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●解説 療養所の『初夜』と『春』 昭和十一年、文学界賞の選者たちは一様に強烈なショックを 受けたのでした。鬼気迫る作品に触れたのです。 題名は『いのちの初夜』一人のハンセン氏病患者が、今日ま で生きてきた過去とも社会とも、完全に決別して、療養所とい う閉ざされた世界で生きるしか無い極限にまで追い込まれた 苦悩を、赤裸々に描いた作品だったのです。 その当時ハンセン氏病は、治癒する方法も無く悲惨な死に至 る病で、何時何処で感染するかわからないとの誤った常識で、 異常に怖れられ、発病すると強制的に療養所に隔離されたので した。 ただ、文句なく受賞作に推されたのは怖れや同情でなく透徹 した作者の目と、揺るぎない筆力を備えていたからです。彼の 筆名は北条民雄。実名は不明です。それほどに過去は消されな ければならなかったのでした。 同じ隔離の悲劇を女性の目と心で描いた『小島の春』はたし か映画化されるなどして、広く知られています。 が、作者の小川正子は看護婦として関わっていたのが、後に は発病してその瀬戸内海の小島の療養所で、死を迎えたとも伝 えられています。 ハンセン氏病の悲劇を文学 に開花させた、小川 正子、 北条 民雄たち。[←←最初] [←前頁] [次頁→] [最後→→]
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