20年10月21日更新
○JDは2020年10月20日、「要望書 新型コロナウイルス(COVID—19)から障害のある人のいのち・健康・くらしを守るために」を公表し、内閣総理大臣、厚生労働大臣宛に提出いたしました。
【PDF版はこちらから】
2020年10月20日
内閣総理大臣 菅 義偉 様
厚生労働大臣 田村 憲久 様
認定NPO法人日本障害者協議会(JD)
代 表 藤 井 克 徳
要望書
新型コロナウイルス(COVID—19)から
障害のある人のいのち・健康・くらしを守るために
新型コロナウイルスの感染は増減を繰り返しながら、未だ抜本的な対応策が見出せぬまま、現在に至っています。経済を活発化する政策に舵が切られ、今後、インフルエンザの流行の時期の到来と重なり、予断を許さない状況になっていくことを憂慮しています。
障害のある人は新型コロナウイルスの影響を大きく受けやすく、日本障害者協議会(JD)は、現在の状況に危機感をいだいております。危機的状況下において、障害のある人のいのちを守るために、以下のことを求めます。
1.感染予防対策
1)PCR検査を無料で迅速に受けられること
障害のある人、その家族、ヘルパーなどの支援者が希望する場合は、症状に関わらずPCR検査を無料で受けられるようにしてください。障害のある人は基礎疾患を持つ人が多いことなどから、感染により生命の危機を生じる場合があります。そうした状況を予防するためにもPCR検査を迅速に受けられるようにしてください。
2)ヘルパーなどの支援者を感染から守るための措置
重度障害のある人にとって、ヘルパーの派遣は生活や仕事を支えるために必要不可欠です。感染拡大などにより、通所サービスが利用できなくなった時、ホームヘルプサービスが代替えサービスとして必要となります。障害福祉事業所がヘルパー派遣を継続でき安定的に活動できるように感染防止対策や人材確保のための支援策を早急に講じてください。
3)インフルエンザワクチン接種の無料化
自治体によっては、65歳以上の高齢者はインフルエンザワクチン接種が無料化されています。障害のある人もその対象に加えてください。
4)面会制限について
感染防止の観点から生活施設や病院では面会制限が行われ、閉鎖的空間が増え、虐待の発生しやすい状況であることを憂慮しています。高齢者施設の面会緩和が打ち出されたように、障害のある人についても各施設や病院において、入所者、入院患者と家族や友人たちが交流する体制づくりのための工夫や支援策を講じてください。
2.感染者が発生した場合の対策と支援
1)治療環境の確保
障害のある人が感染した場合に、障害を理由に入院拒否をしないこと、そして、入院した際には障害特性に合わせた支援や合理的配慮が講じられるような体制が整えられるように医療機関への支援策を講じてください。
2)感染拡大を防ぐ措置のための支援
グループホームや生活施設で、感染疑いや感染者が出た場合には、速やかに、安心して過ごせる離れた場所の確保が重要です。施設内でのゾーニングは現実的ではなく、感染症病棟への入院、あるいは感染が確認されるまで別の場所で過ごすことができるような対応を各自治体に指示してください。
また、施設内で感染拡大が起こった場合には、市町村や都道府県の職員も含めた最大限の応援体制を整えてください。
3)安心して受けられる医療の提供を
障害のある人たちは基礎疾患を持っている人が多く、感染すると重症化しやすく、人工呼吸器や人工心肺装置(ECMO)を利用する場合が多くなります。障害のある人も安心した医療を受けられる体制づくりといのちの選別が行われないように医療機関への支援を行ってください。
3.感染拡大の影響を最小限に止める政策を
1)障害のある人への収入の補填を
障害福祉事業所は、感染症拡大の影響で販売の機会や受注する仕事の減少などで、経営が厳しい状況が長期化しています。仕事が減少しても従来通りの工賃・賃金が支払えるように、賃金補填の仕組みを早急に設けてください。いくつかの自治体では賃金補填の仕組みが制度化されています。これらの制度を国の責任で全国に広げ、感染が収束し、通常の事業が実施できるまでの期間実施してください。
2)障害福祉事業所への支援
障害福祉事業所では、障害のある人の体調不良や発熱などの場合には通所せず、安静に過ごすことを推奨しています。緊急事態宣言下での在宅支援の要件緩和は時限的なものでした。現在の、報酬の日額払い制度では、利用者の休所や長引く休所は経営困難に直結します。当面は在宅支援の要件緩和を継続してください。そして、問題の根本にある日額払い制度を早急に廃止してください。
3)企業で働く障害のある人の雇用継続のための支援
企業で働く障害のある人が自宅待機を余儀なくされている現状があります。この実態把握を行い、障害のある人の雇用を継続するための企業への支援、自宅待機により減収になっている場合の賃金補填などの対策を早急に実施してください。
4)感染者の追跡調査の実施
新型コロナが筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の引き金になる可能性があると多くの専門家は警告しており、欧米ではすでに研究が開始されています。日本においても早急に追跡調査を開始し、この件に焦点を絞った研究をする体制を整備してください。
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