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20年6月30日更新

旧優生保護法一時金支給法第21条に基づく調査への要望書

○JDは2020年6月30日、「旧優生保護法一時金支給法第21条に基づく調査への要望書」を公表し、旧優生保護法に関するワーキングチーム(与党PT)の田村憲久座長、優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟の尾辻秀久会長、ならびに衆・参両院の厚生労働委員会委員長に提出いたしました。 【PDF版はこちらから】

2020年6月30日
旧優生保護法に関するワーキングチーム(与党PT)
座長 田村 憲久 様
優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟
会長 尾辻 秀久 様
認定NPO法人日本障害者協議会(JD)
代 表  藤 井  克 徳



旧優生保護法一時金支給法第21条に基づく調査への要望書




 私たちは、優生保護法(1948~1996年)とその前後の関連政策による被害は、日本の人権に関する歴史の中で最大かつ最悪の問題と考えてきた。だからこそ、この被害問題にどう対処するのかは、その後の障害者政策に大きく影響するとして、問題提起を行なってきた。そして、被害者への謝罪のあり方や支給額等に不十分さを残しつつ成立した「旧優生保護法一時金支給法」だが、第21条に基づく調査がどのような体制で、どう進められるのかを重要視してきた。

 この度、衆参両院の厚生労働委員会調査室が担当し、3年の期間で報告書が作成されることとなった。私たちは、こうした取り返しのつかない人権侵害がなぜ長年行われてきたのか、その被害の実態が解明され、同じことを繰り返さないための方策まで明らかにすることをこの調査に期待している。そのために必要な取り組みを以下に要望する。

1.中立性・独立性
 衆参両院厚生労働委員会調査室で行う調査が、立法府・行政府・司法府からの独立、第三者性が担保されるのか、という点を危惧する。調査室でどのような立場の人たちが調査にあたるのか、まずその点を速やかに明らかにすることを求めたい。また、調査の設計時、収集資料の評価、総括的な論議など、重要な節において、障害当事者団体の代表を加えること。
 さらに、透明性を担保するために審議を記録し、公開すること、調査過程での公聴会の開催や中間報告を提出することを求める。

2.検証内容(主要なもの)
1)優生保護法関連
 優生保護法による長期にわたる被害であり、検証すべき内容も多岐にわたる。以下、主要な点を挙げる。
・優生保護法の立法過程(憲法との関係、国会審議など)
・法施行後の政府並びに立法府の対応
・自治体の対応(都道府県並びに市町村、保健所、相談機関、公立医療機関など)
・精神医療関係団体(病院関連団体、関連学会等)の動き、並びに政府とこれらの団体の関係
・マスメディアの対応
・国際的な動向(各国の被害状況や救済のあり方について)
・優生保護法と市民社会との関係
・謝罪と補償政策が遅れた要因
・被害者が長期間声を上げられなかった要因
・被害者が知的障害者等(意思を表明できにくい人)の場合の、法律上の不利益問題(本人が気づきにくい除斥期間など)
・この他、検証の内容については、被害者や家族、弁護団に加えて、広く障害関係団体や人権関連団体などから意見や要望を集約すること。また、ハンセン病問題に関する検証会議などの先行事例を参考にすること。

2)「一時金支給法」の検証
 「一時金支給法」については、成立の段階から、とくに被害者(原告)から厳しい評価が下されている。法の内容面に加えて、国会での審議が十分でなかったことも問題とされている。調査の対象に、優生保護法問題だけではなく、一時金支給法関連も含むべきである。
・一時金支給法の成立過程
・一時金支給法の評価
・施行後の課題(認定件数の極端な少なさ)

3.報告書への期待と役割
 優生保護法は、必要ないのちと不要ないのちの選別を、公的権力の下で行なってきた。生産に役立つ人とそうでない人を分ける考え方は決して過去のものではなく、私たちが生きている今の社会に厳然として残っている。津久井やまゆり園事件や中央省庁での障害者雇用水増し事件などは、障害のある人のいのちや存在が軽んじられていることの証左である。
 本報告書は、優生保護法被害問題の背景にある、人を選別し差別する思想に深く切り込み、こうした問題に、今を生きる私たちがどう対峙していくのかを考え、社会のあり方を捉え直すきっかけとなることが求められている。

                     

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