バングラデシュから Abdus Sattar Dulal(Bangladesh Protibandhi Kallyan Somity代表)




私の生き方

第71回 人生は川の流れのように~障害と共に生きて~
山田 悠平(東京都在住)




表3 JD40周年 オンライン集会/シンポジウム
国際障害者年前夜からの40年をたどり未来を展望する集い



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