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20年11月25日更新

「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」に関する緊急要望

○JDは2020年11月24日、「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」に関する緊急要望を衆院法務委員会に提出しました。
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2020年11月24日
衆議院法務委員会
委員長 義家 弘介 様
 与党筆頭理事 稲田朋美 様
 野党筆頭理事 階 猛 様

認定NPO法人日本障害者協議会(JD)
代 表  藤 井  克 徳



「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する
民法の特例に関する法律案」に関する緊急要望




 今国会において、議員立法で提出されている、「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」(以下、法案)について、以下の理由から法案第 3 条 4 項の削除を求めます。

 今国会において、議員立法で提出されている、「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」(以下、法案)については、すでに関係団体よりさまざまな問題点が指摘されています。また、重大なテーマにありながら審議の拙速さにも懸念を覚えます。

 全体的な問題や懸念事項については、他の意見に委ねるとして、ここでは、障害分野として看過できない問題に絞って、緊急に要望します。具体的には、法案第 3 条 4 項の削除を求めます。理由は、以下の通りです。なお、当会は、優生政策に関しては、一貫して慎重かつ厳正な姿勢を取ってきました。今回の緊急要望もこれに立脚したものです。

 1.本法律案の基本理念第 3 条 4 項には「生殖補助医療により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮がなされるものとする」とあります。前段部分の「心身とも に健やかに生まれ」という表現は、1996 年に廃止された優生保護法の第1条「優生上の見地から、不良な子孫の出生を防止する」につながりかねません。障害者を「不良」とする立法理念の下で、おびただしい無抵抗状態の人たちが優生手術を強いられました。辛苦の過去を彷彿させるような、また誤解を招くような表現は、一切これを用いるべきではありません。

 2.立法で明記される「心身ともに健やかに生まれ」は、同じ表現を日常の社会生活上で用いるのとは全く意味を異にします。立法理念として謳われたのと同時に、それは優生政策の域に入ったも同然です。こと優生政策に関する動きについては、厳格さをいくら求めても過ぎることはないように思います。

 3.「心身ともに健やかに生まれ」という響きには、そうではない人に特別な感覚をもたらします。障害当事者や家族の中には、どうしようもない疎外感や負い目、悲しみを抱く人がいるはずです。新たに生まれる法律において、なぜ特定の人たちの存在を否定する内容を盛り込んだのか、理解に苦しみます。立法府の見識が疑われます。他方、批准された障害者権利条約第 17 条には、「その心身が、そのままの状態で尊重される権利を有する」とあります。法案第 3 条 4 項はこれに背くものです。

 最後になりますが、昨年制定された「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の背景を想起する必要があります。この法律は、「不良な子孫の出生を防止する」を旨とする優生保護法の猛省の上に打ち建てられたのです。この法律の背景や内容に立脚するならば、法案の第 3 条4項はあり得ないと考えます。

 以上の理由から、ここに改めて法案から第 3 条 4 項の削除を求めます。なお、すでに通過している参院法務委員会での審議にあって、この点は触れられませんでした。衆院法務委員会の審議に際しては、この点を十分に深めることを重ねて求めます。

◆参考: 認定 NPO 法人日本障害者協議会が提出・公表した一時金支給法関連の提案、声明、要望
・優生保護法被害者に対する謝罪と補償等に関する提案書(第一次 2018.11第二次 2019.2
旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案」に対する緊急声明 2019.3
旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案」衆議院厚生労働委員会採決にあたっての緊急声明 2019.4
国は憲法違反を認め、被害者の人権回復を!「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の成立にあたっての声明 2019.4
旧優生保護法一時金支給法第 21 条に基づく調査への要望 2020.6

                     

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