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  芭蕉の保護者・杉山杉風

   それまで、《ことばのあそび》だった俳かいを芸術にまで高
  めたのが、元禄の代表的文学者の一人、松尾芭蕉だったのは、
  よく知られています。
   その芭蕉には大勢の弟子たちが、全国にいました。
   杉山杉風はその中でも、芭蕉がまだ有名になる以前の早い時
  期からの、生涯変ることのない、弟子仲間でも特に信頼の篤い
  一人でした。
   この杉風は、鯉屋という魚問屋の大商人で、芭蕉の江戸での生
  活の保護者でもあったようです。
   軒先に大きな芭蕉が茂っていたところから、雅号の由来とも
  なった深川の芭蕉庵も、鯉屋の魚を一時的に飼っておくいけすの
  番小屋だったと云います。
   このように何の苦労もないように見える杉風も、実はひどい
  聴覚障害を持つ身だったのです。
   芭蕉は、そうした杉風の身を思いやって、生涯、耳の遠いと
  いうことを、俳句に詠むことはなかった、と伝えられています
  。


    俳諧の まことの花を
    咲かせんと
    身を責める師を
    住まわせて 鯉のいけすの
    小庵に 芭蕉は茂る
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