障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

20年7月22日更新

声明 2016年7月26日 津久井やまゆり園事件から4年

○JDは2020年7月22日、「声明 2016年7月26日 津久井やまゆり園事件から4年」を公表しました。
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2020年7月22日

声明 
2016年7月26日 津久井やまゆり園事件から4年


認定NPO法人日本障害者協議会(JD)
代 表  藤 井  克 徳





 今年も、忘れられない、忘れてはいけない7月26日を迎える。津久井やまゆり園で奪われた19人の尊いいのち、傷つけられた26人の利用者と職員、かけがえのない大切な家族や仲間を失った人たちは、未だ深い悲嘆と苦しみの中にある。

 この事件は、障害のある人のいのちの尊厳を踏みにじったものだ。裁判が終わり、刑は確定した。しかし、なぜ19人のいのちが奪われなくてはならなかったのか、「障害者は不幸をつくることしかできない」という犯人の歪んだ考えの背景には何があったのか、何も解明されていない。

 私たちは、この事件に向き合う時、この凶悪な犯罪の背景には津久井やまゆり園での勤務体験の影響があったのではないかと考える。犯人は、障害のある人との関わりの意味や価値、障害のある人の理解を深めることができていたのだろうか。職員であった犯人は、障害のある人を「お世話する人」ととらえ、誤った優越感と歪んだ「正義感」を育ててしまったのではないだろうか。さらに、生産性や効率を求める今日の社会の価値観が相乗的に作用し、いのちを選別する考えが大きく育ってしまったのではないだろうか。高齢者や障害のある人を財政上の負担ととらえ、ことさらに自己責任・家族責任を強調する政策の影響はないのであろうか。

 福祉現場の閉鎖的で虐待発生のおそれをはらんだ実態は、やまゆり園だけの問題ではない。障害者虐待防止法の改正・強化や第三者機関の設置の義務化、施設をはじめとする福祉現場の危うい環境の早急な改革が求められる。

 障害の有無に関わらず、1人1人を大切にし続けていくことこそが、現代社会のなかでインクルーシブな社会をつくっていくことにつながる。

 障害者権利条約は、「私たち抜きに私たちのことを決めるな」をスローガンに制定され、「他の者との平等」の実現を求めている。身体的・精神的な機能の障害の存在は、性別・宗教・人種などと同様に人間の多様性を示すものであり、尊厳と権利に影響しないとうたっている。

 私たちはどんな社会に生きていきたいのか。この未曽有の事件を通して、改めて1人1人が自身の内面を検証し、社会に広がる差別や偏見に対峙し、だれもがつながって平等に生きられるインクルーシブな社会の実現に力を注いでいきたい。 

                     

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