障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

18年10月2日更新

「碍」の常用漢字化についての要望

○JDは、2018年9月26日、「碍」の常用漢字化についての要望を文部科学省へ提出しました。
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2018年9月26日

文部科学大臣
林 芳正 様

「碍」の常用漢字化についての要望


NPO法人
日本障害者協議会(JD)
代表 藤井 克徳






 貴職の日頃からの国語の改善、普及へのご尽力に心より敬意を表します。

 本協議会は、現在60の障害当事者・家族および支援者(事業者・専門職・学会等)の団体が加盟し、あらゆる種類の障害のある人々の市民としての平等な社会参加をめざし、政府に対する要望活動や市民へのアピール活動に取り組んでいます。

 そのような立場から、今回の衆議院文部科学委員会と参議院文教科学委員会での、「碍」(石偏)の常用漢字化の検討を求める(附帯)決議を歓迎しています。これは障害の表記の選択肢を広げることになり、望ましいと考えるからです。

 この表記をめぐっては、本協議会の内部でも、他の障害者団体でも多様な意見があります。たとえば、「障害(ウ冠)も障碍(石偏)も障がい(ひらがな)も同じに聞こえるので、目の見えない私にとってはあまり違いはない。」、「バリアに直面していることを表す障碍(石偏)がよい。」、「我々はバリアの被害者なので障害(ウ冠)がむしろ正しい。」、「私は世の害(ウ冠)ではない。害悪の害で呼ばれたくない。」、「漢字圏から参加するパラアスリートが障害(ウ冠)という表現を目にすると嫌な思いをするのではないか。」、「障害(ウ冠)も障碍(石偏)も障がい(ひらがな)もマイナスの印象を与えるので、よりプラスの明るい表現が望ましい。」、「現実の政策が重要なのに表現の問題にすり替えられては困る。」などです。

 本協議会は、引き続きよりよい表記のあり方を議論し、他の障害者団体とも話し合い、社会に提言してゆきます。

 その際、言葉より重要なのはその言葉が伝える意味・概念であり、障害者権利条約の障害の理解を伝える表記が望ましいと考えます。障害者権利条約では、前文(e)で「障害」、第1条後段で「障害者」の考え方を示していますが、端的に表現するとそこでは障害を、(視覚障害、知的障害などの医学的な)機能障害とバリア(障壁)との間の相互作用によって生まれるもので、平等な社会参加が妨げられていること、としています。

 政府には、「害虫・害悪の害で呼ばれたくない。私は世の中に迷惑な存在ではない。」との障害者の声が表記問題の出発点であったことをふまえ、障害当事者の意向を尊重し、また条約の視点に沿って、表記のあり方を検討していただきたいと思います。このことは、すでに障害者政策委員会が、「法制上の『障害』の表記の在り方については、障害者権利条約における新しい障害の考え方を踏まえつつ、今後の国民、特に障害当事者の意向を踏まえて検討する。」(新「障害者基本計画」に関する障害者政策委員会の意見(平成24年12月17日))と提案していたことでもあります。どの表記が好まれるのか、とくに障害当事者がどの表記を好むのかを継続的にモニターすることが重要です。

 そのためにも文部科学省・文化庁には、選択肢を広げる観点から、「碍」(石偏)を常用漢字に追加することを要望します。

           

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