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●解説

  松葉杖をつく新しい女

   昭和の軍国主義がすべてを飲み尽くす前の一時期、自由が求
  められた時代。大正デモクラシーと呼ばれた時代です。女運動
  も華やかに展開し、〈新しい女〉と云われ個性豊かな女性たち
  が華やかに登場します。
   素木しらきしづは、障害者を代表する新しい女でした。
   札幌で生まれた彼女は、生来虚弱体質だった上に、登山で転
  倒したのがもとで結核性関節炎になり、女学校を卒業後、右足
  切断の手術を受けねばならないことになります。
   病床の気晴らしに短歌や詩を書き、洋画を試作していたので
  すが、自分の悲運をバネに、作家になろうと志しを固めます。
   処女作『松葉杖をつく女』第二作『三十三の死』ともに片足
  切断の苦悩に絡むものですが、文壇で好評を得ます。
   実生活の面でも、親族の反対を押し切って、画家の上野山清
  貢と結婚、子供まで生むなど、自分の意志で生を貫き通して、
  予言した三十三歳よりも十年も若く死を迎えたのでした。
   今でこそ忘られていますが、中条百合子(後の宮本)と並称
  される作家だったのです。


    文壇の「新しき女」
    松葉づえの 素木 しづ。
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