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19年4月24日更新

国は憲法違反を認め、被害者の人権回復を!「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の成立にあたっての声明

○JDは2019年4月24日、 国は憲法違反を認め、被害者の人権回復を!「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の成立にあたっての声明を公表しました。
【PDF版はこちらから】


2019年4月24日



          国は憲法違反を認め、被害者の人権回復を!
「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の
成立にあたっての声明

NPO法人
日本障害者協議会(JD)
代表 藤井 克徳







 「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が参議院本会議で全会一致で成立した。なお、本法の成立前に厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課から法案や手続きの事務的なフロー図まで、国会で審議中にもかかわらず、法成立を前提に関係団体にメール配信された。行政機関の国会軽視といえる姿勢・対応に、憲法に定められた三権分立が揺らいでいることを危惧する。

 多くの問題点を残した本法であるが、内容面の不十分さに加えて、当事者不在で進められたことに強い憤りを覚える。障害者権利条約の締約国として、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という願いにも反し、国会の場で被害を受けた人たちの意見を聞く機会は、設けられなかった。また、国による謝罪もあいまいなままで、法成立時の内閣総理大臣の「反省とお詫び」は、いかにも形式的で空疎な感を否めない。改めて、国権の最高機関である国会において、謝罪決議を行うよう求める。

 拙速に法案を成立させたことにも疑問が残る。国会サイドは、まるで法律の早期成立と高水準の法律にすることが相いれないような論調を繰り返してきた。長年にわたって放置しておきながら、なぜ目前に迫っている仙台地裁での優生保護法被害裁判の判決を待てなかったのか。

 残念ながら、法律は多くの問題点を残したまま成立してしまった。懸念されるのは、優生保護法被害の本質問題の固定化である。わけても、子どもを持つ権利、持つか持たないかを自ら選択する権利が奪われ、生涯にわたる心身への影響を与え続けることへの代償が320万円の一時金というのは余りに低すぎる。このままでは禍根になってしまう。

 国は憲法違反であることを認め、裁判動向も勘案し、また今般の法案作成段階で被害者や弁護団、障害関連団体から提示された内容を踏まえるなど、優生保護法の被害問題解決の新たな方向を模索すべきである。当面は、被害者と障害関連団体の信頼に足りうる検証体制の確立が急がれる。

 私たちは、原告や被害者の人権と尊厳の回復に連帯しながら、全国7地裁で進められている優生保護法被害裁判の原告をこれからも支援し続ける。そして、優生保護法被害問題から学び、被害者とともに優生思想や障害者排除・差別を乗り越え、すべての人のいのちを大切にする社会の実現に向けて力を注いでいく所存である。

 
          

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