現在の日本の障害者就労政策は、一般労働市場での雇用と就労継続支援B型事業所(B型事業を中心とした)の福祉的就労に二分されています。福祉的就労の障害者は、おしなべて工賃水準が低く(2012(平成24)年度実績で平均月額14,190円)、労働者としての待遇も受けられないため、経済的、社会的に厳しい生活を強いられている状況です。
日本障害者協議会は、2008(平成20)年に「社会支援雇用研究会(代表:松井亮輔法政大学名誉教授)」を設置し、この障害者就労の二分化政策を一体化し、福祉も労働も保障された障害者の新しい就労のしくみの確立をめざして、国内外の施策や就労実態の研究活動を続けています。
今般、福祉的就労についての基礎データを得るため、就労支援の現状、とくにB型事業所の現状把握を目的として調査を実施しました。調査の対象はB型事業所の利用者、一般就労者、事業所の三者です。一部の事業所へは直接訪問し、アンケート調査を補足すべく、より詳細なデータを得るためのヒアリング調査も実施させていただきました。
本書は、この調査結果を図表等で提示しながら、これまでの研究内容と融合させて考察し、まとめたものです。めざす制度の構築までにはさらなる精査や議論が必要と思われますが、現在の制度に代わる、真にディーセント・ワークを提供し得る障害者就労支援制度のあり方に踏み込み、それを実現させる大きな一歩となることを願うものです。本書が、さまざまな立場で障害者就労に係る研究や実践に取り組んでおられる関係者の方々のヒントになれば望外の喜びです。
最後になりますが、日々のお忙しい業務のなか、快く調査にご協力くださった事業所関係者のみなさまに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
そして、「わが国における社会支援雇用を確立し、障害者の多様な就労を構築するための調査・研究」をテーマに本調査研究事業を実施し得たのは、ひとえに公益財団法人三菱財団の助成があったからこそであり、心からの御礼を申し上げます。
特定非営利活動法人日本障害者協議会
代表 藤井 克徳
2014年9月30日