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●解説

  『北越雪譜』の鈴木牧之

   徳川の世も傾きを見せ始めた頃、欄熟した江戸文化の代表的
  流行作家の山東さんとう京伝は、本の出版の世話をしてほしい
  、という依頼の手紙を受け取ります。
   差出人は、越後の鈴木牧之ぼくしと書かれていました。
   俳人として、まるで知らない仲でもなかったのですが送られ
  てきたのは、自作の句集でも、よくある選句集でもなければ、
  京伝が人気を得ていた小説の類にあやかろうとするような原稿
  でもありませんでした。
   そこには、彼の住む越後(新潟県)の片田舎を半年も降り埋
  めてしまう雪と、その雪の中での人々の生活が克明に描かれて
  いるのでした。
   牧之の熱意によって、出版された『北越雪譜ほくえつせっぷ
  』は、意外にも続編を求められるほどの好評を得ます。
   その頃の旅行ブームに乗って、諸国の名所や名産を紹介する
  『道中記』の変形として迎えられたのでしょうが日本初の科学
  随筆であり、民俗学の書だったのです。
   でも、続編は書かれませんでした。ひどい難聴だった著者が
  、そのために生じる家業(質屋)上や家族との間のトラブルや
  憤満の吐け口の日記に熱中したからです。
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