21年2月23日更新
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JDは、2021年2月15日、「『碍』の常用漢字化についての要望」を萩生田文部科学大臣に手渡し、面談しました。
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2021(令和3)年2月15日
文部科学大臣
萩生田 光一 様
認定NPO法人日本障害者協議会(JD)
代 表 藤 井 克 徳
「碍」の常用漢字化についての要望
貴職の日頃からの国語の改善、普及へのご尽力に心より敬意を表します。
本協議会は、現在60の障害当事者・家族および支援者(事業者・専門職・学会等)の団体が加盟し、あらゆる種類の障害のある人々の市民としての平等な社会参加をめざし、政府に対する要望活動や市民へのアピール活動に取り組んでいます。
そのような立場から、文化審議会国語分科会での審議に期待をしております。「碍」(石偏)の常用漢字化は、障害の正しい理解と適切な表記につながる一歩と考えるからです。
2010年の常用漢字表の追加の際には、「碍」は使用頻度等から追加基準をクリアしないものの、「障がい者制度改革推進会議」で「障碍」の採用が決まれば再度追加を検討するとされ、「推進会議」での意見の一致が得られないまま今日に至っています。こうした中で課題を一歩前に進めるべく、2018年、国会が動き、「障害」の「害」の見直しと「碍」の常用漢字表への追加についての検討を政府に求めました。
「改定常用漢字表」(文化審議会答申、2010年6月7日)では「頻度数が低くても,文化の継承という観点等から,一般の社会生活に必要と思われる漢字については取り上げていくことを考える。」(3、字種・音訓の選定について)としています。「推進会議」での検討を待ったのもこの観点からでした。
国会の決議は、「社会生活に必要と思われる」根拠になるのではないでしょうか。国会は国民が選んだ代表であり、その文部科学委員会(衆院)および文教科学委員会(参院)が全会一致で碍の追加の検討を政府に求めたことは、「社会生活に必要」との国民の判断を示すものではないでしょうか。ぜひとも国語分科会がこの国会の意向を重く受け止めてくださるようお願いします。
障害の表記問題の出発点は、「害虫・害悪の害で呼ばれたくない。私は世の中に迷惑な存在ではない。」との障害者の声でした。国会決議が求めた点も、碍の常用漢字表への追加以上に「害」を用いた「障害」の表記の見直しでした。
しかし当事者のこの願いに反して、2016年には相模原障害者殺傷事件が起き、多数の命が犠牲となりました。これは、重度障害者に生きる意味はない、国の財政の負担となる迷惑な存在だとする優生思想による犯罪でした。
この優生思想に打ち勝つために、2014年批准の障害者権利条約の普及と実施がますます強く求められています。この条約はあらゆる人権と尊厳を障害のある人が他の人と平等に享有することを目的とし、また「差異の尊重並びに人間の多様性の一部及び人類の一員としての障害者の受入れ」(第3条)を原則の一つに加えています。
もちろん表記の変更だけで優生思想を克服できるとは思いません。しかし、優生思想に少しでも味方する表記は改めたいものです。障害者権利条約に沿った社会モデル、人権モデルに基づく障害と障害者の理解が広がることを期待するものです。
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